道路の 上の 大きな 岩
昔々、一人の 王様が いました。その 王様は、国中の 民が とても わがままだったので、とても 悲しんでいました。だれも、人の 助けには なりたがらず、自分の 利益を 求めて 他の 人達と 争ってばかり いました。民は、あらゆる ことで 不平や 文句を 言いました。
ある日、王様は、お城の バルコニーから 人々の ひどい ふるまいを ながめて いました。「わが国には、誠実で 心の 正しい 人が、一人も いないのだろうか?」 王様は 少し 考えて いましたが、あることを 思い付きました。「そうだ! こう しよう! だが、だれにも 知られないように やらなくてはな。そうで ないと、うまく いかないから!」
夜に なると、大きな 黒い マントを 羽織った 人影が、お城から そうっと しのび出てきました。その人影は 大通りに 出ると、地面を 掘り始め、その後、とても 重そうな ものを 道に 転がして いきました。
翌朝 早く、王様が、市場が よく 見える バルコニーに 出てみると、奇妙な 光景が 目の 前に 広がって いました。大通りの ど真ん中に、大きな 岩が 転がって いたのです。岩の 周りには、人だかりが できて いました。王様は ほほ笑むと、こう 言いました。「これで、だれが 他の 人達や 王国の ことを 気に かけているか、じきに 分かるだろう。」
1日中、大勢の 人や 荷馬車や 馬に 乗った 人や 偉い 騎士や 貴族達が、岩の そばを 通り過ぎて 行きました。中には、通りの ど真ん中に ある 岩に 向かって、腹立たしそうに どなる 人達も いました。岩を ける 人達も いましたが、岩を どけようと する 人は、だれも いませんでした。
その日は、ゆっくりと 過ぎて いきました。王様は、毎時間 バルコニーに 出ては、だれか 岩を どけただろうかと 見てみましたが、岩は 丸1日中、通りを ふさいだ ままでした。
日が かたむき始めると、王様は 悲しい 気持ちで、今1度、バルコニーに 出てみました。(果たして、岩を どけようと するほど 思いやりの ある 人は、現れるだろうか?)
すると、年老いた 羊飼いが 羊の 群れを 連れて、こちらに 向かって 来るのが 見えました。
「一体 こったい、何で こんなに 大きな 岩が 道の ど真ん中に あるんじゃろう? 道を ふさいで おるじゃ ないか! みんなが 通れるように、どかさんとな。」
年老いた 羊飼いにとって、それは 大変な 作業です。羊飼いは 自分の 大きな つえを てこに して、ゆっくりながらも やっとの ことで、岩を 通りの わきの 方にまで 転がしました。
すると、羊飼いの おどろいた ことに、岩を どけた 後の 地面には 穴が あり、そこに 小さな 木箱が うまって いました。その箱を 取り上げて 見ると、ふたは 簡単に 開き、中には 金貨が ぎっしりと つまって いるでは ありませんか!
中には、手紙が 入って いました。手紙を 開くと、こう 書かれて いました。
この 岩を 道から どけるほど、他の 人達への 思いやりを お持ちの 方へ:この 金貨は あなたに 差し上げます!
感謝を こめて、国王より
「貧しい 者(必要を かかえた 人)を あわれむ 者は 主に 貸すのだ。その ほどこしは 主が つぐなわれる。」(口語訳聖書、箴言 19:17)
文:ポール・ウィリアムズ、TFI出版物の編集 絵:ゼブ デザイン:ロイ・エバンス出版:マイ・ワンダー・スタジオ Copyright Ⓒ 2022年、ファミリーインターナショナル