ヨシュアについての他の物語「川にできた大通りと、最高に型破りな戦い」も、読んでね。
聖書の冒険物語:カビの生えたパンでだまされる話と、太陽が静止した日
子供のためのヨシュア記第9~10章
イスラエル軍がエリコに勝利し、次いでアイの町も征服されたことが国中に知れ渡り始めると、カナン人は恐れをなした。それで、より大きな町々の支配者らは、連合軍を結成してイスラエルと戦おうと決意した。
その一方、できることなら、侵略者達と和平条約を結んだほうがいいだろうと考える町もあった。ギベオンがその1つで、町の長達は自分達を守るための策略をめぐらした。
ギベオンはアイからそれほど離れていなかったので、すぐに手を打たなければ、次は自分達が滅ぼされてしまうかもしれないと思った。そこで彼らは、数人の男達を遠くの国からやってきた大使のように変装させた。ロバには古びたずだ袋と、ぶどう酒を入れるつぎはぎの革袋をのせ、男達には履きつぶした履物を履かせ、着古した服を着させて、カビの生えたパンを持たせた。彼らは、ヨシュアの野営していたギルガルにやって来て、言った。「私達は遠くの国から、平和条約を結んで下さるようお願いするためにやって来ました。」
イスラエルの指導者達の中には、この旅人らしい者達をあやしみ、注意深く観察する者達もいたが、だれもその正体を見破ることはできなかった。そこでヨシュアは、彼らがだれで、どこから来たのかとたずねた。
彼らはわざと長旅でつかれ切ったような声で言った。「私達は、遠くの国から旅して来ました。私達は、あなたがたの神があなたがたをエジプトから導き出すためにして下さった偉業や、アモリ人の王達を征服するのを助けて下さったことを耳にしました。」 もし遠くから来た旅人なら、ヨシュアがエリコやアイを征服したことは知らないはずなので、身元がバレないように、それらの町については口に出さぬように努めた。
彼らの言ったことをヨシュアやイスラエルの長達が信じ始めた様子を見ると、よそ者達は持ってきた食べ物を指して言った。
「これは、私達が持ってきたパンです。家を出た時には、まだ焼きたてだったのに、固くなってカビが生えてしまいました。ぶどう酒の革袋も、入れた時は新しかったのに、古くなってひび割れてしまいました。着ている服も履物も、長旅のせいでボロボロです。」 彼らは悲しげに言った。
その話を聞いていたヨシュアも他の長達も、彼らを信じてしまった。カビの生えたパンを見ては、反論できなかった。それでヨシュアは彼らと平和協定を結び、彼らを生かしておくこと、彼らの町を攻撃しないことを約束したのだった。
ところが3日もたつと、彼らのうそはバレてしまった。ヨシュアも他の者達も、まんまとだまされてしまったことで、どれほど自分達の愚かさに腹が立ったことだろう。それでも彼らは、主の御前で誓いを立てたために、約束を守った。ギベオンの町にやって来た時、彼らを生かしておいたのだ。とは言え、うそをついた罰として、ギベオン人はイスラエルのどれいになることが言い渡された。
どうして、ヨシュアやイスラエルの長達は、このようなずる賢い人々にだまされてしまったのだろうか。聖書には、イスラエルの人々がギベオン人達の持ってきた食べ物は調べたが、神の指示を求めることはしなかったと書かれている。つまり、訪問者らの外見とカビの生えたパンを見て、不審には思ったが、そのことについて主にたずねなかったということだ。
神は、いかにしてエリコとアイを攻めるかについて指示を与えて下さった時と同じく、このことについても指示を与えようとしておられた。ところが、ヨシュアも部下達も、2度の勝利で少々高ぶって自信過剰になっていたのか、このような一見明白に思えることに関して、神にたずねる必要はないと思って油断したために、着古した服や固くなったパンでだまされてしまったのだ。もしこのことで神に知恵と導きを求めていたら、彼らはだまされないで済んだことだろう。ところが、だまされてギベオン人と平和条約を結ぶだけで事は終わらなかった。ヨシュアがエリコとアイを征服したこと、そしてイスラエルがギベオンと平和条約を結んだことを聞いて、カナンに住むアモリ人の王の一人アドニゼデクが、危機感を募らせたのだ。
アドニゼデクの民もまた、同様だった。というのは、ギベオンが重要な町であって、アモリ人の王達の町にも等しく大きな町だったからだ。また、ギベオンの戦士達は屈強なことでも知られていた。その彼らがイスラエルと同盟を結んだと聞いたアドニゼデク王は、すぐさま他のアモリ人の王達に緊急メッセージを送って、この深刻な事態を伝えた。
「私達に加勢して、ギベオンと戦うのを助けて下さい。彼らはヨシュアとイスラエル人と、和平を講じてしまいました。」 それで、アモリ人の王達はギベオンを攻撃するために、連合軍を結成した。
まもなくしてヨシュアは、ギベオンから援軍を求めるメッセージを受け取った。「どうか、あなたのしもべらを見捨てないで下さい。すぐに来て、私達を助けて下さい!」
自分をだました民を助けるというのは皮肉に思えるが、その地から追い出すようにと神に命じられていた邪悪なカナンの王達に、イスラエルがすきを与える余裕などないことは分かっていた。
しかし今回は、計画を実行する確証として、ヨシュアは最も大切な導きを主に求めた。ギベオンのことから貴重な教訓を学んでいたため、神の指示を求めることを決意していたのだ。
主はヨシュアに答えて、こう言われた。「彼らを恐れてはならない。わたしはすでに彼らをあなたの手に渡したからである。彼らの誰一人として、あなたの前に立ちはだかることはできない。」 主は、彼らと共にいると約束されたのである。
神からの進軍の合図を受け取るや否や、ヨシュアは計画を決行した。いつもの軍に加えて、最も優れた戦士達を召集し、夜通し進軍したのだ。彼らが夜明けまでにギベオンに着いたため、敵は意表を突かれた。
激しい戦闘が続いた後も、神はひそかにいくつかの切り札を用意しておられた。神は敵の上に大きな雹を降らせ、イスラエル軍の刃にかかった者よりも多くの敵兵が死んだのだった。
ヨシュアと彼の率いる軍が自分達にできることをした時、主は超自然的に介入され、彼らを助けて下さった。それでも5人の王達とその部下達が戦闘から逃れてしまった。そこでヨシュアは、神がギルガルで言われた完全なる勝利についての約束を思い出していた。つまり、彼の前に立ちはだかる者は一人もいないということである。
ヨシュアは、これが決定的な戦いであることを悟った。つまり、カナン人の勢力を絶ち、海に通じる極めて重要な道を開くことになるということだ。反対勢力を逃すわけにはいかなかった。
ところが、問題が一つあった。日がかたむき始め、影が長くなりつつあったことだ。もし日が山の向こう側に沈んでしまったら、敵は闇に乗じて脱出し、軍の増強を図って再度結託するだろう。
その瞬間、ヨシュアはイスラエル軍の前で大声を上げ、こみ上げてくる信仰から、主に呼ばわった。「日よ、ギベオンの上にとどまれ! 月よ、アヤロンの谷にとどまれ!」
すると、ヨシュアとその軍が敵を追撃し、イスラエル軍が敵を完全に制圧するまで、太陽は戦場の上空にとどまった。ほぼ丸一日、太陽は上空にとどまり、沈まなかったのだ! イスラエル軍が敵を完全に征服するまで、神は最も驚異的な方法で介入され、必要な時間をかせいで下さったのだった。
この大勝利の後も、ヨシュアはイスラエルの敵を次々に制圧していった。聖書には、こう書かれている。「イスラエルの神、主がイスラエルのために戦われたので、ヨシュアはこれらすべての王たちと、その地をいちどきに取った。」(口語訳聖書、ヨシュア記 10:42)
このすごい聖書の登場人物について、もっと読んでみよう。「聖書の偉人:ヨシュア」を見てね。
文:Good Thotsからの編集、Copyright © 1987年 デザイン:ロイ・エバンス出版:マイ・ワンダー・スタジオ Copyright © 2022年、ファミリーインターナショナル