レベル1 謙遜 アーカイブ

シャドーボックス:イエス様の教え:だれが一番えらいのか?

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シャドーボックス:イエス様の 教え:だれが 一番 えらいのか?

マルコによる 福音書 9:33-35を もとに

 イエス様と 弟子達は、ガリラヤの 旅が 終わって、カペナウムの 家で 休んで いました。イエス様は 弟子達に たずねました。「あなたがたは、道の とちゅうで 何を 論じて いたのか?」

 弟子達は、はずかしく なりました。というのは、彼らの 中で だれが 一番 えらいのか、と 言い争って いたからです。それで、イエス様に 答えられずに だまって しまいました。弟子達が どうして 言い争っていたかを 知った イエス様は、みんなに 言いました。「だれでも 一番 先に、あるいは えらい 者に なろうと 思うならば、一番 後に なり、みんなに 仕える 者と ならなければ ならない。」

(くわしい お話は、ルカによる 福音書の 22:24-27と、ヨハネによる 福音書の 13:1-17で 読んでね。)

文と絵とデザイン:ディディエ・マーティン
Copyright © 2022年、ディディエ・マーティン 許可を得て使用

イエス様の教え:だれが一番えらいのか?

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イエス様の 教え:だれが 一番 えらいのか?

マルコによる 福音書 9:33-35を もとに

 イエス様と 弟子達は、ガリラヤの 旅が 終わって、カペナウムの 家で 休んで いました。イエス様は 弟子達に たずねました。「あなたがたは、道の とちゅうで 何を 論じて いたのか?」

 弟子達は、はずかしく なりました。というのは、彼らの 中で だれが 一番 えらいのか、と 言い争って いたからです。それで、イエス様に 答えられずに だまって しまいました。弟子達が どうして 言い争っていたかを 知った イエス様は、みんなに 言いました。「だれでも 一番 先に、あるいは えらい 者に なろうと 思うならば、一番 後に なり、みんなに 仕える 者と ならなければ ならない。」

(くわしい お話は、ルカによる 福音書の 22:24-27と、ヨハネによる 福音書の 13:1-17で 読んでね。)

文と絵とデザイン:ディディエ・マーティン
Copyright © 2022年、ディディエ・マーティン 許可を得て使用

ノグ星のお話:紫色の壁についての真実

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ノグ星の お話:紫色の 壁についての 真実

 「ブロギッシュ王は そなたらに、客間の 1室を 紫色に ぬって ほしいとの ことじゃ。」 おとなしい トシュギが 3人の 王室ペンキ屋の ミーサンと オスコーンと バーシャグに 説明しました。

 「ですが、どのように?!」と ペンキ屋が 聞き返しました。

 「ペンキは 白しか ありません。」と バーシャグが 付け加えました。「ここには、紫色の ペンキと いうものが ありません。」

 「ノグ星の 人々は 紫色が 大好きなので、心が 広く おやさしい ブロギッシュ王は、みなの 者が 使えるように、紫色の ペンキを 作るようにと おおせじゃ。」と トシュギが 答えました。「そうすれば、われわれの 服だけでは なく、家や 馬車も 紫色に することが できるからの。」

 「それは、すばらしき 新しい 考えで ございます!」 思わず、ミーサンが 声を 上げました。

 「私も、うちの 壁を ぜひ、紫色に したいものだ。」と、オスコーンも 言いました。「だが、どうやって 紫色の ペンキを 作ったら いいかのう?」

 「みんなも ご存知のように、服を 染めるのに 使う 紫の 木の 樹液の 抽出作業を 監督して おられるのは、トレイ伯爵じゃ。ブロギッシュ王は、紫色の ペンキを 作るために 樹液を もっと たくさん 抽出する 必要性について 話し合うため、伯爵を 今週末、城に 泊まるようにと 招いて おられる。」と トシュギが 説明しました。

 「王様は、トレイ伯爵が お泊りに なる 部屋の 壁を すべて、紫色に することを お望みじゃ。それが どんなに きれいか、トレイ伯爵に 見ていただくためにな。」

* * *

 木曜日の 朝、3人の ペンキ屋達は、城の 一番 東側の 部屋に 集まりました。王様の 客人で ある トレイ伯爵が 泊まることに なっている 部屋の 壁を 紫色に ぬるためです。

 「白い ペンキを 持ってきたぞ。」 バーシャグが 重い バケツを 部屋の 床に 置きました。

 「さてと、これが 紫色の 樹液だ。」 オスコーンは ポケットから 大きな びんを 出して、樹液を 白い ペンキの 中に 流しこみました。

 やがて、バケツの 中の ペンキは 明るい 紫色に なりました。3人の ペンキ屋は その中に はけを ひたして、壁を ぬり始めました。午後までには、部屋中の 壁が すっかり 明るい 紫色に 仕上がりました。ペンキ屋達は 一歩 下がり、その出来映えを 満足そうに ながめました。

 「ブロギッシュ王は、さぞかし 喜んで 下さるだろう」と、バーシャグが 言いました。

 「いかにも」と、オスコーンも うなずきました。「この壁は、実に 美しい。」

 「今夜 食事が 終わったら、ペンキが すっかり かわいたか どうか、私が 見届けに 来よう」と ミーサンが 言いました。そして、3人の 友は 各々 夕食を 食べに 帰って行きました。

* * *

 ミーサンが もどってきた 時は 夕方で、部屋の 中は 真っ暗でした。ミーサンは 明かりの スイッチを 入れました。

 思わず、ミーサンは つばを のみました。先ほどの 壁は、もう 明るい 紫色では ありません。事実、紫色だと いうことさえ ほとんど 分からないくらいなのです。白い ペンキに 入れた 紫の 樹液が 足りなかったのは 明らかでした。ミーサンは あわてて、ペンキ屋の 友人達を 探しに 行きました。

 「明朝 トレイ伯爵が 到着するまでに、壁を 全部 ぬり直して かわかすような 時間の よゆうは ないぞ。」と ミーサンは 言いました。「明日朝 いちばんに、壁の 色を ぬりそこなった ことを 王様に お伝えせねば。」

 「ブロギッシュ王は、さぞかし がっかりするで あろうな。」と バーシャグが 言いました。

 3人の 仲間は しばらくの間、ぼうぜんと そこに 立ちつくしていました。ついに、オスコーンが 口を 開きました。「王様に 知らせなければ よいのでは。」

 ミーサンは いぶかしげに オスコーンの 方を 見ました。「そんなことが できようか?」

 「カーテンを いつも 閉じておけば よいのじゃ。日光が カーテンごしに 差しこむようにな。」と、オスコーンが 提案しました。「そうすれば、ブロギッシュ王と トレイ伯爵は、紫色の 壁を 見るであろう!」

 「ふ~む。それなら うまく いくかも 知れぬな。われわれは、紫色の カーテンごしに 差しこんできた 光が 明るい 紫色の かげを 壁に 落としているのを 見たのだ。それで、壁が 実際よりも ずっと 明るい 紫色に 見えたという わけだな。」と バーシャグが 言いました。

 「だが、それでは 不正直では ないか!」 ミーサンは 反対しました。「うそを つくのは まちがっている!」

 「いや、うそを つくわけでは ない。」と バーシャグが 言いました。「われわれは 真心を こめて、壁を 紫色に ぬったと 王様に 伝えれば よいのだ。確かに われわれは そうしたのだから! ただ、カーテンごしに 差しこんできた 光のせいで、思いがけなく 紫色が あざやかに 見えていた ことに 気づかなかっただけなのだ。」

 「わ、私は・・・うそは つきたくない。」と ミーサンが 言いました。

 「バーシャグと 私が 説明するから。君は ただ、だまって いれば よい。」と オスコーンが 言いました。

 「それで よかろう。」と バーシャグも 同意しました。

* * *

 「何と 見事な 色と 出来映えじゃ!」 紫色の 壁を 見た トレイ伯爵は、感嘆の 声を 上げました。

 「この 立派な 仕事を した ペンキ屋の 面々に、ぜひ、お目に かかって下され。ミーサン殿と バーシャグ殿と オスコーン殿じゃ。」と ブロギッシュ王様は 言いました。

 「みなさんは、実に すばらしい 仕事を された。」と、トレイ伯爵が 言いました。

 王様と トレイ伯爵が 立ち去ると、オスコーンが 言いました。「分かっただろ。たやすいもんさ。ブロギッシュ王と トレイ伯爵は、ありのままの 壁を 気に入って下さったのだ。」

 「だが、今夜 太陽が しずんだ後、トレイ伯爵が 部屋の 明かりを つけたとたん、壁は もはや 紫色には 見えなく なるのだぞ」と ミーサンは 言いました。

 「では、バルコニーの 明かりを つけ、カーテンごしに 光が 部屋に 差しこむように しよう。」と バーシャグが 言いました。

 「何かが うまく 行かなくなるに 決まっとる。正直に 言うべきだろう。王様に、われわれの あやまちを 伝えないと。」と ミーサンが 言いました。

 「それは ならん!!」 オスコーンと バーシャグが さけびました。

 「バルコニーの 明かりが 消されないように、配線を し直すのじゃ。」と オスコーンが 言いました。

 バーシャグも 賛成しました。ミーサンは、物事の 展開に 大きな 不安を 感じながらも、反対するのを あきらめてしまいました。

* * *

 その夜、トレイ伯爵が 休むために 部屋に もどってみると、バルコニーの 明かりが カーテンの 向こう側で こうこうと 輝いていました。スイッチを 切っても、こわれているのか、明かりは 消えません。

 トレイ伯爵は カーテンごしに 差しこんでくる 明るい 光から 目を そらそうと して、一晩中 寝つけずに ごろごろと 寝返りばかり 打っていました。あくる朝 トレイ伯爵は、赤く はれぼったい 目で 朝食に やって来ました。

 「夕べは 全く 眠れなかった ご様子ですな。」 あいさつを すると、ブロギッシュ王が 客人に 言いました。

 「バルコニーの 明かりの スイッチが こわれているようでして。明るい 部屋で ねるのには、なれておらんのですよ。」と、トレイ伯爵は 答えました。「だがしかし、紫色の 壁は 一晩中 ながめて 楽しみましたぞ。」

 朝食が すむと、ブロギッシュ王は 3人の ペンキ屋達を 呼び出して たずねました。「そなたらは、トレイ伯爵が 来られる 前の 晩に、客室に おったはずじゃ。バルコニーの 明かりが 消えないことに 気づかなかったのか? もし 気づいておったなら、どうして 直さなかったのじゃ? トレイ伯爵は、部屋に 差しこんでくる 明かりが まぶしくて、一晩中 眠れなかったそうなのだが。」

 2人の 友人が 返事を する間、ミーサンは だまって 立ちすくんでいました。

 最初に オスコーンが 切り出しました。「こわれている ことには 気づいたのですが、それを 直す 電気技師が 見つからなかったのです。」

 バーシャグも 言いました。「それで、私が 直しました。直ったと 思っていたのですが。」

 「はい。直ったとばかり 思っておりました。」と、オスコーンも 言いました。

 ブロギッシュ王は ミーサンの 方を 見ました。「ミーサン殿。そなたは 静かじゃの。何か 言いたいことは?」

 ミーサンは、もはや だまっていられませんでした。そして、仲間達が ギョッと したことに、紫色の ペンキが うす過ぎたことを 王様に 話してしまいました。その間、2人の 友人は 恥じ入って がっくりしていました。ミーサンと バーシャグと オスコーンは みな、最初から 真実を 話さなかったことで、王様に あやまりました。

 「友よ。」と 王様は 言いました。「問題を 報告する代わりに、あやまちを かくそうとして 不正直だったことは、悲しいぞ。われわれの 国は 常々から、たがい同士の 正直さを 喜びと してきたでは ないか。ちがうかの?」

 「はい、ごもっともで ございます、王様。」と、ミーサンが 答えました。

 「全く その通りで ございます!」と オスコーン。

 「私共の 行動を、心より 恥じております。」 バーシャグも 言いました。「どうか、おゆるしを。物事を 正すために 私達に できることは、何でも お申しつけ下さりませ。」

 「まずは トレイ伯爵に、ペンキについて、本当のことを お話しするのじゃ。そして、自分達の あやまちを かくすために 明かりの スイッチに 細工を したことも、わびるのじゃ。お気の毒に、トレイ伯爵は 一晩中、一睡も できなかったのじゃぞ。」と 王様は 言いました。

 「本来なら、今日は そなたらの 休みの 日だが、午後には もう1度、城の もう1室の 壁を 紫色に ぬるのじゃ。そのペンキが かわいたところで、トレイ伯爵に その 部屋に 移っていただこう。」

 3人の ペンキ屋は、トレイ伯爵に あやまりに 行きました。トレイ伯爵は、3人の 謝罪を 快く 受け入れてくれました。

 3人の ペンキ屋達は、今度は 先回の 3倍の 量の 紫色の 樹液を 白い ペンキに 混ぜました。そして、カーテンが ちゃんと 開いたままで あるよう、念を 押しました。ペンキを ぬり終えると、カーテンが 開いたままでも、壁は 美しく 明るい 紫色に 仕上がっていました。

 トレイ伯爵は、木から 紫色の 樹液を もっと たくさん 抽出するため、職人を もっと やといました。やがて、ノグ星の 家々の 室内の 壁は、様々な 濃さの 生き生きとした 紫色に なりました。

 「ブロギッシュ王、万歳!」 ノグ星の 人々が さけびました。「紫色の ペンキを 下さって、ありがとうございます!」

 「ブロギッシュ王、万歳!」 ミーサンも 声を 大にして、2人の 友人に 言いました。「われわれに 真の あわれみを 示して下さった ブロギッシュ王、万歳!」

 「王様は、真実を 話す 大切さを 思い出させて下さった。」と、オスコーンも 言いました。

 「われわれが、いつも 正直さで 知られる 者で ありますように。そして、二度と、あやまちを かくすために うそを ついたり しませんように!」と、バーシャグも 言いました。

 「その罪を かくす者は 栄えることが ない、言い表して これを はなれる者は、あわれみを うける。」(口語訳聖書、箴言28:13)

オスコーン:ミーサンが 王様に 本当の ことを 話してくれた 時は、ほっと したよ。真実を かくすために うそを つくのは いやな ことだもの。1度 うそを つくと、さらに また うそを つくように なってしまうからね。

バーシャグ:ペンキについての 失敗を、最初から 王様に 言うべきだったよ。

ミーサン:自分の あやまちを かくそうとして、うそを つく 誘惑に かられたことは あるかい? 本当のことを 話すのは つらいかも 知れないけど、いったん 話してしまえば、気が 楽に なるし、話して 良かったって 思えるよ。

ノグ星のお話:紫色のぼうし

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ノグ星のお話:紫色の ぼうし

 宇宙の かなたの ノグという 惑星に、ノグ星人が 住んでいました。ノグ星人は、体は 青く、目が 一つだけの、人なつこい 宇宙人です。ノグ星人は、パジャマのような 紫色の 服を まとっていました。ノグ星人は 紫色が 大好きです。彼らは、あざやかな 紫色の 樹液を 出す 木を 大切に していました。ノグ星人は、その樹液から 染料を 作り、それで 全ての 布を 紫色に 染めていました。

 ノグ星には、ブロギッシュ王という 王様が いました。堂々とした 立派な 王様で、全ての ノグ星人に こよなく 愛されていました。

 王様は、しばしば 紫色の 変わった ぼうしを かぶっていました。その ぼうしが お気に入りなのです。ところが、ある 悲しい日、その ぼうしが なくなって しまいました。ブロギッシュ王は、ぼうしが なくなったことを 非常に 悲しみました。家来達は 1日中、城の 中を すみずみまで 探し回りましたが、ぼうしは 見つかりませんでした。

 ブロギッシュ王は、最も 信頼できる 賢い 相談役達に 助けを 求めて、こう 言いました。「なんじらなら、必ずや、私の 愛用の ぼうしを 見つけることが できよう。」

 すると、賢い コントグが 切り出しました。「私の 思うに、昨日、母君を お訪ねに なられた時、母君の お屋敷に ぼうしを 置き忘れられたのでは ないかと 存じます。」

 「ふむふむ、そうかも 知れん。」と、王様は 言いました。

 「私は、王様が クータン*に 乗って 出かけられた 時に、頭から 落ちてしまったのでは ないかと 存じます。」と、偉大なる ベショットが 言いました。(*クータンは、ノグ星に 生息している、馬に 似た 動物。一つ目で 紫色の 毛を している。)

 「ふ~む。それも 考え得る ことじゃな。」と、王様は 言いました。

 「王様。私は、ぼうしの ありかを 存じ上げて おります。」と、せっかちな ダッシュフットが 言いました。「昨夜、バルコニーに お立ちに なられていた 時は、風が 強う ございました。それで、風が 頭の 上から ぼうしを さらって いったので ございましょう。その時分、風は 東に 向かって ふいて おりましたので、城の 東側の 野原を 探せば、必ずや、見つかることで ございましょう。」

 「それも そうじゃな。」 王座から 立ち上がりながら、王様は 言いました。

 「私は、なくなった ぼうしの ことで わずらい過ぎて、くたびれて しまった。もう 休むゆえ、この件は、有能な なんじらの 手に 任せることに する。なんじらなら、必ずや、私の ぼうしを 見つけるための 方法を 考え付くであろう。みんなが 仕事に 精を 出せるよう、見つけた 者には ほうびを つかわそうぞ。では、私は 休むと する。」

 王の 相談役達は、どうしたら いいか、集まって 相談し始めました。

 「まず 最初にだが。」と、ベショットが 切り出しました。「ダッシュフットの 考えは、完全に 当てが 外れておる。『風』とは 言っても、それは、ただの そよ風であった。王の ぼうしに 何が 起こったのか、私が 言ったことの ほうが、ずっと ありそうな ことじゃ。」

 「何ですと?」と、ダッシュフットが さけびました。「君の 言ったことの ほうが、ありそうも ないばかりか、われらの 賢い 王が クータンに 乗って 出かける 際に、ぼうしが 落ちないよう、しっかり くくり付けて 行かなかったと 思うとは、ばかげて おる。」

 すると、コントグが 言いました。「お二方は、王の ぼうしに 何が 起きたのか、おろかな 言い争いを 続けるが 良かろう。だが、王の 約束の ほうびを いただくのは、この 私だ。たまたま 昨夜、王が 母君を お訪ねに なったのを 知って おるのは、この 私なのだから。母君と お話しに なられた時、ぼうしを 取って どこかに 置かれたに 決まっておる。」

 「友の 方々。」 おとなしい トシュギが ていねいに 言いました。「王の ぼうしが いかように なくなったか、みなさんは それぞれ 良い 意見を お持ちです。もし われわれが 身を 低くして、たがいの 意見に 耳を かたむけ、協力して 探すなら、ぼうしは きっと 見つかるでしょう。」

 「ダッシュフットの 意見に 耳を 貸して、ぼうし探しに 手を 貸すだと?」 ベショットが 言いました。「偉大なる ベショットが、ぼうしを 探しに 野原を はいつくばるとでも 言うのか! 私のことを 何だと 思っておる? 野ねずみか?」

 「だが、昨日 王が 通られた 場所を、ただ クータンを 走らせて行けば、ぼうしが すぐにでも 見つかると 考えるほうが、ばかばかしいでは ないか!」 ダッシュフットが さけびました。

 たがいの 意見を けなし合う 言い争いは、延々と 続きました。終いに コントグが、自分こそが 3人の 内で 最も 賢いのだと 思いつつ、王の 母君の 家を 探すのだと、広間を 飛び出して 行きました。

 トシュギが、探すのを 手伝おうと コントグに 申し出ましたが、コントグは 王の ほうびを だれとも 分け合いたく なかったので、トシュギの 申し出を 断ってしまいました。

 ベショットも、すぐさま 王様が クータンに 乗って 通りがかった 森の 中を 探しに 出かけて 行きました。そして ダッシュフットも、野原に 向かいました。この 2人も、トシュギの 手伝いを 断りました。

 トシュギは たった1人、ぽつんと 広間に 残されました。友が みな、相談しながら 協力して 王様の ぼうしを 見つける ことよりも、ほうびの ことばかり 考えているのを 見て、悲しくなって しまいました。

 (私は ただ、手伝いたかっただけなのに。だが みんな、私に 手伝わさせては くれない。)と、トシュギは 思いました。

 トシュギは 静かに 広間の すみに すわり、みんなの 帰りを 待ちました。ほうびは、だれが もらうことに なるのでしょう。ふと、トシュギが 辺りを 見回すと、王座にある 紫色の 大きな クッションに 出っぱりが あるのに 気づきました。

 (出っぱりが あっちゃあ、王が すわられる 時、すわり心地が 悪かろう。すわり心地良くして 差し上げられるか、見てみると しよう。)

 トシュギが クッションを 持ち上げて 平らに しようと すると、その 出っぱりが クッションの せいでは なく、クッションの 下に ある ものの せいだと 分かりました。何だろうと 手に 取って よく 見てみると、それは、王様の なくなった 紫色の ぼうしでした。

 ぼうしが 見つかって、王様は さぞかし 大喜びするだろうと 考えると、トシュギは 思わず ほほえみました。

* * *

 あくる日の 朝、王の 相談役の 4人全員が、再び 王様と 共に、広間に 集まりました。賢い コントグと、偉大なる べショットと、せっかちな ダッシュフットは めいめい、王様の ぼうしを 見つけるために 自分が どんなに 努力を 注ぎ、必死に 探し回ったかを、王様に とくとくと 語りました。けれども 最初の 3人の 話は みんな、結局 ぼうしを 見つけられなかったという 結末で 終わりました。

 最後に、おとなしい トシュギの 番です。トシュギは 自分の 後ろから、王様の お気に入りの 紫色の ぼうしを 出しました。きれいに 洗われ、形も 元通りに 整えられて あります。王様は たいそう 喜んで、すぐさま ぼうしを かぶりました。

 「ぼうしを 見つけてくれて ありがとうよ、トシュギ。さあ、約束の ほうびじゃ。」

 城を 出ると、他の 3人の 相談役達が トシュギの 周りに 集まって来ました。みんな、一体 どこで ぼうしを 見つけたのか、聞きたくて しょうが なかったのです。トシュギは つつましく、事の いきさつを 話して 聞かせました。

 ベショットと ダッシュフットと コントグは、だまったままでした。最近の 自分達の ふるまいに ついて、深く 考えて いたのです。

 「ダッシュフット、私は 君に あやまらねば。」 ベショットが 言いました。「王の ぼうしが どこで なくなったのか、君の 考えを 見下したりして、悪かったよ。」

 「ありがとう、べショット。」 ダッシュフットは 答えました。「だが、王の ぼうしは、バルコニーに おられた 時や クータンに 乗って おられた 時に 風で 飛ばされた わけでも なかった。私も、王の ぼうしを 見つけるのに 私の 考えが 一番だなんて 言い争った ことを、みんなに あやまるよ。」

 「私達は みんな、トシュギに あやまらねば。」と、コントグが 言いました。「トシュギ、君は 私達が おたがい同士に 耳を 貸すようにと 言ってくれたが、私達は みんな、自分が 正しいことを 証明し、王の 約束の ほうびを もらうことばかり 考えていて、君の 言うことに 耳を 貸すことさえ しなかった。」

 「みんな、ほうびを ひとりじめに したがって、君の 手伝いさえ 断ったよね。」 ダッシュフットが トシュギに 言いました。

 「みなさん、ありがとう。」と、トシュギが 言いました。「気に しなさるな。王の 心づくしの ほうびで、いっしょに ごちそうを 食べに 行きたいと 思うのだが。来て 下さるかな?」

 「それは それは! 何とも ありがたい ことだ、トシュギ!」 コントグが 声を 上げました。「喜んで、お供させて いただくよ。」

 そして 4人の 相談役達は、ごちそうを 食べながら たがいの 友情を 楽しむために、連れ立って 出かけて 行ったのでした。