柔らかくしなやかに曲がるロフティ
青々とした森林でおおわれた丘のてっぺんに、ロフティという立派な木が立っていました。ロフティは、大きくて誇り高く、頑丈な木でした。
ある朝のこと。木々は、暖かいそよ風の中で枝をなびかせながら、日なたぼっこをしていました。ロフティは周りの木々を見て、しかめっ面をしました。(木である我々が、ちょっとした風にもすぐなびくというのは、何ともおかしなことか。風に押されて しなったり なびいたりするなんて、いやなこった。自分の枝が風の吹くままにゆさぶられるなんてね。私はむしろ、自分の枝は自分で治めていることを、みんなに見せたいものだ。)
しばらく考えた後、ロフティはあることを思いつきました。「よし、自分の枝は自分だけで治めることにしよう!」 ロフティは誇らしげに、他の木々に宣言しました。「私は、風に吹かれても、自分の枝が動いたり、しなったり しないようにすることにした。風の気まぐれになんか、身を任せるものか。私は、お前達おろかな木々のように、しなったり踊ったりはしないぞ。自慢の頑丈さがどれほど見栄えよくなるか、見せてやろう。」
その夜、風が強く吹き始めました。ロフティは、風に吹かれたり ゆさぶられたり しないように、枝々を固くし、力の限りをつくして、じっとしていました。
まもなくすると風ははげしくなり、やがて大嵐になりました。それでもロフティは、少しも枝をゆれ動かさせまいと決意していました。「我々の動きがすべて風任せである必要はないことを、証明するぞ。」 そう言って、ロフティは他の木々に自慢しました。
周りの木々は、風と共に踊りながら、嵐を楽しんでいました。「風の中で踊るのって、すごくわくわくするよ!」 踊っているシラカバが、嵐よりも大きな声で叫びました。「私の枝葉は、まるでくるくる回転しているみたいだ!」
「私の枝を見て! 飛んだり跳ねたりしているわ!」 ヒノキも、飛び跳ねながら言いました。
(風になびくなんて、おろかな木どもだ。)と、ロフティは思いました。
その時です。突風が吹いてきて、ロフティに強くぶち当たりました。ロフティは、根がぐいっと強く引っ張られるのを感じました。突然、ロフティは、自分が根こそぎ地面から抜けて、吹き倒されるのではないかという不安におそわれました。そこで、強く構えていた姿勢を素早くゆるめ、枝を風になびかせるままにしました。
「風が強過ぎて、もうちょっとで根こそぎになるところだったんだ。」 自分の枝がなぜ、今は風になびいているのか、ロフティは仲間の木々に訳を話しました。
枝が風になびくのに任せると、ロフティの心には喜びがあふれてきました。「ああ、何て楽しいんだろう!」 ロフティは声をあげました。「風といっしょに踊るのがどんなに楽しいことなのか、私はすっかり忘れていたよ!」
あくる朝、嵐は過ぎ去って、太陽が輝きました。森の木々は、すてきな明るい日をむかえました。その中でも、ロフティはとびっきり幸せでした。「私は再び人生を楽しむことができるようになったよ!」と、ロフティは言いました。「ひどく高慢で頑固になっていた時は、人生が退屈だった。だけど今からは、謙虚でしなやかな木になりたいと思う。私も、仲間の君達のように、風に吹かれて枝がたわんだり しなったりするままにさせるよ。」
木々は皆ほほえみました。ロフティが自分達といっしょに再び人生を楽しむことができるようになって、うれしく思いました。また、しなやかになることの大切さも思い出すことができ、感謝したのでした。
私は自由だ!
考えてみよう:
・「順応性がある」とは、どんなことだと思う? (「順応性」の意味を知らなかったら、辞書で調べてみよう。)
・順応性のある考え方をするのが良い状況とは、どんな時だと思う?
作者不明 絵:ジャン・マクレイ 彩色とデザイン:ロイ・エバンス出版:マイ・ワンダー・スタジオ Copyright © 2020年、ファミリーインターナショナル