マイ・ワンダー・スタジオ
マルティン・ルター物語
木曜日, 5月 3, 2012

マルティン・ルター物語

第1部

 マルティン・ルターは、1483年11月10日、ドイツの アイスレーベンで、鉱山労働者の 家族の もとに 長男として 生まれました。両親は 彼を 神様に ささげ、トゥールの 聖マルティヌスに ちなんで、マルティンと 名付けました。聖マルティヌスは、4世紀の フランスで キリスト教に 改宗した 兵隊です。聖マルティヌスは、人々に イエスの 愛を 伝え、古い 異教徒の 寺院を 破壊しました。

マルティンの父:主よ、わたしたちは この子を あなたに ささげます!

マルティンの母:アァメン!

 マルティンは、5才で 学校に 通い始めました。先生は みんな、ローマカトリックの 修道院で 暮らす 修道士でした。

 マルティンの 母親には、食べさせなくては ならない たくさんの 子どもが いました。

マルティンの母:(子どもが 大勢だから、食べ物が 十分 なくて 大変だわ。) これを 学校に 持って行きなさい、マルティン。あなたの お昼よ。

 自分の 食事代と 教科書代を かせぐために、マルティンは しばしば 通りで 歌を 歌ったりも しました。

 マルティンは 優秀な 生徒で、じきに ラテン語も 学びました。当時、聖書も 含めて、大切な 本は すべて ラテン語で 書かれていたからです。(聖書は まだ ドイツ語に 訳されては いませんでした。)

マルティン:(ディオ・グラツィアスは、ラテン語で 「神に 感謝します」っていう 意味なんだね。)

 修道士は 子どもたちに、死んだ 時に 天国に 行きたいなら、罪を つぐなうために 良い 行いを し、聖徒たちに 祈らなければ ならないと 教えました。

修道士:神の お裁きを 受けたくなかったら、罪を 犯しては いけないよ。

 マルティン・ルターは いつも、神様に おこられているように 感じました。神様について 勉強は しましたが、神様が 愛だとは 知らなかったのです。(ヨハネの 第一の 手紙 4:8)

マルティン:(神様って、すごく 遠い 存在なんだなあ。)

 神様に 近く 感じたのは、一人で 森の 中を 歩いている 時だけでした。

マルティン:(すべてが きれいだな。まるで、神様が そこらじゅうに いるみたいだ!)

 マルティンは、歩きながら よく 歌を 歌っていました。ある日、教会の そばを 通りかかると・・・

マルティン:(歌を 歌っていれば、悲しくない。)

神父:おい、そこの お若いの。君は、だれに 歌を 教わったのかね?

マルティン:だれにも 教わったことは ありません。ただ、歌うのが 大好きなんです! 通りで 歌って、よく 小銭を もらったりも します。

神父:わたしの 合唱団で 歌う 気は ないかね?

マルティン:はい、喜んで!

 そこで マルティンは、歌うための 最初の 訓練を 受けました。後々に なって、神様は それを すばらしい 方法で 用いられることに なります。マルティンは、フルートや リュートの 演奏の 仕方も 学びました。リュートは、ギターに 似た 弦楽器です。

 マルティンは、とても 優秀な 生徒でした。エアフルト大学に 行って、弁護士に なるための 勉強も しました。

教授:マルティン、君は 物覚えが 速いから、じきに 法律の すべてを 知りつくすように なるだろうよ。

マルティン:ありがとうございます、教授。

 ある日の こと、大学で、マルティンの 人生を 変えてしまう 大きな 出来事が ありました。

マルティン:(ふ~ん。聖書か。きっと、興味深い 本なんだろうなあ。読んでみるか。)

 「神が み子を 世に つかわされたのは、世を さばくためでは なく、み子によって、この世が 救われるためで ある。」(口語訳聖書、ヨハネによる 福音書 3:17)

マルティン:(すごいぞ! つまり、ぼくが こんなに 悪くても、救われるっていう ことなんだろうか。だけど、どうして 今まで、聖書に そう 書かれていることを だれも 教えてくれなかったんだろう?)

 それ以来 マルティンは、聖書を 読んで、神様のことや、どうしたら 神様を 喜ばすことが できるのかを、もっと 知りたいと 深く 願うように なりました。

 さらに 進んだ 勉強を 続ける 前に、マルティン・ルターは、家族や 友人と 短い 休暇を 過ごしていました。

バーの男性:君は 法律の 本にも 長けているが、リュートの 演奏も それと 同じぐらい すばらしいよ!

マルティンの父:息子は、りっぱな 学者に なったよ! わしでさえ、息子を 「先生」と 呼ぶくらいだ。

バーの男性:ハッハッハ!

マルティン:光栄な ことですよ。

マルティンの父:マルティンに 乾杯! ドイツ一の 弁護士に なれるように!

男性たち:乾杯! 乾杯!

マルティン:ありがとう、みなさん。

 けれども、神様には、マルティンのために 別の ご計画が あったのです。大学に もどる 旅の とちゅうの ことです。

フランツ:心配するな、マルティン。ただの 夏嵐さ。無事に 帰れるよ。

マルティン:どこか、雨宿りできる 場所を 見つけないと!

 その時、雷が 落ちたのです!

ドカーン

マルティン:ああ・・・

マルティン:フランツ? フランツ! 何てことだ! 死んでいる! 神が おいかりなのに ちがいない! 善を 行って 神に おゆるしを いただかないと。神よ、わたしは 修道士に なることを 約束いたします。

 というわけで、マルティンは 死を おそれ、自分の 家族も 生涯の 仕事も 捨てて、エアフルトの 聖アウグスチノ修道会に 入ろうと 決心しました。

神父:何の ご用かな?

マルティン:神父様、あなたの あわれみと 神の あわれみを いただきとうございます。わたしは、修道士に なりたいのです。

神父:修道院での 生活は、とても きびしいものだ。食べる物は 少なく、睡眠時間も 短い。何時間も 祈り続け、たくさんの 重労働を しなければ ならないのだよ。そのような 生活をする 覚悟は あるのかね?

マルティン:はい、神父様。できる限りの ことを するつもりで ございます!

 マルティンは、良い 行いを すれば 神様の あわれみを いただけると 思っていました。そして、どんなに 一生けん命 働いたことでしょうか! 言われた ことは もちろんの こと、それ以上の ことを たくさん したのです。

 マルティンは 一度に 何日もの間 断食を して、冷たい 石の 床に 横たわり、何時間も 祈りを となえました。

マルティン:全能の 神よ、どうか お聞きください!

 来る日も 来る日も、ほどこしを 求めて 歩き回ることも ありました。

マルティン:どうか、ほどこし*を お願いいたします!

* 貧しい 人たちに あげるための お金

 マルティンは、ほかの 修道士たちに、いつも 自分の 罪について 話してばかり いるので、みんな、うんざりしてしまいました。

マルティン:兄弟よ、わたしは 全く ひどい 罪人なんだ! 告白しなくては。

修道士:マルティン、お願いだから、もう そのことは 話さないでくれ。

 何年も たってから、マルティンは こう 語っています。「もし 修行することで 天国に 行けるものなら、わたしこそ、その 修道士だった。」 けれども、マルティンが 完ぺきに なろうと すれば するほど、自分が どれほど 望みの ない 罪人かが 分かりました。どんなに がんばっても、自分を 救うことは 不可能だったのです!

 ある日、マルティンは 修道院の 院長さんに 自分の 心を 打ち明けました。

マルティン:神父様。わたしは どうしても 心の 安らぎを 見つけることが できません。神は、わたしに おいかりなのです!

ヨハン神父:ばかなことを 言っては いけない、マルティン修道士。神は、君を 愛しておられる! 聖書には、こう 書いてあるんだ。「もし わたしたちが 自分の 罪を 告白するならば、神は 真実で 正しい 方であるから、その 罪を ゆるしてくださる」とね。(口語訳聖書、ヨハネの 第一の 手紙 1:9)

マルティン:そうなんですか?!

ヨハン神父:そろそろ、君も 自分の 聖書を 持つ 時が 来たようだね。これは、君への おくり物だよ。君自身の 聖なる み言葉だ!

マルティン:ありがとうございます、ヨハン神父!

 真理に うえた マルティンは、ラテン語の 聖書を 読むのに 没頭しました。そんな ある日、まるで 光が パッと かがやいたかのごとく、ある節が 目に 入ってきました。

 「義人は 信仰によって 生きる。」(新改訳聖書、ローマ人への 手紙 1:17)

マルティン:(ふ~む。つまり、信仰だけが わたしを 救えるという ことだろうか?)

続く

* * *

第2部

 マルティンは、ザクセン州の フリードリヒ公爵によって 建てられた ヴィッテンベルク大学に、大学教授として 送られました。生徒たちは、マルティンが 教える 聖書の 講義に 深い 興味を 示しました。そのころ、聖書は 祭司にしか 読まれていなかったからです。

マルティン:これは、実に 大きな 特権です!

1510年に、ルターは ある 任務で ローマへ 派遣されました。6週間の 徒歩旅行の 後、ついに ローマに たどり着きました。

マルティン:聖なる ローマよ、万歳! 永遠の 都だぞ。

 当時、ローマは 神聖な 場所であると 考えられていました。教会の 頭である 法王が 住んでいたからです。ローマは、記念物や 聖像で 満ちていました。人々は 神様を 喜ばせようとして、そういった ものに ひれふしていたのです。

神父:これは、十字架から 取られたものである。

マルティン:(わたしが これを 見に来たことを、神は 喜んでくださるだろう。)

 このような 記念物を 見るために お金を はらって やって来た 人たちは、自分の 罪のために 煉獄で あまり 長く 苦しまなくて すむと 信じられていました。煉獄とは、天国と 地獄の 間の 「待合室」みたいな もので、そこで 自分の 罪を つぐなえると 信じられていたのです。

修道士:マルティン、ここ ローマには、イエスが お生まれになった 時に ねていた 飼い葉おけの わらが 1本 あるそうだよ。それから、モーセが 見たという 燃える 柴の 枝も あるそうだ。それだけじゃ ない。イエスが 天に 召された 時に 立っていた 石も 1個 あるという 話だ!

マルティン:ローマにある 教会を すべて 訪ねなくては。神が わたしたちに あわれみを ほどこし、祝福してくださるようにね。

 けれども、ローマは 「聖なる」 都とは 全く かけはなれた 場所でした。マルティンは いろいろと 見たり 耳に したりしているうちに、とても 悲しく、そして 腹立たしい 気持ちに なってきました。

マルティン:(どうして 祭司たちは、あんなに 金持ちなんだろう? 人々は、とても 貧しいと いうのに。)

神父:早く しろ! わたしは この 祭だんの 前で 主の 祈りを 50回 となえるために、金を もらっているんだからな。

修道士:きっと、サン・ピエトロ大聖堂が 世界一 壮大な 教会に なるだろうね!

マルティン:だけど、それを 建てる お金は どこから 来るんだ?

修道士:ヨーロッパ中の 人たちの ふところからさ。彼らは、法王が 神のような 存在だと 信じているんだ。

マルティン:あれは、だれだろう? どこかの 甘やかされた 王子かい?

修道士:ひざまずくんだ、おろか者! あの方こそ、教会の 頭である 法王、ローマ教皇だぞ。

マルティン:(ローマ教皇だったなんて! 主よ、おゆるしください。)7

修道士:さて、今度は ローマで 最も 聖なる 場所、神聖な 階段に 行かなくては。

 この 階段は、ピラトの 宮殿の 外で イエス様が 立った 階段であると 伝えられており、それが ローマに 運ばれてきたのでした。巡礼者たちは、煉獄にいる 友人や 親せきが 早く 出られるように 祈りながら、ひざを ついて この 階段を 上るのです。

修道士:わたしたちの 日ごとの 食物を・・・

マルティン:わたしたちの 負債をも おゆるしください。

他の修道士:天に います われらの 父よ。

 けれども、マルティンが その 階段を 上っていると、何度も 何度も、こういう 声が しました。

声:義人は 信仰によって 生きる!

マルティン:兄弟、これは ばかばかしいよ! もう、うんざりだ! 「義人は 信仰によって 生きる」のだから。(ローマ人への 手紙 1:17) ドイツに 帰ろう。

修道士:マ、マルティン修道士?

 ドイツに もどった マルティン・ルターは、引き続き 大学で 教え、神学の 博士号を 授けられました。

 それなのに、マルティンは まだ、神様の 最も 大切で かつ 単純な 真理について、はっきりと 分かっていなかったのです。

教授:おめでとう、ルター博士。

マルティン:ありがとうございます。

 けれども ある日、トイレに すわっていると・・・

 「あなたがたの 救われたのは、実に、恵みに より、信仰に よるので ある。それは、あなたがた自身から 出たものでは なく、神の 賜物である。決して 行いに よるのでは ない。それは、だれも 誇ることが ないためなので ある。」(口語訳聖書、エペソ人への手紙 2:8-9)

マルティン:(恵みだって? それなら、救いは 賜物なのか! 良い 行いや 聖徒たちに 向かって 祈ることでは 得られないんだ。ただ 神の 恵みに よってのみ、救われるんだ。) すごいぞ!

マルティン:まるで 霊が 新しく 生まれ変わったみたいに 感じるぞ!*

* ヨハネによる 福音書、3:3-8

マルティン:この 聖句が、わたしのために パラダイスへの 門を 開けてくれたんだ! 主イエスよ、愛しています!

 翌日、大学では・・・

マルティン:聖書を、大きな 木だと しよう。一つ一つの 節は、小さな 枝だ。わたしは、その 枝を 1本1本、すべて ゆさぶった。そして、すばらしいことを 発見したのだ。つまり、わたしたちは 信仰によって 救われるのであり、それ以外の 何物でも ないということだ。救いは 神からの おくり物であり、自分たちの 行いによって 得られるものでは ないということだ。

 それからと いうもの、マルティンは 罪からの 救いが 神の 恵みによる おくり物で あることを 教え始め、大勢の 生徒が それを 信じました。マルティンは、まず 聖書を 読み、その後 彼らの 母国語である ドイツ語で その 意味を 説明したのです。

マルティン:神は わたしたちを とても 愛しておられるので、わたしたちの 代わりに 死ぬために、ご自身の み子である イエスを つかわしてくださった。だから、イエスが わたしたちの 罪の つぐないを すべて してくださったのだ!

生徒:今まで わたしたちは、自分の 罪からの 救いを 得て 天国に 行くためには、善人でないと いけないと 教わってきたのですが。

マルティン:聖書に、救いは おくり物であると 書かれているのだよ。「罪の 支払う 報酬は 死である。しかし 神の 賜物は、わたしたちの 主キリスト・イエスにおける 永遠の 命である。」(口語訳聖書、ローマ人への 手紙 6:23) 君たちの 一人一人が、個人的に 神を 知り、愛することが できるんだ。

生徒:わあ、それは すばらしい!

マルティン:長くて 暗い 夜の 後、ついに 新しい 日が 来たんだ! わたしたちは 神の 愛について、みんなに 伝えなくては ならない!

 そういうわけで、マルティン・ルターは、まさに それを したのでした!

(続く)

* * *

第3部

 ローマの サン・ピエトロ大聖堂を 建てるのに 必要な ばく大な 費用を まかなうため、ローマ法王レオ10世は、ヨハン・テッツェルという 修道士に、ドイツ中を 行きめぐって 人々に 罪の ゆるしを 売る 権限を 与えました。教会に 十分な 献金を した 者は、自分 あるいは 家族の 罪が ゆるされると 言ったのです。

ヨハン・テッツェル:真っ直ぐ 天国に 行けるのは、聖人だけだ。完ぺきで なければ、煉獄と 呼ばれる おそろしい 場所で、自分の 罪のために 何千年も 苦しまねば ならんのだぞ!

男性:わしは 望みなしじゃ!

女性:テッツェル修道士だわ。

ヨハン・テッツェル:煉獄の 苦しみと 火から のがれて 真っ直ぐ 天国に 行くために、君は いくら はらう つもりかね?

男性:いくらでも、おおせの 通りに!

ヨハン・テッツェルローマ法王様が、この 手紙を 買う 者には だれでも、ゆるしを 授けようと お約束してくださったのだ。

男性:1枚 いただきます!・・・いや、2枚!

ヨハン・テッツェル:コインが チャリンと 音を 立てて 箱に 入ると、霊魂が 煉獄から 飛び上がる。

 ルターの 友人であり、助手でもある メランヒトンが、あることを 知らせに やって来ました。

メランヒトン:テッツェルという 修道士が、国中で 罪の ゆるしを 売って 回っています。

マルティン:何という ことだ! 救いは 高過ぎて、だれも そのために 十分な お金など はらえないはずだ。それを、イエスが 無料で 与えてくださったというのに。その 高ぶった 修道士 テッツェルに、思い知らせてやろう。

 その夜 ルターは、教会が 人々に、救われるための お金を はらわせる ことなど できない 理由の リストを 書きました。そして、それぞれの 項目に 番号を つけると、全部で 95に なりました。

 翌日の 1517年10月31日、ルターは 95項目から なる 文書を 教会の ドアに 打ちつけました。

男性1:何て 書いてあるか、読んでみよう。天国に 行くのに、お金も、良い 行いも 必要ないそうだ。信仰だけで よいと 書いてあるよ!

男性2:人は ゆるしを 得るのに 神と かけ引きする 必要は なく、それは 無料だって?!

男性1:こんなことを 言って、ルターは 殺されるかもしれないぞ!

 この 文書は、「95カ条の 論題」として 知られるように なりました。まもなく それは 翻訳され、たった 4週間のうちに 印刷されて ヨーロッパ中に 出回ったのです。ルターの 友人の 一人は、その 様子を 「まるで 天使たちが それを 伝える 使者だったかのよう」だと 言ったくらいです。

 神の み言葉の 真理は、反対勢力にも 関わらず、どんどん 伝わり続けました。そして とうとう、それは 法王の 耳にも 入りました。

法王:これは、よっぱらいの ドイツ人が 書いたに ちがいない!

神父:いいえ、法王様。彼は 大学教授です。そして、大勢の 人が その 教えに 従っています。

法王:わたしが 罪を ゆるすことが できないなどと、よくも そんな たわけた事を! 彼を ローマに 連れてまいれ。

 けれども ルターは ローマに 連れて行かれずに、ドイツでも 権力のある、ザクセン州の フリードリヒ公爵によって 支持され、守られました。フリードリヒは、ルターが ローマでは なく ドイツで 裁判に かけられるようにと 要求したのです。そのころ、法王レオ10世は 公爵の 支持が 必要だったので、ルターが ドイツで 裁判に かけられることに 同意しました。

 ルターは 何度も 教会の 高い 地位の 指導者に 呼び出されて、考えを 変えるように 説得されました。

教会の指導者:ルター博士、君の 言っていることは まちがっていると 認めたまえ。

マルティン:ですが、わたしの 教えは、聖書に 書かれていることからであると 証明できます。

教会の指導者:何も 証明など できはせん! 法王レオ10世が、君は まちがっていると おっしゃっているのだ。

マルティン:法王様は、神の み言葉よりも 上に 立つ 方では ありません。み言葉の 下で ございます。法王様は、初代の 使徒たちのような そぼくさに 立ちもどるべきで ございます。

教会の指導者:もう たくさんだ、ルター! これ以上 聞きたくない!

 大学に もどった ルターは、引き続き、新しく 発見した 教義を 教え続けました。そして、神が 自分に 示されたことを 説明するために 多くの パンフレットを 作りました。そして それは、キリスト教世界の 至る所で 印刷されたのです。

メランヒトン:ルター博士、ローマの 若い 修道士から 来た この 手紙を 読んでくださいよ。彼は 自分の 命を 危険に さらしてまで、町中で 博士の 書いた 印刷物を 配っているそうです。

マルティン:書かれた み言葉が、その 仕事を しているのだ、メランヒトン。印刷機*を、神に 感謝しよう。神の 真理を 幾倍にもして 広めるための、神からの 最高の おくり物だ!

* 印刷機は、ちょうど 1440年に 発明されたばかりでした。

 そのころから、ルターは ものすごい 量の 手紙や パンフレットや 説教や 本を 書き始めました。平均すると、彼は 残りの 生涯、2週間に 1通の 長い 文書を 書いたことに なります。 それは、102冊の 分厚い 本に なりました。

 ルターは、祈りにも 時間を 割き続けました。

メランヒトン:今日は、今までで 最高に いそがしい 日に なりそうです。祈りの 時間を 半分に しては どうでしょうか。

マルティン:その 反対だよ、メランヒトン。今日は、あまりにも するべきことが 多いから、祈りの 時間を 2倍に しなくては。

 ルターが 神様のために それほども 多くのことを 成しとげたのも、不思議では ありません。彼は、自分で しようとする 代わりに、神様に していただいたのですから。

マルティン:ああ、メランヒトンよ。ちょうど この 一切れの 肉を 見つめる 犬のように、わたしたちも 祈れたらなあ。犬は、この 肉に 全神経を 集中させるんだ。

しばらくして・・・

使用人:ルター博士。ローマ法王レオ10世から お手紙です。

マルティン:これは 警告だ。謝罪しなければ、わたしは 破門*されるそうだ。

* 教会員で いるのを 許さないこと。

マルティン:法王は、わたしを 反抗者と 呼び、説教したり 文書を 書くのを 止めろと 言っている。神は、わたしに 反対する 者たちを 使って、わたしに 大声を 上げさせようと しておられるのだ! 信じようと しない 者たちが うんざりするまで、わたしは 語り、さけび、書かなくては。

マルティン:たき火を 起こして、この 手紙と、真理を 宣べ伝えない 宗教の 本を、すべて いっしょに 焼きつくしてしまおう。

その夜

マルティン:真理を 教えない 宗教の 本や 書類は、みな さらばだ!

(続く)

* * *

第4部

1519年には、カール5世が ローマ皇帝に なりました。カール5世は、1521年に ヴォルムスの 町で 帝国議会を 開くことを 決定し、ルターを 裁くために、ドイツ中の 君主や 公爵や 司教が 集まりました。

メランヒトン:マルティン、行くな! 君は 命を ねらわれているんだ。

マルティン:いや、行かなければ。おく病者には なりたくない。わたしは 彼らの いつわりの 告発に 対抗して、真理の 証し人としての 自分の 責任を 果たさなくては いけないんだ。(エゼキエル書3:17-19を参照) たとえ ヴォルムスにある 家々の かわらの 数ほどの 悪魔が わたしを 待ち受けていたとしても、わたしは 行く。真理を 愛しているから 行くんだ。わたしは、嵐の 真っただ中に 追いこまれているんだよ。

その夜

マルティン:ああ、主よ。わたしの そばに 立って、この世の すべての 知恵と 戦ってください。わたしのためでは なく、あなたのために、永遠の 正義のために、戦ってください。

 ルターは、ヴォルムスへ 向かって 出発しました。

マルティン:さあ、歌おう。歌は、わたしたちを 元気づけてくれる。そして、神から 思いを そらさないように するのを 助けてくれる。

 ルター達は ヴォルムスに 着きました。ルターは 議会の 前に 姿を 現しました。

皇帝:この 男が そうか?

枢機卿:さようで ございます、皇帝閣下!

皇帝:そこに あるのは、そちが 書いた 本か?

マルティン:さようで ございます!

皇帝:そちは、そこに 書かれている 教えを すべて 否定するか?

マルティン:聖句によって わたしが 間違っていると 証明されない限りは、否定いたしません。わたしは、神の み言葉に しばられているのです。わたしは ここに 立っています! それ以上の ことは できません。わたしは、この 真理のためには、命も おしいとは 思いません。それだけは 確かです。神が わたしを 助けられますように!

皇帝:それでは、そちを ローマ帝国から 追放処分と いたす。

 その時点から、ルターの 命は 大きな 危険に さらされることに なったのです。ルターは 帰途に つきました。

マルティン:メランヒトン。わたしには まだ、自分が 本当に したいことを するための 時間が ないんだ。

メランヒトン:それは 何だい?

マルティン:聖書を ドイツ語に 翻訳することだ。普通の 人たちは、ラテン語が 読めない。それなのに、今は ラテン語の 聖書しか ないからね。

メランヒトン:それは すばらしい 考えだね、マルティン。きっと、いつか そのための 時間が できるよ。

すると、とつ然・・・

兵隊1:止まれ! ルターは、どっちだ?

マルティン:わたしだ。

兵隊2:彼を 連れて行け! 早く!

そして 彼らは 深い 森の 中へと 姿を 消しました。

メランヒトン:マルティン!

 この うわさは、すぐに 広まりました。有名な 画家 アルブレヒト・デューラーも、こんな ことを 言いました。

デューラー:何という ことだ。もし ルターが 死んだのなら、一体 だれが、わたしたちに 福音を 説明してくれるだろうか?

 ルターは、防備の 固い 大きな お城に 連れて行かれました。

兵隊:このような 形で あなたを お助けしなければ ならなくて、申し訳ありません、ルター博士。

マルティン:わたしを 助けるだって?

はい、わたしたちは あなたを 法王の 手から 救うために、賢公フリードリヒ公爵に つかわされました。

マルティン:わたしは、どれくらい ここに いなければ ならないだろうか?

兵隊:数ヶ月、あるいは 1年。ですが、博士の したい 仕事が あるのでは? 今こそ、書き物の 仕事を はかどらせる 時ですよ。

マルティン:(聖書か! 聖書を ドイツ語に 翻訳できるぞ。)

 身を かくしている この 期間は、疑いも なく 神様によって 定められた ものでした。マルティンは ここで、新約聖書を、人々の 日常言語であった ドイツ語に 翻訳することが できたからです。マルティンの 仕事ぶりは、すばやい ものでした。たったの 11週間で、マルティンは その 仕事を 終えてしまいました。

 この時期は、悪魔との 大きな 戦いの 時でも ありました。ある夜のこと・・・

サタン:ハッハッハ! 見てみろ、マルティン・ルター! お前の 罪の 長~い リストだ。

 ルターは、その 一つ一つを 読んでみました。

マルティン:確かに これは 全部 真実だが、お前が 忘れていることが 一つ ある。それは・・・「み子 イエスの 血が、すべての 罪から わたしたちを 清めるのである。」(口語訳聖書、ヨハネの第一の手紙 1:7) サタンよ、イエスの み名によって、お前を 叱責する!

ガッチャーン!

1525年、ルターは、カタリーナ・フォン・ボラという 元修道女と 結婚し、公爵に あてがわれていた 古い 修道院で 暮らしました。修道院は、いつも ルターの 話を 聞こうとして やって来る 訪問客で いっぱいでした。

 ルターには 6人の 子が いましたが、そのほかにも 大勢の 子どもたちを 養子に しました。彼は いつも、話し、読み、説教していました。そして 生徒たちは、彼が 言うことを すべて 書き留めるのでした。

 晩年、マルティン・ルターは 病気がちでしたが、それでも 最後まで 精力的に 働き、説教し、旅を し、学校を 設立し、書き物を していました。

マルティン:心地よい メロディーほど、人の 心を 落ち着ける ものは ない。音楽は 最高の おくり物だ。実に、神聖だ! 悲しい 思いを すべて 追いはらってくれる!

カタリーナ:マルティン、一体 どうやって 孤児を もう一人 引き取れると いうの? 今 ここに 住んでいる 人たちだけで、うちは もう、いっぱいよ。

マルティン:心配しなくとも よい。養う 口が 一人分 増えるたびに、神も その分 供給してくださるから。その子を 連れてくるようにと 伝えなさい。

マルティン:おねむり、ぼうや。わたしには あげられるような 金は ないが、富んでいる 神様が いるからね。

1546年2月18日、充実した 一生を 送った マルティン・ルターは、主の もとへ 行きました。

イエス:良い 忠実な しもべよ、よくやった! 主人と いっしょに 喜んでくれ。(口語訳聖書、マタイによる福音書 25:23)

マルティン:イエスよ、感謝します。

終わり

ダウンロード
タグ: 救い, 神の偉大な人々