マイ・ワンダー・スタジオ
自分の ことしか 考えなかった酋長
木曜日, 1月 31, 2013

自分の ことしか 考えなかった 酋長

 昔々、アフリカの ある 村で、日照りが 続いていました。村の 酋長は、自分の ことしか 考えない、とても 身勝手な 酋長でした。ある日、酋長は 水を 見つけたので、自分のために 井戸を 掘りました。

 「ついに、わしの 井戸が 出来上がったぞ。看板を 立てておかぬとな。モナク、金づちを 持って来い。今すぐ、この 看板を ここに 立てるのじゃ。」

 「かしこまりました、酋長。」

 しもべは、井戸の 上に 木の 看板を 打ちつけました。そこには、こう 書いてあります。

酋長の 家族以外は、だれも、この 井戸の 水を 飲むべからず。この 水を 飲もうとした 者は、死刑に 処す。

 「よろしい! 今から わしには、必要なだけの 水が 手に 入るのじゃ。」

 と、その時です。おじいさんが、つえを つきながら よたよたと やって来て、酋長に ぶつかりました。おじいさんは コップを 差し出すと、言いました。「水、水、どうか、水を 下さらんかね?」

 「あっちへ 行け、老いぼれめが。さもなくば、深い 穴に 放りこんでしまうぞ。この 看板が、見えぬのか? この 井戸は、わしと、わしの 家族だけの ものじゃ。」

 「それは それは、ご無礼を いたしました。わしは、目が 見えませんもので。」

 「そのような 言い訳は 通じぬぞ。今回は ゆるすが、二度と わしの 水を こいに 来るで ない。」

 「もちろんで ございます。あわれみを、ありがたく 存じます。」

 次の 日の ことです。酋長は バケツに 水を くもうとして、しもべと 共に 井戸に やって来ました。

 「モナク、バケツを 井戸の 中に 投げこむのじゃ。」

 「かしこまりました、酋長。」

 すると、バケツが 井戸の 底に ぶつかる 音が しました。酋長は 出来立ての 井戸の 中を のぞいて、びっくりしました。

 「な、なんと? 井戸に 水が ないだと?」

 「一体、どういう ことじゃ?」

 「ふむ。何日か すれば、また 水が わくであろう。」

 酋長は 毎日 井戸に やって来ましたが、水は ありません。

 「一体全体、どうして 水が わいてこないのじゃ?」

 ついに、酋長は 賢者を 呼んで たずねました。

 「モギジ、命が おしくば、どうして わしの 井戸に 水が ないのか、その 理由を 申せ。」

 「酋長よ、永久に 生きながらえられますように。井戸を 民と 分け合う 日まで、水は わかないでしょう。」

 「何だと? ふむ、そういう ことか。では、村人たちは、夜の 間だけ、井戸から 水を くんで よろしい。だが、昼間は わしだけが 使うのじゃ。」

 そこで、そのような おふれが 出されました。酋長は 次の 日に なって、井戸に 水が わいたか どうかを 見に やって来ました。

 「何だと? まだ 水が わいていない? ふむ。夜まで 待って、どうなるか 見てみると するか。わしは だれにも 見られないように、この 空家に かくれて、村人たちが 水を くみに やって来る 様子を うかがうとしよう。」

 日が しずむと、村人たちは 水を くもうと、空の 入れ物を 持って、村中から やって来ました。

 「神を ほめたたえよ! 水が あるぞ!」

 「何て 冷たくて 新鮮で いっぱい あるのかしら。さあさ、子どもたち。たくさん あるから、体も 洗えるわよ。」

 村人たちは みんな、心ゆくまで たっぷり 水を 飲み、持ってきた かめにも いっぱい 水を くみました。村の 子どもたちは みんな、びしょぬれに なるまで、水を かけ合って 遊びました。酋長は のどが からっからのまま、とまどいながら 家へ 帰って行きました。今まで 自分の ことしか 考えていなかったので、はずかしくて 村人たちに 水を 求めることなど できませんでした。

 次の 日に なり、太陽が のぼると すぐに、酋長は しもべを 呼んで 言いました。「来い、モナク。看板を 書きかえるのじゃ。あ、いや、書きかえて もらえるかの?」

 「かしこまりました、酋長。何でも お命じに なる 通りに 書きかえます。」

 しもべが 書きかえた 看板を 見て、酋長が 言いました。「これは いい! 実に いい 出来栄えだ。」 看板には、こう 書いてありました。「だれでも、かわいている 者は 来るが よい。来て、思う存分 水を 飲むが よい!」

 看板の ペンキが かわきかけてくると、地下から ぐんぐん 水が わき出る、何とも さわやかな 音が 聞こえてきました。

 「見よ、見てみよ、モナク! じきに、井戸が いっぱいに なるであろう。」

 「誠に、その 通りで ございます、酋長! ごらんください! 村人たちが 水を 飲むために、やってまいります。」

 今まで、ふきげんで 意地悪で 自分の ことしか 考えなかった 酋長が、村人たちと じょうだんを 言い合って 笑いながら、いっしょに 水を 飲んでいるのを 見て、みんな、びっくりです。その日以来、井戸には 日照りの 間も ずっと、新鮮で おいしい きれいな 水が たっぷり わき続けました。その 井戸は、決して かわくことの ない 井戸として、国中に 知られるように なりました。

 こうして、この 聖句は 成就したのでした。「物おしみ しない 者は 富み、人を うるおす 者は 自分も うるおされる。」(口語訳聖書、箴言 11:25)

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タグ: 子供のための物語, おしみなく与えること, オーディオ