喜びの 賜物
ステラは 腹を 立てていました。もう 何週間もの間、家族や 友達と、海へ 来るのを 楽しみに していたのに、こんなことって・・・! いそいそと バンの 後ろから 荷物を 降ろすのを 手伝う 妹の プリシラを 見ていると、ますます 腹が 立ってきました。(プリシラったら、何を するにも、陽気に ふるまうんだから!)
ステラは セーターを つかみ、ビーチで 遊ぶ おもちゃを バッグに つっこんで、砂浜に 向かいました。
冷たい 風が 波を あわ立てています。ステラは 熱い ココアの 上に ミルクが あわ立っている 様子を 思い浮かべました。(ココアの 海で 泳ぐのって、楽しいだろうな。) そこで、はっと、自分が 腹を 立てて いたことを 思い出しました。(何て いやな 風と 波なのかしら。おかげで、寒いし 波も 荒くて 泳げないじゃないの!)
ステラは 砂の 上に ドサッと 座りこみました。ほかの みんなは、もう 遊びに 夢中に なっていました。ジョエル、プリシラ、それに ディナは、追いかけっこを しています。デービッドは、雨風に さらされた 丸太の 割れ目の おくに、何か 生き物が いないか 調べています。
まもなく、ステラの 両親は、これから どうするかを 話し合うために 子供達を 集めました。泳ぐには 寒すぎたからです。ジョエルは、祈って 主に 天気を 良くしてもらおうと 言いました。みんな、それは 良い 考えだと 思いました。お母さんは、たとえ 天気が よく ならなくても、イエス様は、みんなが 楽しめるように してくださるわと 言いました。
みんなは 祈り始めましたが、ステラは なかなか 祈りに 集中できません。(全くもう。) ステラは すねて、砂をけっていました。
まもなく 子供達は、とりでを 作るための タオルと 竹ざおを、楽しそうに さがしに 行きました。とりでの 中では、食べたり 遊んだり できるし、悪天候からも 身を 守れます。ステラは すわったまま、つま先で 砂を いじくりまわして いましたが、ますます ふきげんに なるばかりでした。つま先を じっと 見つめて いましたが、やがて ひざを かかえるようにして その上に あごを のせ、うとうとと まどろみ始めました。
ステラは、暗い ほら穴の 中を 歩いています。明かりは、ほら穴の 入り口から 差しこんでくる 光だけです。さらに ほら穴の おくに 入っていくと、周りが ますます 見えなくなって きました。そんな時、遠くの方で 小さな 明かりが ゆらめいて いるのが 見えました。
明かりの方に 近づいていくと、ちっちゃな ホタルが 岩の 上に とまって 光っていたんだと わかりました。岩の そばには、小さな ガラス張りの ランタンが 付いた 棒が 立っています。
ステラは ランタンの 横に 付いた 小さな ふたを 開けて、中に ホタルを 入れました。すると、ほら穴中が 美しい 明るい 光で 照らし出されました。ほら穴の 中は、岩の 上も 地面も 一面、美しい 宝石で おおわれているでは ありませんか。壁には、美しい 絵や タペストリーが かかっていました。宝石の 一つを 拾い上げると、とても うれしくて わくわくした 気分に なりました・・・
サッカーの ボールが 背中に 当たって、ステラは 目を さましました。「ジョエル!」 彼女は 笑いながら さけぶと、ボールを 拾って、彼を 追いかけました。子供達は 砂浜で 1時間ほど ボールを けって いたでしょうか。くたくたに なると、みんな、とりでの そばの 砂の 上に ドサッと たおれこみました。そして 今度は、何かの 形をした 雲を さがし始めました。
「あっ、ウサギが いる。」
「リムジンも あるよ。」
「あれは、ゾウが 鼻を ふり上げてるみたいだ。」
「あっちの方に あるのは、ろうそくの ついた たん生ケーキみたいだよ。」 みんなは 口々に、雲の 中に 自分が 見つけた 形を 言い表したりして、笑いながら 楽しく 時間を 過ごしました。とても 楽しかったので、ステラは、せっかくの 海辺での 1日を だいなしに してしまったと 思っていた、冷たい 風や くもり空の ことなどは、すっかり 忘れてしまいました。
ステラは 砂浜から 飛び起き、水辺を スキップしながら、こんなに 楽しい 日を 与えて下さったことを イエス様に 感謝し、また、さっきまで ひどく ふきげんだったことを イエス様に あやまりました。主が 愛して下さっている ことについて 考えていると、心に 語りかける 主の 声が 聞こえました。
「暗い ほら穴は、君が とても ふきげんだった時の 心の 中みたいだ。」と イエス様が 言いました。「ほら穴の 中で 見つけた ホタルは、わたしが 君のために 用意している 喜びの 賜物みたいな ものだよ。君は 時々、わたしのことや、わたしが 与えたいと 願っている 喜びを 忘れてしまうようだね。それは、ネガティブな ことや 悲しいことばかり 考えてしまうからだよ。
だけど、わたしを 賛美すると、わたしの 愛が もたらす喜びが 君の 人生を 照らし、わたしが 君のために 用意している 宝が 見えてくるんだ。たとえ 腹が 立つような、あるいは むずかしい 状況でも、わたしは いつも、君のための 愛と 幸せの 宝を 用意しているからね。」
ステラは うれしく なりました。そして、大切な 教訓を 思い出させて 下さったことで、イエス様に 感謝を 表したいと 思いました。
「イエス様、つま先の 10本の 指で 砂を 感じることが できることを 感謝します。走ったり 飛びはねまわったり、寒くなければ 泳ぐことさえ できることも、感謝します! それから イエス様、たとえ 泳げなくても、今日は いつもと ちがったことを して 楽しく 過ごせたことも、感謝します。友達と いっしょに 遊べて、とても 楽しかったです。それから、持って来た おいしい おやつも 感謝します。・・・」
最初 ステラは、イエス様に 感謝できることを たくさんは 思いつけないだろうと 思っていましたが、いったん 始めてみると、止まらなくなってしまいました!
ふと、ステラは 特別な ことが 起きたことに 気付きました。風が やんだのです。海も おだやかに なっていました。見上げると、雲の 間から 青空が 広がりつつ あります。「やったー! 結局は 泳げるのね!」 ステラは とんぼ返りを して、しりもちを つきました。笑いながら 砂を はらうと、みんなの ところへ 走って行きました。みんなも 天気が 良くなっている ことに 気付いたか どうか、確かめなくては。
(何と 言っても、最高なのは・・・)と 彼女は 思いました。(海辺での 最高の 1日に なるだろうって わかる 前に、ハッピーに なれたこと。周りで 何が 起きていようと、イエス様が 下さった 喜びと 光に 気持ちを 集中させることが できるんだものね。)