みんなの おじいちゃんツリー
きれいな 庭園に、最高に 申し分の ない、1本の 美しい 木が 立っていました。枝は 空に 向かって 伸び、美しく つやの ある 葉が おい茂っていました。その木は、まるで 王子でも あるかのように、美しい 庭園の 真ん中に 高く そびえていました。すべてが 完璧でした。庭園は よく 手入れされ、芝生も 丹念に 刈られていて、枯れ葉は 一枚 残らず ていねいに そうじされていました。
この 美しい 庭園の 外には、へいを へだてて、手入れの されていない、みすぼらしい 木が 立っていました。その木は 見栄えも 悪く、枝は 四方八方に 伸び放題でした。刈り込みなどを してくれる 人は、だれも いません。その木は、通りすがりの 人達の 笑い物に なっていました。切りたおすべきだと 言う 人達も いましたが、「そのうち 役に 立つかも。」と言う 人達も いました。
王子のような 堂々とした 木は、へいごしに こちらを 見下ろして じまんしました。「わたしを 見てみなさい。とても たくましく そびえているだろう。みきも 全く 完璧さ。枝も、空に 向かって しっかり 伸びているぞ。それに 比べると、君は 何て 貧弱なんだ! たれ下がっている 枝だって あるじゃ ないか。一体 だれが お前さんを 見たいって いうんだい?」
小さい あわれな 木には、返す 言葉も ありません。きっと、大きな 木の 言うことは 正しいのでしょう! 自分は 確かに 美しいとは 言えないし、立ち止まって 見てくれる 人も いませんから。
季節が 移り変わり、毎年 春に なると、この 小さな 木に 若葉が 芽生え、枝も 増えていきました。それが、この木に 希望を 与えてくれました。もしかしたら、いつか、何かの 役に 立てるかも。いつか、だれかが 自分を 必要と してくれるように なるかも…。
そして、年月が 過ぎていきました。庭園の 中では、王子のような 木は、ますます 強く、高く、たくましく なりました。彼は へいごしに、この 独特な 形をした 木を バカに し続けました。「何て みじめな やつなんだ! 私は、ますます 堂々として 完璧に なっていると いうのに! お前には 木と 呼ばれる 価値さえ ないじゃ ないか。切りたおされて 当然だな。」
さて、数年後の ある春の こと、びっくりするような、すてきな ことが 起こりました。つつましい 一つの 小さな 花が、独特な 形の 木の 枝の 先に、姿を 表したのです。それから 花は 二つ、三つと 増えていって、ついに 木全体が、この上もなく 見事な 白い 花の 衣に 身を 包まれるまでに なりました。それは それは 美しく、木は 幸せで いっぱいに なりました!
まもなく すると、一つ一つの 花が、最高に すばらしい ものに 取って代わり始めました。実を つけ始めたのです。始めは 小さな ボールのようでしたが、日に日に 大きく なっています。この 独特な 形をした 木は、すべての 実に 栄養を 送るのに 大いそがしでした。
ひとたび 実が じゅくすと、子供達が 来て、実を つむために 木に 登り始めました! お父さん達や お母さん達や 子供達が やって来ては、枝々から 取った 実で かごを いっぱいに していきました。木は、自分が 独特な 形を していて 枝も 低く なっているので、みんなが 実を 取るのに 登りやすい ことを うれしく 思いました。王子のように 見かけは 美しく ありませんが、この方が、はるかに 役に 立ちました。
ある 秋の こと、人々は この木を 記念し、音楽と ダンスで お祭りを することに しました! 独特な 形を した 木には、ピカピカする ライトまで かざり付けられました。周りには テーブルが 置かれ、子供達は 木登りをして 遊びました。実に 盛大な お祝いでした。人々は その木を、「りんごの 木の 王様」に 決定しました!
木は 思いました。(みんなから 忘れられ、貧弱で 小さかった 私が、今では 実を つけ、パーティーの 主人公に なれたなんて。)
りんごの 木は、この 喜びを だれかと 分かち合いたいと 思いました。壁の 向こう側の 木にも、周りに 集まってきた 家族や 楽しそうな 子供達を 見て 楽しんで もらえたらなぁと 思いましたが、庭師以外は、王子の 完璧な 庭園に 入ることは 許されて いないのです。
そして ある日、その 土地に 新しい 家々を 建てるために、大きな 機材が 庭園に 運び込まれ、地面が 掘り起こされました。完璧だった その 庭園は つぶされたのです。かつては 王子の ようだった 木も 切りたおされ、運び去られて しまいました。
このころまでには、独特な 形を した りんごの 木も 年を 取り、切りたおされるかのように 思われましたが、実際は、みんなに 愛された この 木は、周りに ベンチが 置かれ、新しい 広場の 中心と なりました。おまけに、「みんなの おじいちゃんツリー」と 名付けられて、立て札まで 立てられたのでした。
(こんな こと、一体 だれが 予想しただろう? 枝が そこら中に 伸び放題の 貧弱で 小さな 木だった 私が、今では この 新しい 村の 広場の 中心に なるという 栄誉を 与えられて いるなんて!)と、りんごの 木は 物思いに ふけるのでした。
教訓:自分には 才能や 生きている 目的が あるんだろうかと 思ったら、あせらず 忍耐を 持ちましょう。この りんごの 木の 枝のように、いつか あなたの 人生は 花開き、結果が 現れてくるでしょう。そして、自分だけの 有用性や 才能を 発見できるでしょう。外見だけで だれかの 有用性や 美しさは 分かりません。ですから、内なる 美を 見い出すように しましょう。その 結果として 芽生える 友情や 喜びに、おどろかされるでしょう。