なくなった 物が 見つかる!
10才の ナナは 今朝、むしゃくしゃした 気分でした。ナナは マリッサ先生のために、特別な プレゼントを 作って 用意していました。ビーズの ブレスレットです。図書館から 借りてきた 手芸の 本から、金色と 青色の 花の 図案を 選び、夜や 週末の 時間を 使って やっと 完成させたのに、それが どこかへ 行ってしまったのです。午後は マリッサ先生の 誕生パーティーだと いうのに!
「チャーリー、私が マリッサ先生のために 作った ブレスレット、見なかった? ついさっきまで、ここに あったのよ。」 床にでも 落ちたのかなと、ダイニングルーム中を 探しながら、ナナが お兄ちゃんに たずねました。
「ううん、見てないよ。」 チャーリーが すまなさそうに 答えました。
「一体、どうしたら いいのかしら? このままじゃ、マリッサ先生に あげる 物が 何も ないわ。先生の 誕生日には 特別な プレゼントを あげたかったのに。」 ナナは だんだんと、自分が あわれに 思えてきました。「みんな プレゼントを あげるのに、私だけ 何も あげる 物が ないなんて。」
「ナナ。」 だれかが ナナを 呼びました。
けれども、ナナは テーブルの 周りを 探すのに 夢中で、静かに 呼ぶ 声に 気づきません。
「ナナ。」 また 呼ぶ 声が しました。
「さっきまでは、ここに あったのに。・・・もしかしたら、妹が 取ったのかも!」 そう 思うと、ナナは ぎょっと しました。自分が あんなに 一生けん命 作ったものを 取るなんて、意地悪ね・・・。
「ナナ。」
ささやき声を 聞いて、ナナは 手を 止めました。今度は 自分の 部屋へ 行き、何か 示したいことが あれば 教えてくださいと、イエス様に 祈りました。
すると、イエス様が 言われました。「わたしの 愛しい 子、ナナよ。もちろん、わたしは その ブレスレットが どこに あるか、知っているよ。わたしにとっては、何も なくなることは ないからね。だけど、君は もっと 落ち着いて、わたしに 耳を かたむける 必要が ある。わたしは 君の 関心を ひこうとして いたんだ。」
(まあ。私、プレゼントを 用意する ことや、午後の パーティーに 持って行く カップケーキの デコレーションの ことなんかで、頭が いっぱいだったわ。)
「そうだね。だから、このことが 起こるのを ゆるしたんだよ。わたしは 君と いっしょに 時間を 過ごしたかったけれど、今日は することが とても たくさん あって、君の ほうから わたしの 元へ 来るのは むずかしいだろうと 分かっていたからね。だから、君を わたしの 元へ 追いやってくれるような ことが 起こるのを ゆるしたんだ。」
ナナは、大きな ほほえみを 浮かべました。その ほほえみは、心の 底から わき出て、指先から つま先まで、体中を 満たしました。「何かが 起こるのを ゆるすほど、私と いっしょに 時間を 過ごしたいと 言われるのですね?」
「そうだよ。わたしは、君と いるのが 大好きなんだ。だけど、何か むずかしい ことでも 起こらない限り、静まって わたしに 耳を かたむけないことも あるだろう? だから、君が 立ち止まって わたしの 元へ 来るように、そういった 問題が 起こるのを ゆるす ことが あるんだ。」
ナナは もう、なくなった プレゼントの ことや、その日の いそがしさが 気に ならなく なりました。ブレスレットが どこに あるかは イエス様が ご存じだと 分かり、それを 使って 彼女が イエス様と 時間を 過ごせるように してくださったことを 感謝しました。「私も、イエス様と 時間を 過ごすのが 大好きです。ただ、とても いそがしいと、わすれてしまうことが あるのです。」と ナナが 言いました。
「分かっているよ。さあ、わたしは 君の 愛の カップを いっぱいに したし、君も わたしのを いっぱいに してくれたから、ブレスレットの ある 場所を 教えてあげよう。」
イエス様に 思いを 導かれて ダイニングルームに もどり、だれかが 置いていった カードの たばを 拾い上げると、その 下に ブレスレットが ありました。マリッサ先生のための プレゼントが 見つかったのです!
その 日の 午後、ナナは、弟や 妹達に、なくなった ブレスレットの お話を しました。「ね、もし 自分一人で 探し続けていたら、いつかは 見つかったかもしれないけど、きっと すごく 時間が かかってたと 思うわ。それに、もし 私が 立ち止まって、呼ぶ 声に 耳を かたむけなかったら、イエス様との 特別な 時間も 過ごせなかったのよ。」
文:R.A.ワターソン 絵:レイラ・シェイ デザイン:ロイ・エバンス出版:マイ・ワンダー・スタジオ Copyright © 2021年、ファミリーインターナショナル