マックスのクリスマスの悩み
第1日目
クリスマスで困ること
(クリスマスで困ることは・・・それが、ぼくの誕生日でもあるってことだよな。)とマックスは思った。
12月1日のこと。シナモン・フレンチ・トーストと、カリカリ・ベーコンのおいしそうなにおいが、暖かい台所いっぱいに漂っている。タリー一家は、毎年恒例のクリスマス・シーズン第1日目の朝食を囲んで集まった。お父さんがマタイによる福音書から最初のクリスマスの物語を読み始めると、マクシミリアン・タリーの思いは、クリスマスの日に生まれた自分の不運をめぐって、あれこれとさまよい始めた。誕生日がクリスマスの日ということは、毎年、自分の誕生パーティーはクリスマスパーティーといっしょくたにされてしまうという運命にあるのだ。それだけではない。プレゼントだって、他の日に誕生日を祝ってもらう人達の半分くらいしかもらってないみたいじゃないか!
今までは、マックスは自分の誕生日でもあるクリスマスの日にもらうプレゼントの量に、ずっと満足していた。ところが、ある時同級生のジョーンズに、もっともらって当然じゃないか、と言われたのだ。その時は、「う~ん・・・。だけど、少なくとも、ぼくの誕生日を忘れる人はだれもいないよ!」と答えた。だが、後になってそれは、ヤボな返事のように思えてきた。
12月1日が来る何週間か前のある時、マックスは、あるアイデアを思い付いた。クリスマスの日に、パーティーを2回すればいい! そうすれば、ちゃんとした数のプレゼントがもらえるぞ!
「クリスマス精神に則って・・・」、マックスの空想は、お父さんの声で中断された。「・・・今年はミラーさん達に、雪のお城造りコンテストで有利な条件を提供してあげよう!」 みんな、クスクス笑った。
この「クリスマス精神に則って・・・」という非公式宣言は、3年前にお母さんが始めてから、タリー家の慣例となっている。家族の一人一人が、他の人とクリスマスの喜びを分かち合うために、その年のクリスマスにすることを一つ決めて発表するのだ。毎年催される雪のお城造りコンテストは、タリー父さんにとっては、とても重大な行事だった。ここ2年間は、連続でタリー家がチャンピオンの座を保ってきたからだ。ということで、マックスもタリー家の他の面々も、それはかなり目を見張らせるほどのクリスマス奉仕だということに同意した。
「クリスマス精神に則って、今月は、毎日午後の4時から5時までの間、マックスにコンピューターを使わせてあげるわ。」 そう言ったのは、マックスより3年上の姉、ソフィーだ。
「それはそれは、優しいね、ソフィー。」 お父さんがそう言うと、マックスはあきれた顔をした。
「クリスマス精神に則って、私達家族はオリーブグローブ老人ホームに、クリスマスキャロルを歌いに行くのよ!」とお母さんが言った。ソフィーとマックスは、思わずたがいに顔を見合わせて、ため息をついた。こうなることは分かっていた。毎年タリー一家は、オリーブグローブ老人ホームへクリスマスキャロルを歌いに行くのだ。実際、マックスはそれを楽しんでいたし、おもちゃ屋のパドレイクさんと話すのは、格別に面白かった。だが、今年マックスは、ちがうことを計画していた。
次は、ノアの番だった。とはいっても、2歳児が言うことといえば、常日ごろから発している「イェイ」くらいのもので、それ以上はだれも期待していない。
マックスは、チャンスばかりと宣言した。「クリスマス精神に則って、ぼくは自分の誕生パーティーを計画することにしたんだ。クリスマスパーティーの他に、ぼくの誕生パーティーまで計画するのって大変でしょ。だから今年は、ぼくが自分でパーティーを計画するよ。つまり、2回パーティーをするんだ。両方同じ日にね。」 そう言うとマックスは、お母さんやお父さんやソフィーや、さらにはノアが一言も意見を言わないうちに、あわただしく部屋を出て行った。階段をかけ上がり、自分の部屋へすっ飛んで行ったのだ。何しろ、誕生パーティーの計画で大忙しなのだから!
レジナルドの日記、12月1日
今年はみんな、ぼくの誕生パーティーで誕生プレゼントをくれること。それと、クリスマスの朝には、クリスマスプレゼントもくれること。これこそ、公平というものだ。
ところで、これを書いているのは、最近亡くなったおじいちゃんのレジナルド・タリー一世じゃない。マックスだ。表紙に「レジナルドの日記」と書いたのは、おじいちゃんのものならだれもいじらないからだ。念のため、この日記は空っぽのシリアルの箱の中に入れて、そばの服の山の下に置いてある。本当の題名は、「マックスが心ゆくまで自分の誕生日を楽しむ年」か、「作戦:ぼくにもっとプレゼントを」がいいかな。だけど、あまり見えすいたのはダメだよね。
第2日目
レジナルドの日記、12月2日
今日は最高だった! 庭の落ち葉をかき集めて、たき火をたいたんだ! ブリキのゴミ箱の中でね。その間中、お父さんはずっと、ゴミ箱にホースを向けていたよ。だけど、とにかく楽しかった。
夕食の後は、お母さんが一家みんなでできるゲームを用意していてくれた。みんなに「大きな大きなクリスマス・クロスワード・パズル」*を1枚ずつ配ってくれてね。最初にクロスワード・パズルを完成させた人が、来週見る映画を選べるんだ。ぼくが勝ったんだよ。きっと、ぼくの誕生月だからだね。
* https://www.mywonderstudio.com/ja/level-2/mammoth-christmas-crossword/
第3日目
マックスがしかられずに済んだ一件
今年のクリスマス、マックスはお菓子を焼く計画は立てていなかった。お菓子を焼くのがきらいだという訳ではない。ところでお母さんは、オリーブグローブ老人ホームのスタッフの人達に、クリスマスのごちそうを作ってあげたいと思っていた。つまり、何かおいしいものってことだ。マックスは「おいしいもの」には賛成したが・・・「でも、ぼくって、台所は使用禁止じゃなかった?」
「あはは、そうだったわね。」 マックスは、以前クッキーの焼き方を試して、クッキーを破裂させてしまったので、3か月の間、台所で何かすることは禁じられていたのだ。「でもね、焼かなくていいクッキーの作り方を見つけたの。だから、もしちゃんと作り方に沿ってやるって約束するなら、だいじょうぶよね? お母さん、そろそろ行かないと、PTA活動におくれちゃうわ。あなたがこれを手伝ってくれると助かるんだけど・・・。」
「分かった、お母さん!」 マックスは快く引き受けた。たった今、マックスはすこぶる上機嫌なのだ。それは、誕生日になったらもらえるであろう、すてきなプレゼントの数々を想像しているからに他ならない。クリスマスプレゼントの延長ではなく、れっきとした誕生プレゼントとしてもらうのだ。マックスは、もうリストを作り始めている。その日の終わりには、マックスの誕生パーティーの計画を手伝うために、親友のオーガスティン・ジェフリー、またの名をAJが来ることになっていた。それまでに、まだあと1時間くらいはある。(焼かないでできるクッキーだって? 朝飯前さ!)
レジナルドの日記、12月3日
またマックスだ。このクッキーは、本当にすごい。ただ、冷凍庫に入れて冷やしていたら、出すのを忘れちゃったってこと以外はね。思い出した時は、石みたいにカチカチになっていたんだ! おいしいかどうかを確かめるためには、味見をしなくては。それで、1つをコンロの炎の上にかざして、少しやわらかくしようとした。まずい考えだった!! お母さんが帰ってくる前に、片付けたけれどね。
追伸:AJとぼくは、誕生パーティーのテーマを、レーザーのうち合い合戦に決めた。AJって、最高のアイデアマンだね!
第4日目
レジナルドの日記、12月4日
今朝は、お父さんのノートパソコンでイエス様の誕生についての動画を見ながら、朝ご飯を食べた。病院ではなく、それも動物の匂いがする馬屋で赤ちゃんを産むなんて、マリヤは勇かんだったのね、とお母さんが言った。お父さんは、マリヤがだれの子を産もうとしているのか知らなかったヨセフも、大した人だったねと言った。ソフィーは、博士達が来たのはずっと後のことだったから、この動画に博士達が出てくるのはヘンだと言った。
赤ちゃんのイエス様は、何かちょっとかわいらしかった。ぐにゃぐにゃした赤茶色の子犬みたいだ。ぼくも、生まれたばかりの時はあんなだったのかな。
第5日目
レジナルドの日記、12月5日
今日は昼過ぎからずっと、クリスマスの物語のフランネルグラフを作っていた! ラミネートしたり、裏にフェルトを貼り付けたり、形を切り抜いたりしてね。14日にはセント・ジェローム・シェルターに行くから、ぼくはクリスマスの物語を自分流に話す準備をしておかなくちゃいけないんだ。そのうちに分かるよ! ぼくが話すクリスマスの物語では、異星人が侵略しに来るんだ。だって、つまるところ、天使だって異星人でしょ? 今ぼくは、光輪に付ける緑色のアンテナとかを作ってるとこなんだ。
第6日目
レジナルドの日記、12月6日
クリスマスカードを作るのは大変だ。だけど、今年は何か目立つことをやってみたい! 以下は、ぼくが実際にやってみた3種類の独特なアイデアだよ!
1.最もクリスマスっぽくない生き物を選んで、馬小屋でねている赤ちゃんのイエス様に会いに行かせる。ぼくはタコを選んだ。サンタクロースの帽子もかぶせてね。(もしぼくがタコだったら・・・やっぱり馬小屋のイエス様に会いに行きたいな。)
2.変わった物を使って「メリークリスマス」の言葉を書き表し、それを写真に撮って印刷し、クリスマスカードにする。
3.クリスマスのあいさつをビデオかオーディオにとり、それを電子メールで送る。
第7日目
クリスマスの起源と、マックスがクリスマスプレゼントで欲しいもののリストについて話す
12月1日が来る1週間前に、お母さんが、毎日夕食の場でみんなが順番に、クリスマス「豆知識」か、クリスマスに関係ある話をすることにしようと言った。今日は、お父さんの番だ。それでお父さんは、クリスマス休暇の起源についての「豆知識」を話すことにした。
「北方とちがって冬の寒さがそれほど厳しくなかった古代ローマでは、農業の神様サートゥルヌスを祝うサートゥルナーリア祭が行われていた。」 家族のみんながシェパードパイのお代わりをたっぷりお腹に詰め込んでいる間、お父さんは自分のノートパソコンから読み続けた。「冬至の1週間前から丸1か月続くサートゥルナーリア祭の期間中、人々は大いに飲み食いして浮かれ騒いだ。そして通常のローマ社会の役割は入れ替わり、1か月の間、奴隷は主人になり、農民が市の指揮を執った。すべての人が楽しみに加われるよう、会社も学校も休みになった。また、冬至のころローマ帝国には、ローマの子供達を祝うユベナリア祭もあった。それに加えてしばしば上流階級の人達は、無敵の太陽神ミトラの誕生日も12月25日に祝っていた。ミトラは赤子の神で、岩から生まれたと信じられていた。一部のローマ人にとっては、ミトラの誕生日が1年で最も聖なる日だった。」
「奴隷が主人になれるところがいいわね。」とソフィーが言った。マックスもうなずいた。
「それで、そのお祭りが、どういう いきさつでクリスマスになったの?」とお母さん。
「西暦4世紀になり、ローマ教皇ユリウス一世は、12月25日をキリストの誕生日として祝うことを定めた。」 お父さんは、さらに読み続けた。「伝統的な冬至のお祭りと同じ時にクリスマスを祝うことで、教会の指導者達は、クリスマスが一般大衆によりよく受け入れられることをねらった。」
「それは理屈にかなっているわね。」 ソフィーが意味ありげな眼差しでマックスのほうを見て言った。「だって、どっちみち、ごちそうを食べてお祝いするんだから、他の人の誕生日をいっしょに祝ってもいいわけよね?」
「一石二鳥か。」 お父さんも言った。「確かに賢いやり方だな。」
マックスは、顔中がじわじわと熱くなり、耳元まで赤くなってくるのを感じた。「でも、たとえ盛大なパーティーをやっても、クリスマスの七面鳥やらデザートやらイルミネーションやら何やらだけで、肝心の誕生日の本人・・・あ~、イエス様を抜きにしたら、気分を悪くするんじゃないかな。」 さてさて! 結局そういう話になったので、マックスは自分自身のクリスマス情報を公開しようと決めた。
「ぼくの誕生日はクリスマスの日だから、ぼくが誕生日に欲しいものを、クリスマス情報ってことにしてもいいよね。で、これがそのリストなんだ。」 マックスは立ち上がって、先日AJといっしょに作った自分の「誕生プレゼントに欲しいもののリスト」をみんなに配った。
「ぼくは、シャーロック・ホームズの指紋取りキットに、極秘侵入者警報機、火山作成キット、自分で作るロボットアーム作成セットが欲しいんだ。それと、誕生プレゼントとクリスマスプレゼントは別だってことを忘れないでね。クリスマスプレゼントには、何を選んでもいいよ。ぼくが好きなものならね。」 そう言い終えると、マックスはいすに座った。
レジナルドの日記、12月7日
きっとみんな、ぼくの誕生日に何を買ったらいいか、一生懸命考えているにちがいない。だって、夕食の後半はみんな、ものすごく静かだったもの。
第8日目
レジナルドの日記、12月8日
お父さんが、クリスマスについての記事がいろいろあるリンクを送ってくれた。AJにも教えてあげなくちゃ。クリスマスの歴史についての動画もあるよ。
・クリスマス・ラブ:https://family.gr.jp/christmas/keyword/index.html
・クリスマスの歴史:https://www.youtube.com/watch?v=CplBlizSt_k(※リンク先のYouTubeに日本語の字幕を出すには:右下の設定(歯車マーク)→字幕→英語(自動生成)→自動翻訳→下から2番目の日本語を選択)
第9日目
レジナルドの日記、12月9日
ずいぶん長いこと、クリスマスプレゼントを買うためのお金はためていたけど、今年はみんなに、ぼくがしてあげられることのクーポンをあげることにした。それを思いついたのは、お母さんが、ぼくがお母さんのために買ってあげられるどんなものよりも、ぼくがしてあげたことのほうがいいわって言ってたからだ。そうすれば、ぼくも自分の誕生パーティーのために、オービーワン・ケノービのコスチュームが買えるしね。
お父さんのためのクリスマス・クーポン:お父さんの代わりに、洗車をしてあげるね。(洗車1回分)
お母さんのためのクリスマス・クーポン:お母さんの代わりに、食事を1回作ってあげるね。(何曜日でもいいよ)
ソフィーのためのクリスマス・クーポン:お姉ちゃんの物はさわらないからね。(長い間)
ノアのためのクリスマス・クーポン:いっしょに遊んであげる。(必要な時に)
第10日目
マックス、障害物にぶち当たる
「自然の中で暮らしたいなら、たくましくならないといけないよ。」 マックスは居間のストーブの前で、ワトソンのために毎日の訓練用障害物コースを作りながら言った。ワトソンとは、マックスのペットのカメだ。ワトソンが自分の水そうをぬけ出しては居間のソファーで自然番組を見ているのを何度も目撃してから、マックスは、ワトソンにきびしい運動プログラムを課しているのだ。
「ねぇ、マックス。」 お母さんが居間中に散らばったクリスマスモールや飾り玉を見下ろしながら言った。お母さんはほほえんでいたが、マックスは、何かが絶対におかしいと思った。
「ねぇ。」 またお母さんが言った。「この前、あなたが作ってくれたすてきなクッキーを、オリーブグローブ老人ホームに持って行ったでしょ? その時そこの所長さんが言ってたんだけど、今年は、恒例のクリスマスパーティーを24日ではなくて、25日の朝にするんですって。その日の朝は、あなたの誕生パーティーをしたかったのよね。」 お母さんは矢継ぎ早に続けた。「そうしたいのは当然だわ。・・・まぁ、それはあなたに任せようと思って。今年のクリスマスの日に何をするかは、あなたが決めたらいいわ。だって、その日はあなたの誕生日でもあるんだもの。あなたにとって特別な日にしたいわ。」
マックスは、そのことについて考える必要もなかった。「老人ホームに行くのは、別の日にできない? もう誕生パーティーの招待状を送っちゃったんだ。」とマックス。もし今キャンセルしてしまったら、同級生、それも特にジョーンズは、どう思うだろうか?
「そうよね! もちろんよ!」と、お母さんがすぐに言った。「じゃあ、老人ホームに行くのは、別の日にするわね。そうだわ、AJも行きたいかしら? AJの歌声は、とってもすてきだし・・・。」
「うん、きっと行きたいと思うよ。」とマックス。AJは歌うのが大好きで、声もバツグンだ。「聞いてみるよ。」 万事が再び落ち着いて、マックスもほっと胸をなでおろした。
第11日目
レジナルドの日記、12月11日
危ういところで災難を回避! ぼくの誕生パーティー計画は未だ進行中。
残念なのは、オリーブグローブ老人ホームのクリスマスパーティーをのがしてしまうこと。パドレイクさんが面白いんだけど、会うのはまた別の日だね。どうやったらLED懐中電灯でレーザー銃が作れるかを聞くなら、絶対パドレイクさんなのに。パドレイクさんに、こっそりジェリーツイスト(お菓子の名前)を持っていってあげようかな。
第12日目
レジナルドの日記、12月12日
今日の手作りプロジェクトは、クリスマス用オレンジポマンダー(オレンジにクローブを差し込み、シナモンなどのスパイスをふりかけて作る香り玉)だ! ホットチョコレートを飲む夜に、これで居間を飾ったら、みんなたまげるぞ!
参考:オレンジポマンダー(オレンジにクローブを差し込み、シナモンなどのスパイスをふりかけて作る香り玉)の作り方↓
https://www.sbfoods.co.jp/culture/movie/craft/page03.html
第13日目
レジナルドの日記、12月13日
これは、ぼくのお気に入りのクリスマスソング! 歌詞は、印刷しなくちゃいけなかった。みんなが歌詞を覚えていない曲が多かったからね。だけど、クリスマスキャロルの夜に声を張り上げて歌うなら、ここにある曲が一番好きだな。
よい王様ウェンセスラス:https://www.youtube.com/watch?v=XkbwvVP3Ut8
3隻の船:https://www.youtube.com/watch?v=ggqd5f7Y7jQ
クリスマスの12日間:https://www.youtube.com/watch?v=uFRjI7U1Inw
三人の博士(我らは来たりぬ):https://www.youtube.com/watch?v=9A5M0ltUKp4
第14日目
みんなを驚かせるモノの巻き
ヒイラギかざろう
ファラララ、ラーラ、ラララ
晴れ着に着替えて
ファラララ、ラーラ、ラララ
今夜は、タリー一家がみんなでクリスマスキャロルを歌ってホットチョコレートを飲む日だ。マックスは、甘くて暖かいものが欲しくてしょうがなかった。午後はずっと、家族を「驚かせる」ための準備で手いっぱいだったが、ついにマックスは、自分の努力の成果に満足した。家に残って準備ができるように、ソフィーにはセント・ジェローム・シェルターでマックスの代わりにフランネルグラフをしてもらい、その代わりに自分のコンピューターの時間を全部彼女にあげたくらいなのだから。マックスは、部屋のすみに立っている、その「驚かせるモノ」を見た。とてもかわいい。「えへへ、きっと、みんな驚くぞ!」
ここ数日間は、気まずい雰囲気だった。最初はみんな、マックスの誕生パーティーの計画について聞きたがっていたのに、最近ではみんな、マックスをさけている。・・・思えば、今までのクリスマスシーズンの食事は、いつもおしゃべりや笑いに満ちていた。が、近ごろはみんな、ちっとも面白味がないのだ。それでマックスは、みんなでクリスマスキャロルを歌ってホットチョコレートを飲む今年の夜は、自分が司会を務めようと決心した。マックスは、家族ぐるみで何かをやるのが好きだった。それこそ、クリスマスの最高の部分なのだ。
焼かないクッキーがうまくいってから、お母さんは、その夜の家族ぐるみのアクティビティのためにマックスがホットチョコレートを作るのも許してくれた。マックスは、その夜のために特大マシュマロも買ってくれるようにとお母さんを説得した。マックスは今までに、自分のにぎりこぶしほども大きなマシュマロなんて、見たことがなかった。お父さんだって、絶対に感激するに決まっている。
それからマックスは、最後の1時間ほどをかけて、準備の最終段階を終わらせた。本当は、クリスマスが大好きなのだ。(ただ、ちょっと気に入らない部分があるだけなんだ。だけど、それはじきに変わるさ。)と、マックスは思った。マックスはみんなのお気に入りのマグカップを並べ、ピカピカ点滅するクリスマスライトをつけた。そして、先日作ったオレンジポマンダーを出してきて、コーヒーテーブルに置いた。最後に、みんなのマグカップにマシュマロを押し込んだ。
「マクシミラン・タリー! 一体全体、そこにあるのは何なの?」
ソフィーとノアが、タリー夫妻の後に続いて入ってきた。ノアが熱意をこめて例の「イェイ!」を発した以外は、みんな、部屋のすみにある2本目のクリスマスツリーを見て、シ~ンとなった。2メートルほどもある主要なツリーよりは小さかったが、その分、飾り玉やらモールやらの奇妙な寄せ集めが大きなツリーをしのいでいた。
「お母さん、お父さん、ソフィー。シェルターのほうはどうだった? え、これ? 気に入った?」
「その木は・・・歌ってるのか?」
「そうなんだ!・・・っていうか、本当はツリーじゃなくて、これなんだけど・・・。」 マックスはツリーの中に手をつっこんで、カードを出した。カードのボタンを押すと、「誕生日おめでとう」の曲が止まった。
「『マックスへの誕生プレゼントはここに』ですって。」 ソフィーが、誕生クリスマスツリーの根元にあるふだを読んだ。
お父さんはせきばらいをして言った。「うむ。それで、これがお前の誕生クリスマスツリーってわけか?」
「そう。だけど、これはマックスマスツリーっていうんだ。面白いでしょ? ねぇ、みんな、ホットチョコレートはいらない? マシュマロが、最高にデカいんだ!」 そう言って、マックスは部屋を見回した。「ぼく達、クリスマスキャロルを歌って、ホットチョコレートを飲むんじゃないの?」
それを聞いて、お父さんとお母さんは上着を脱ぎ、ソフィーは台所へ向かった。ノアも、マシュマロを目指してかけていった。
第15日目
レジナルドの日記、12月15日
お父さんは、もう何度もぼくに、チャールズ・ディケンズの『クリスマスキャロル』を読むようにと言っている。それで、昨日お母さんとノアといっしょに図書館へ行った時、その話が書かれた子供向きの絵本を読んだ。20分で読み終わった。今までに本を読んだなかでも、最速新記録だ! まぁ、だいたいは、絵を見ていただけだったんだけどね。実際、話の内容はおおむね知っているんだ。お母さんとお父さんは、いつもスクルージさんのことを、こう言う。「スクルージみたいになっちゃだめ。」ってね。
何だか、スクルージさんがかわいそうだな。スクルージさんがあんなに気難しくなったのは、もしかしたら、だれも彼のことを構ってあげなかったからなのかも・・・。
第16日目
レジナルドの日記、12月16日
明日は、AJとぼくがチームを組んで、毎年恒例の雪のお城造りコンテストに臨む。・・・去年、ぼくたちはお城の形をした普通の砦を築いたけど、今年は奇抜なものを造るべきだと考えている。
自分へのメモ:AJに、ぼくの誕生パーティーではみんな、スターウォーズの登場人物の仮装をすることを話す・・・
第17日目
雪のお城造りの巻き
ついに、毎年恒例の雪のお城造りコンテストの日がやってきた。タリー父さんは、ミラー一家に勝つための機会を提供するため、自分達の城の豪華さは手加減すると約束していたが、マックスとAJは別のチームとして勝利をねらって競っている。空気は刺すように冷たく、空は真っ青で明るい。勝利を目指す雪城を造るには、絶好の天気だ!
「良い雪のお城を造るための鍵は、雪レンガの造り方にあるんだ。」 作戦を練りながら、AJが言った。AJは、コンテスト会場に引きずって持ってきた、ものすごく大きな黒い袋から、タッパーウェアを取り出した。「このくらいの形がちょうどいいと思わないかい?」
「え? あぁ、そうだね。それなら、いい雪レンガができるね。」 マックスはうなずくと、シャベルで雪をかき集め、大きな山にし始めた。
「ねぇ、今年は、ローマのコロセウムができるぞ。今までにだれも造ったことがないものを造りたいな・・・。」 そう言って、AJはマックスの方を見た。「マーーーックス! 聞いてんのかい?」
「あぁ、うん。いいね。ローマ時代の・・・えっと・・・家だね。ねぇ、AJ。ぼくの誕生日のレーザー合戦なんだけど。みんながスターウォーズの登場人物のかっこうをして来たら、面白いと思わない? ぼくは、オビワン・ケノービになりたいな。君はルーク・スカイウォーカーになったらいいよ。ぼく、もうすぐオリーブグローブ老人ホームに行くんだけど、そしたら、パドレイクさん・・・覚えてる? 彼に、レーザー銃の作り方を聞こうと思ってるんだ。それから・・・。」
AJは、作っていた雪レンガを投げ捨てた。「クリスマスシーズンになってから、君はずっと、自分の誕生日のことばかり話してるよ! ぼくの合唱会の発表にだって来なかったし、この前のシェルターでのショーだって、忘れちゃったじゃないか。・・・今日は、君のくだらないパーティーのことなんか聞かずに、ただ雪城を造りたいんだよ!」
「き、君は、ぼくの親友でしょ? だったら、ぼくに素晴らしい誕生日を過ごして欲しいはずじゃない?」 マックスは立ちすくみ、両わきで手をにぎりしめていた。
「た、確かにそうだけど、君はクリスマスを台無しにしてるよ・・・。」
マックスはAJに背を向けた。顔は熱くなり、目がヒリヒリしていた。もう雪城なんて、造りたくなくなった。ただ、家に帰りたかった。クリスマスなんて、やりたくないと思った。自分の誕生日でさえ、やりたくないと思ったくらいだ。だって、だれも気にかけてないみたいだもの。
その夜マックスは、お母さんがピアノで「御使い歌いて(グリーンスリーブス)」をひき、ノアが合間に「イェイ」を発しているのを聞きながら、考えていた。クリスマスシーズンの最初の日にもどって、すべてをやり直すことができたらなぁ・・・。だけど、どうやり直したらいいか、分からない・・・。
第18日目
レジナルドの日記、12月18日
ぼくたちは、クリスマスについて大げさにさわぎ立てる町に住む、この緑色のヘンな・・・う~ん・・・「生き物」についての映画を見た。とはいっても、彼自身はクリスマスが大きらいなんだ。それで、プレゼントをぬすみ、飾り付けも取り去って、みんなの楽しみを台なしにしようとする。最後にはよくなるんだけど、ぼくは彼が気の毒だった。彼はただ、みんながお祝いする時に取り残されるのがいやだっただけなんだと思う。
第19日目
レジナルドの日記、12月19日
「究極のクリスマス・クイズ」-ぼくは10問のうち、7問正解だった。最初考えていたよりも、むずかしかった。
(訳注:「究極のクリスマス・クイズ」は、付録のファイルを見てね。)
第20日目
レジナルドの日記、12月20日
お母さんが夕食の時に「賢者の贈り物」*という物語を読んでくれた。・・・悪いことに、ぼくのクリスマス・クーポンが、ちっぽけでつまらないものに見えてきた。
明日は、パドレイクさんに会える。いいこともあるってことだ。それと、AJとは、本当に仲直りしなくちゃ。
* 賢者の贈り物:https://www.hyuki.com/trans/magi.html
第21日目
マックスとパドレイクさん
「ぼく、クリスマスを台無しにしちゃったんだ。」 マックスとパドレイクさんが、オリーブグローブ老人ホームのロビーにすわって話していた。二人の片側には、LED懐中電灯の入った箱、反対側にはジェリーツイストの袋がある。ろうかの方からは、古そうなPAシステムから「聖なる夜」のメロディーが流れてくる。タリー一家はその日、オリーブグローブ老人ホームを訪問して、昼食時間にカフェテリアでクリスマスキャロルを歌った。AJもいっしょに来たけど、マックスとはまだ口をきいてくれない。マックスはついに、ずっとパドレイクさんに教わりたいと思っていた、LED懐中電灯でレーザー銃を作る方法を聞いた。だけど、今となっては、考えられることといったら、自分がどんなにイヤなやつだったかということばかりだった。「みんな、ぼくのこと、おこってるんだ。」
「まさか、みんなじゃないぞ。」 パドレイクさんは、手ににぎった赤と緑のキャンディを振って言った。「わしは、君のことをおこってはいないぞ。他のだれが、わしに何箱も何箱もジェリーツイストを持ってきてくれるかいの?」
「気にかけてくれてる人達だよね?」
「君の誕生日のことで、悩んでるんだね?」
「うん。・・・ぼく、家族に気にかけてもらいたくて・・・忘れられたくなかったんだ。クリスマスがぼくの誕生日でもあるってことをね。だけど、今はみんな、ぼくのことをさけてるんだ。ぼくは一生懸命だったんだけど、きっと、最悪の誕生日になっちゃうよ。」
「わしが小さかった時からは、もう何十年も何十年もたっておるが・・・」 そう言うと、パドレイクさんはジェリーツイストをもう一つ、口に入れた。「・・・やはり、確実に愛を見つける最高の方法とは、愛をいっぱいばらまくことじゃな。それも、しょっちゅうじゃ! 君はやさしい男の子だし、ご両親も君を愛しとる。きっと、素晴らしいことをご計画なさっとるさ!」
マックスは、自分の誕生パーティーの計画は自分ですると言い張ったことで、それをめちゃくちゃにしてしまったことをパドレイクさんには言いたくなかった。
「わしは自分の子供達を愛しておる。だから、子供達のためなら何でもするぞ。」とパドレイクさんが言った。マックスは、パドレイクさんの家族が遠くに住んでいて、休暇中も普通は来られないことを思い出した。
「パドレイクさんの家族は、クリスマスの日には会いに来るの?」
「いいや。だが、わしのことは心配ないさ。君には考えることがたくさんあるからのぅ。」
「もう、どうでもいいんだ! 素晴らしい日にしようとはしたんだけど、みじめな気持ちなんだもの。AJは、もうぼくと口もきいてくれないし。また前にもどって、全部やり直せたらなぁ。」
「できるとも! 前は何がクリスマスを特別なものにしていたのか、考えてごらん。そして、それを今からするんじゃ。今日から始めるのじゃよ。急がんと。クリスマスはもうすぐ終わってしまうからの。だがな、君は自分のために誕生日クリスマスツリーを考え出したくらいじゃ。発明の才能がある! このくらいのことはうまくやってのけるさ。」
老人ホームから帰るとちゅう、マックスは、パドレイクさんが言っていたことについて考えていた。やっぱり、みんなが自分の誕生日のことを気にかけてくれたらなぁとは思ったが、自分の計画はどうやらうまくいきそうにない。それに、自分の家族と親友のクリスマスを台なしにしてしまったことで、マックスはすまない気持ちだった。
(時間はあまり残っていない。だけど、すべきことはたくさんあるんだ!)とマックスは思った。みんなとの関係を取りもどさなくちゃ・・・。マックスは、そう決断した。
第22日目
レジナルドの日記、12月22日
朝食を食べながら、ぼくはお母さんとお父さんとみんなに、クリスマスの日にはみんなでオリーブグローブ老人ホームに行けるように、ぼくの誕生パーティーは取りやめにしたと言った。お母さんとお父さんとソフィーは、まるで自分の靴下でも吹っ飛んだかのようにびっくりした顔をした。ノアは例のごとく、「イェイ!」と言った。
実際、ぼくはクリスマスの日には、ぜひパドレイクさんに会いたかった。彼にはいっしょにクリスマスを祝ってくれる人がだれもいないし、パドレイクさんはぼくの誕生日を喜んでいっしょに祝ってくれそうな最後の人だからね。
クリスマスまでは、まだ3日残っている。ぼくには大きな計画があるんだ!
第23日目
レジナルドの日記、12月23日
雪かきは、寒い仕事だ。家の前の私道を終えた時にはまだ7時だったので、またベッドにもぐりこみたい気分だった。だけど、ぼくはノアをそ~っと居間に連れて行った。お母さんがゆっくり寝ていられるようにね。ぼくは、ノアにエッグ・イン・ア・バスケット(丸くくりぬいた食パンの真ん中に卵を落として、卵とパンを同時にフライパンで焼いて作る、目玉焼き入りのトースト)を作ってあげた。そして、「メリークリスマス」の代わりに「メリー」と言えるように教えようとしたけど、「ウィーシー」と聞こえる。だけど、まだ始めたばかりだからね。
レシピも調べないといけない。明日は、ブランチを用意することにしたから。お母さんも、何かが破裂しない限りは、喜んで他の人に料理をしてもらって構わないということだった。
夜には、クリスマスクーポンを書き直した・・・
・お父さんのためのクリスマス・クーポン:お父さんの代わりに、洗車をしてあげるね。(洗車3回分)
・お母さんのためのクリスマス・クーポン:お母さんの代わりに、食事を2回、作ってあげるね。
・ソフィーのためのクリスマス・クーポン:お姉ちゃんの物はさわらないからね。(ずっと)
・ノアのためのクリスマス・クーポン:いっしょに遊んであげる。(1週間に2夜)
第24日目
レジナルドの日記、12月24日
クリスマス前日のブランチ・メニュー
・ ソフィーとノアとぼくには、ホイップクリームをトッピングしてミントの葉を乗せたホットココア
・お母さんとお父さんには、泡立ったカプチーノ
・ チョコレートとズッキーニのスコーン
チーズ入りオムレツ
・ 苺ののったワッフル!
・ BGMにクリスマスキャロルを流す
ぼくは朝の6時に起きて準備したけど、その価値はあった。自分の薬指をやけどした以外は、何もこがさなかったしね。薬指には大きな包帯を巻いた。みんな、ぼくが立派に働けるってことに気が付くようにだ。ぼく達は丸2時間も、食べておしゃべりして笑った。今日は、お父さんも仕事が休みでよかったよ。
もうちょっとで忘れるとこだったけど、明日はぼくの誕生日だ・・・。
第25日目
クリスマスの日
(今年もクリスマスの朝がやって来た。それに、ぼくの誕生日も。) その朝オリーブグローブ老人ホームへ行くと決めたのは、正しいことだったとマックスには分かっていた。だけど、やっぱり自分のためにも何かささやかなことがあればいいなと思った。(ただAJと仲直りできるだけでも、ぼくにとってはうれしいんだけどな。・・・)
だけど、考え込んでるヒマはない。朝食の場でみんながすばやく「誕生日おめでとう、マックス」を歌って「メリークリスマス」を祝った後は、お母さんからのお知らせだ。みんな、10時30分までには必ず車に乗っているように! クリスマスプレゼントや誕生プレゼントを開けるのは、帰宅してから。
(気のせいかなぁ? 受付の人が、スターウォーズのレイア姫にそっくりなんだけど。) マックス一家がオリーブグローブ老人ホームのロビーに入って来た。受付の人は白いローブを着て、髪の毛は真ん中で分けて頭の両側で大きなだんごという髪型だ。いつもスタッフが着ている水色のシャツとは、ずいぶんかっこうがちがう。
(待てよ! 部屋のはしっこから出てくるのは、ウーキーじゃないか? サンタのぼうしをかぶって?) マックスは、この奇妙な事実のひずみを、お母さんとお父さんがどう受け留めているだろうかと、二人の方をちらっと見たが、二人とも、別の方を熱心に見ている。すると、ウーキーが真っ直ぐマックスに向かってきた。
「ハッフィー・ハースフェー、ファックス!」
「何だって?」
ウーキーが頭にかぶっていたものを取ると、笑顔のパドレイクさんが現れた。「ハッピー・バースデー、マックス!」
それが合図かのように、ロビーは次々と現れた異星人客であふれ返った。ジェダイの騎士達、ピカピカのロボットみたいな人達、レイア姫の髪形をしたたくさんの人達(それに、あれはピエロ?)がみんな、「ハッピー・バースデー・トゥー・ユー」を歌った。ロビーのすみには、いつの間にか自分のマックスマスツリーまで持ち込まれている。低い枝の下には、プレゼントが山積みだ。
「パドレイクさん? お母さん? お父さん?」
「パドレイクさんのアイデアだよ。2日前にパドレイクさんに呼び出されて、この計画を聞いたんだ。AJも加わってね。私達はみんな、おまえのために特別なことをしてあげたかったんだ。」
すると、AJがマックスのそばに現れた。「うわぁ、すごく似合ってるよ。」 AJのルーク・スカイウォーカー姿を見て、マックスが言った。
「君のコスチュームも持ってきたよ。」 ちょっとほほえみながら、AJが言った。「この前は、ごめん・・・。」 二人が同時に言った。二人とも、ニヤリと笑った。
「見て、パドレイクさんが作ってくれたんだ!」 そう言いながら、AJとマックスの方にやってくるのは、ジョーンズだ。手には、プラスチックのレーザー銃になったLED懐中電灯を持っている。「今までで最高の誕生パーティーだ!」
マックスは、パドレイクさんの方を向くと、言った。「パ、パドレイクさんがぼくのために、これを全部してくれたの?」
「わしだけじゃない。君のお母さんやお父さん、それにノアもじゃ。ソフィーは、青いケーキを焼いてくれたぞ。AJは、同級生達を呼んでくれたし。君の家族が私達のクリスマス・パーティーに来ると聞いた時、みんな、お楽しみに加わりたいということになったんじゃ!」
「だけど、みんな、ぼくのことが大きらいなんだと思ってた・・・。」
「ばかなことを言わないで。」とソフィー。「ただ、あなたの話すことが例のことばかりだったから、うんざりしてただけよ。」
「分かってるよ。本当にごめん。だから、つぐなおうとしたんだ。」
「分かってるわよ。」とお母さん。「みんな、言葉で言い表せないくらい感動したわ。あなたには、最高の誕生パーティーにしてあげるって言ってあげればよかったわね。だって、本当にそうだもの。だけど、あなたが全部自分でやるって言い張るものだから・・・。」
「ぼく、みんなの足を引っ張っちゃったね。」 そう言うと、マックスは気分がよくなった。家族が自分をゆるしてくれることは分かっている。だって、クリスマスだもの。自分の誕生日だしね。
「全くその通りだったよ!」 AJがそう言うと、みんな笑った。
レジナルドの日記、12月25日
急がないと。お父さんが、裏庭で雪のすべり台を作ろうって言ってるから。ただ、来年のために、自分が忘れないようにメモをしておきたいんだ。クリスマスの悩みは、結局、気を悩ますようなことにはならなかったってことをね。
終わり
文:R.A.ワッタ―ソン 絵:松岡陽子 デザイン:ロイ・エバンス出版:マイ・ワンダー・スタジオ Copyright © 2021年、ファミリーインターナショナル