飛びはねる カエルと、おかしな こと
トムは、新しい 国語の 教科書を パラパラと めくってみた。文法についての 規則や 練習問題で いっぱいだ。トムは、心配に なってきた。
トムは、何か もっと 面白い ものは ないかと、窓の 外に 目を やった。昨日の ことが 思い出される。カエルを つかまえて 遊んだっけ・・・。
トムは、物思いに ふけった。(それに してもな~。こんな 教科書よりも、カエルの ほうが ずっと 上手に 文法を 教えられるんじゃ ないかな。カエルが 動詞について 教えてくれたら、どんなに 楽しいだろう。だって、カエルは まるで、生きた 動詞みたいだもの!)
「さ~て、みなさん。」 たった今、開いた 窓から 教室の 中に 飛びこんできた 新しい カエルの 先生、ミセス・フロッグだ。「文法の 教科書は 閉じて。今から 私の 大好きな 科目を 勉強するわよ。そう、動詞! みんな、床に 手を ついて。最初の レッスンは、『はねる』よ。そう、はねるの。はねて、はねて! じゃあ、あなたたちが 腕とか 足とか 呼んでいる ものを 全部 地に つけ、四つんばいのまま 外に 出ましょう。力を 入れて、もっと 高く はねるのよ! 地面から どのくらい 高く はねられるか、見てみましょうか。おしりを 上げて、高く はね上がれるように 練習するのよ!
みんな、動いて! 動詞は 動きを 表す 言葉よ! みんな、動詞に なってね。ビリー、一体全体、なぜ そんな すみの 方で すわりこんでいるの? まるで、石や ブロックや こぶや 固まりなんかの 名詞みたいじゃ ないの! 人や 場所や ものや アイデアには なっちゃ だめよ! 飛びはねるの。動き回って。名詞君とは バイバイよ。走り回って 遊ぶの。今日は、楽しみましょう。
フレッド。あなたは まるで、何かが 過去形か 現在形か 未来形かについて 話す be動詞みたいだわ。
動いて、動いて、動きましょう! 筋肉を 使って、使って、使いましょう! 動きを 表す この すばらしい 動詞たちを、体で 感じるのよ! はしゃいで、転がって、急いで、走り回って、はね回りましょう! 動詞には パワーが あるわ! 動きを 表す 時も、何かの 存在を 表す 時もね!」
「みんなは、今も 昔も 将来も、動詞の すばらしさを 学べば 幸せよ。はねて、スキップして、外に 飛び出しましょう。そしたら 水泳プールまで 競走よ。着いたら、水の 中も また、新しい 学びの 場。みんなで 泳いで、バシャバシャして、飛びこんで、水を かき分け進むことを 学びましょう。改行なしずっと 水の 外に いるなんて、考えるだけでも、私の 頭は ひからびてしまうわ。だって、私は カエルなんですもの。」
「ちょっと 待った! この 飛びはねたり 走ったりの 大さわぎは、もう おしまいだ!」 教室の すぐ 外に 立っている、大きな 古い 木が 言った。「今度は、みんな 地面に すわって、名詞に なって 遊んでは どうかね?」
言うまでも なく、ミセス・フロッグは 少し むっとして、とにかく ピョンピョン はね続けた。「名詞なんて、たいくつだわ。ただただ 眠くなって、いびきを かくだけよ!」 ミセス・フロッグは 大きく まばたきすると、バシャン! 池の 底に もぐっていってしまった。
ミスター・ツリーは 笑いを こらえながら、せきばらいを した。「さあ、私の 後に ついて、『連想ゲーム』を してみよう。今から、自分の 見える ものに なるんだぞ。見える ものや 数えられる ものは、たくさん ある。思いつく アイデアだって、大きくても 小さくても、すばらしい 名詞の 世界の 一部だ。石に 水、日光に 砂。事実、地上や 地下に あるもの すべてだ。ダイヤの 指輪も、キャンディーや ガムも、紙も 車も 家も 道路も 通りも、思いつきや 考えることも、全部だよ。用務員さんも ミセス・フロッグも、ネコも 犬も、ピエロだって、すばらしい 名詞の 世界の 一部なのだ。男の子達も、女の子達も、お母さん達も、お父さん達も、料理の レシピも、物語も、鳥も 雲も 花も・・・。」
ミスター・ツリーの 名詞についての 話にも いよいよ 熱が 入ってきたころ、とげとげだらけの 茶色い ハリネズミが よたよたと やって来た。
「おやまあ。ミスター・ツリーは、一つ一つの 名詞が 持っている 特色については 話してくれて いないのかい。形容詞という 様子言葉が なければ、無理だろうね。ミセス・フロッグは、動詞、動詞って 飛びはねるだけだし。だけど、名詞と 動詞だけで、色や 特徴なんかが なかったら、人生は すごく たいくつで つまらない ものに なってしまうよ。ぼくは、そんな 名詞や 動詞は ごめんだな。
ぼくは、見て、聞いて、感じる ことの できる、様子や くわしい ことを 表す 言葉が ほしいんだ。
それは、大きい? 背が 高い? 速く 走れる? それとも ゆっくり? 紫色を している? 赤い? 頭には、どんな 角が ある? 重い? 細いかな? 毛羽立ってる? それとも、つるつるしている? さえずり声は 大きい? それとも、静か? 考えつく限りの 形容詞や 副詞を 使って 物事を 描写し、ぼくが 頭の 中で 思い描けるように 話してほしいんだ。」
「トム、今の 質問に 答えられる? トム?」 スプリント先生が 言った。
トムは はっとして、先生の 方を 見た。
「どう、トム? 文章の 中で、動きや、過去形か 現在形か 未来形かを 表す 品詞の 名前が 分かる?」
トムは 答えた。「はい。カエルです。丸太の 上を 飛びこえる カエル・・・つまり、動詞です! 動詞は、動きを 表す 言葉ですから!」
「はい、そうですね。」と、スプリント先生が 言った。
「でも、どうして 『カエル』って 答えたのかしら。確かに、「飛びはねる」は 動詞だけれど。とにかく、今日の 授業は ここまでで おしまいです。では みなさん、また 明日 会いましょう。」
トムは、すぐさま 立ちあがった。「やったー! 動詞の おかげで、助かったぞー!」 トムは 飛びはね、飛び上がって、スキップしながら 教室の ドアから 出て行った。
文:ポール・ウイリアムス 絵:レイラ・シェイ デザイン:ロイ・エバンス出版:マイ・ワンダー・スタジオ Copyright © 2021年、ファミリーインターナショナル