ミアの ティーパーティー
明日は、ミアの たん生日です。ティーパーティーの 招待状は、もう みんなに 送ってあります。家中が、パーティーの 準備で 大いそがしでした。お母さんは、アップルダンプリングを 作るため、りんごを スライスし始めました。お父さんは、お母さんが 焼いている 数々の おいしそうな お菓子や デザートを 全部 並べられるように、ダイニングルームを 準備しています。お兄ちゃんの ルーカスは、馬の ペガサスの 体を 洗って ブラッシングするため、外に 出て行きました。
ミアは、とても わくわくしています! 家の 前に ある いちご畑の いちごを つむために、かごを 2つ 持って、外に かけ出して 行きました。
そこへ 冷たい 風が ふいてきましたが、ミアは いちごを つむのに 夢中で、気にも 留めませんでした。いちごを つみながら、ミアは 明日の パーティーの ことを 想像して、ニコッと しました。「明日は、そでに リボンが 付いた かわいい ドレスを 着るのよ。くるくる 回ると すそが 広がる やつ。お母さんは、アップルダンプリングと いちごタルトと ペカンパイを 作ってくれるし。飲み物は アップルサイダーね。とっても すてきな パーティーに なるわ!」
すべてが 順調に 進んでいるようでした。かごが いっぱいに なると、ミアは 家の 中に かけこみました。
「まぁまぁ。ゴールデン・サン・バレーの みんなに あげられるくらい、たくさん つんだのね。」 そう 言って、お母さんは 赤く そまった ミアの ほおに ふれました。「外は 寒いわ。どうして コートを 着なかったの?」
「そんなに 長い間 外に 出てなかったもの。」 そう 言って、ミアは 冷えた うでを さすって 温めました。
その夜、夕食の 席で・・・
「ハクション!」 ミアの 目は うるんで、鼻も 真っ赤です。「ハクション!」
「まあ、ミアったら、かぜを ひいたのね。」と、お母さん。
「かぜなんか ひいてる 場合じゃ ないわ! 明日は 元気で いなくちゃ いけないんだもの!」 そう 言うと、ミアは また くしゃみを しました。「だいじょうぶよ、本当に。」 けれども ミアの 目は しょぼしょぼし、ほおも 赤く なっています。
「おまえに 今 必要なのは、ベッドの ようだね。明日の 朝、どんな 具合か 見てみると しよう。」と、お父さんが 言いました。
ミアは くたくたに つかれ切って、言葉も 返せません。お父さんは ミアを だき上げて、部屋に 連れて行きました。ベッドに ねかせると、いっしょに 祈ってくれました。ミアは、ティーパーティーの ことを 考え、明日の 朝までには 元気に ならないと、と 思いながら 眠りに つきました。
翌朝は 昨日よりは マシでしたが、すっかり 良くなった わけでは ありませんでした。それで、ミアが 元気に なるまで、ティーパーティーは 延期に なりました。
お兄ちゃんの ルーカスが、ミアを なぐさめようと して、部屋に 入って来ました。
ミアは ふとんの 中に 深く もぐりこんで 言いました。「お母さんが、わたしは かぜを ひいたから、治るまで 休んでなくちゃって。友達を ティーパーティーに 呼べなく なっちゃったわ!」
「残念だったね。ティーパーティーは お預けに なっちゃったけど、今日 できる ことも あると 思うよ。お話を してあげようか? ミアは、お話が 大好きだろ?」と、ルーカスが 言いました。
「何の お話?」 思わず、ミアは 悲しかった ことを 忘れて 聞き返しました。
「1階の 本だなの 上に ある ピカピカの トロフィーの こと、知ってるだろ?」
「お祭りの 時に ペガサスと 競馬に 出て 優勝した 時のでしょう?」 ルーカスが うなずきました。「お父さんが、あの 競馬では 本当に 見事な 走りっぷりだったって 言ってたわ。」 ミアは いつも、お兄ちゃんの 活やくを 聞くのが 大好きです。
ルーカスが ほほえんで 言いました。「最初は、ペガサスを 競馬に 出すなんて、全然 考えて なかったって、知ってたかい?」
「知らなかったわ!」 ミアは 声を 上げました。
「実を 言うと、ぼくは、育てていた かぼちゃが 今までで 一番 大きく おいしそうに できたんで、それを かぼちゃコンテストに 出す つもりだったんだ。だけど、お祭りの 1週間前に、ヤギの アルテミスが 囲いから 逃げ出してね。それが、ぼくの かぼちゃの 最後さ。」
「きっと 悲しかったでしょうね!」 ミアは、ルーカスの やるせない 気持ちが よく 分かりました。
ルーカスの 話は 続きます。「ああ、本当に 悲しくて、がっかりしたよ。ぼくの カンペキな かぼちゃが アルテミスの お腹の 中に 入っちゃった せいで、お祭りに 出すものが 何も なかったからね。」
「それで、どうしたの?」と、ミア。
「ぼくは カンカンだった。家にも 入らず、1日中 いじけてたんだ。結局 夕食の 時間に なって 家に 入ると、お父さんが 来て となりに 座った。かぼちゃが 食べられて しまったのは 気の毒だけど、いつまで そんなに いじけている つもりなんだい、って 聞かれたよ。お父さんは ぼくと いっしょに 祈ってくれて、お祭りで 楽しみに している 数々の ことを 考えてごらんよって 言ってくれた。
そうしたら、気分が 晴れてきてね。かぼちゃが なくなった ことは、まだ 少し 腹立たしかったけど、他の ことを 考えるのは、悲しい 気持ちを 忘れる 助けに なった。その後、ぼくが お祭りで 競える ことが 他に ないかなって、いっしょに 考えたんだ。それで、ペガサスと 競馬に 出ることに なったという わけさ。」
「それで、優勝したのね!」
「そういう ことなんだ。だから 今は、アルテミスが かぼちゃを 食べてしまった ことは 良かったと 思ってる。そうで なければ、ペガサスと 草競馬に 出るなんて こと、絶対に なかっただろうからね。」 それ以来、ルーカスと ペガサスは 数々の 小さな イベントに 出て、その 全てで 好成績を 出して いるのです。
「私も、ティーパーティーの ことが そんなに 気に ならなければ 良かったのに。病気で いるのは いい 気分じゃ ないし、ベッドに いなくちゃ いけないのも いやだもの。」 ルーカスの 話が、ミアの ティーパーティーに 起こった ことと 深い 関係が ある ことに 気付いて、ミアが 言いました。「私、どうしたら いいのかしら?」
「祈ったら いいね。あの日 ぼくが 落ち込んでた 時も、お父さんが そうして くれた おかげで、気分が すごく 晴れたよ。」
二人は 頭をたれ、ルーカスが 祈りの 言葉を 言いました。「イエス様、いつも 物事が うまく 行くように して下さる ことを 感謝します。最初は 良くない ことが 起こっても、あなたは 結局は 全てが 良くなるように して下さいます。どうか、たとえ 具合が 悪くても、ミアが がっかり しませんように。今日は ミアの たん生日なので、ミアにとって 楽しい ことが できますますように。」
「それから、今日じゃ なくても、他の 日に パーティーが できること、その時に すてきな ドレスが 着れることを 感謝します。アーメン。」 ミアも、祈りの しめくくりを 祈りました。
ミアは もう とっくに、ずいぶんと 気分が 良くなって いました。ルーカスが 話し相手に なって くれたのですから、ねて いなければ ならない ことさえ、良い ことのように 思えました。
そこへ、お父さんが チェッカーの 箱を わきに かかえて 入って来ました。ミアの ほほえみと、ベッドわきの いすに 座っている ルーカスを 見ると、お父さんは、何か いいことが あったんだなと すぐに 気付いて、子供達を 誇りに 思いました。「さてと。ミアは ベッドに いなくちゃ いけないが、だからと 言って、たん生祝いを やめるべきじゃ ないしな!」と、お父さんが 言いました。
結局 その日は、楽しく 笑いに 満ちた 日に なりました。お父さんと チェッカーを した 後、ミアは ルーカスとも チェッカーを しました。お母さんは みんなの ために、温かい ハーブティーと、切り分けた 果物を 持ってきて くれました。その後、お父さんが 自分の 少年時代の 話を してくれました。お母さんは ベッドに 座って、ミアと いっしょに 歌を 歌ってくれました。
1週間後の 晴れた 日の 昼下がり、待ちに 待った ティーパーティーが 始まりました。ミアは、リボンの 付いた かわいい ドレスを 着ています。お母さんは お客さん達に アップルサイダーを 出し、ルーカスは、ミアと ミアの 友達を 馬の ペガサスに 乗せて あげています。
「自分の たん生日に 具合が 悪く なったなんて、がっかりだったでしょうね?」 ペカンパイを よそって もらうのを いっしょに 並んで 待っていた サラが、ミアに たずねました。
「ええ、最初は がっかりだったわ。だけど、その後、がっかりする 理由は ないって 分かったの。」 ミアは 少し 大人に なったような 気分でした。「ティーパーティーは できなかったけど、特別な 1日だったのよ。それに、今日も また、今度は みんなに、たん生日を 祝って もらえてるんですもの!」
終わり