ジミーの 特別な クリスマス
これは、1953年の 寒い クリスマスイブの 夜の お話です。人々は 最後の 買い物を 終えようと、急いでいました。町の 裕福な 地域では、家々が きれいな イルミネーションで かざられています。
けれども、一軒の 家だけには、なぜか ライトも かざりつけも ありませんでした。まるで、家の 住人が クリスマスの ことを 完全に わすれてしまったかのようです。
グレッグ:キャシー、元気を 出しておくれ。どんなに たくさんの なみだを 流しても、ジミーが もどってくるわけじゃ ないんだ。クリスマスは、感謝し 幸せな 気持ちに なる 時だよ。
キャシー:わかってるわ、グレッグ。だけど、去年の クリスマスイブの ことを 思うと、幸せな 気分になんて なれないのよ。最後に ジミーを 見た 時の ことは、絶対に 忘れないわ。窓の 外を 見ると、ジミーは 家の 前の 庭で 雪だるまを 作りながら、子犬と 遊んでいたの。ああ、グレッグ。ジミーを、決して 外で 一人だけになんか するべきじゃ なかったのよ! キャシー:ジミーには、絶対に 道路に 飛び出しちゃ いけないって、口を 酸っぱくして 言っていたのよ。それなのに、あの子は 子犬を 追いかけて・・・それで あんな ことに なったのよ。道路が こおっていて、車は 止まれずに・・・それで、ジミーは いってしまったんだわ!
グレッグ:そんなふうに、自分を 責め続けては いけないよ。
キャシー:ジミーは、わたしたちと いっしょに クリスマスの 日を 楽しむことさえ できなかったのよ。
グレッグ:ジミーは、イエス様と クリスマスを 過ごしに 行ったんだ。それ以上に すばらしい クリスマスなんて、ないだろう? きっと 今年だって、すばらしい クリスマスを 過ごしているさ。ジミーを 悲しませる ことと 言ったら、ぼくたちが こんなに 悲しんでいるのを 見ることだけだよ。ねえ、キャシー。ジミーに、ぼくたちが 幸せに なろうと している ところを 見せようよ。
キャシー:でも、幸せじゃ ないのに、そんな 振り できないわ!
グレッグ:いっしょに クリスマスキャロルでも 歌わないか?
キャシー:わかったわ、グレッグ。何とか がんばるわね。どの 曲を ひきましょうか?
グレッグ:そうだな、「ああ、ベツレヘムよ」は どうだい?
キャシー:やっぱり、今夜は ひけないわ・・・シクシク!
グレッグ:じゃあ、今夜は 外に 出かけようか。しばらく 家から はなれるのが いいかも。
キャシー:角の 教会では 今夜、合唱隊が クリスマスキャロルを 歌っているそうよ。招かれてるんだけど・・・
グレッグ:それは いいね。じゃあ、行こうよ。
キャシー:あなたの 言った 通りね。外の 新鮮な 空気を すうと、気分が いいわ。
その一方、町の 反対側には、質素で 明かりも 薄暗い 家が 立ち並んでいました。そこに、1軒の あばら家が ありました。ほんの 2週間前まで、そこには 少年が 母親と いっしょに 住んでいました。その 少年が 今、重い 足取りで、だれも いない 家へ 向かっています。きたなくて みすぼらしい 姿の 少年は、着古した コートの 中で 寒さに ふるえていました。小さな 茶色い 犬の サンディが、とことこと 少年に 付いて 歩いていました。少年は、2週間前に 病院で 母親と した 最後の 会話を 思い出しながら、悲しい クリスマスを 過ごしていました。
お母さん:ジミー、おまえは ずいぶんと 大きくなったね。
ジミー:うん、もうすぐ 8才だものね!
お母さん:お医者様がね、わたしは もう 長くないんだって。イエス様が、天国の すばらしい おうちへ 連れて行ってくださるんだ。イエス様は、おまえの めんどうも、ちゃんと みてくださるからね。
ジミー:お母さん、行かないで! サンディも ぼくも、さびしく なっちゃうよ!
お母さん:別に、そんなに 遠くへ 行く わけじゃ ないんだ。お祈りすれば、母さんと 話せるよ。きっと、イエス様が 助けてくださるから。おまえのために 良い 両親を 見つけてくださるように、イエス様に お願いしておいたからね。
ジミー:だけど ぼく、お母さん以外の お母さんは いらないよ!
お母さん:これは、母さんが ためておいた お金だ。イエス様が おまえのために だれかを 送ってくださるまでは もつだろう。いつも、お祈りするのを 忘れちゃ いけないよ。
ジミー:うん 分かった、お母さん。
ジミー:ずいぶん たくさん 歩いたなあ、サンディ。ここの 角に すわって、一休みしよう。つかれただろ? ぼくは、へとへとだよ。ブルブル! 寒いなあ! ごめんね、サンディ。ぼくたちが 行けるような あったかい 場所、知らないんだ。イエス様は、ぼくたちを 望んでいる 人たちを 見つけられなかったのかもね。今夜は、マーフィーの 納屋に とまろうか。あそこなら、牛は いるけど、暖かいからね。イエス様だって、クリスマスには 納屋に とまったんだよ。
ここらの 大きい 家には みんな、きれいな イルミネーションが ついてるね。でも、なぜ あそこの 家には、ライトが 全然 ついてないんだろう。だれも 住んでいないのかな。
行って、見てみよう。
ふ~ん、だれか 住んでるみたいだけど、病気なのかなあ。それとも、クリスマスが 好きじゃ ないのかな。
すごい 大きな 部屋だ! 暖炉にだって、火が ついてるぞ。それにしても、寒いなあ!
ヒュ~~~
ジミー:あれ! 風で ドアが 開いちゃったぞ。ちゃんと 閉まってなかったんだね。ああ、ダメだよ、サンディ! 中に 入っちゃ ダメだって! サンディ!
ごめんください! どなたか、いらっしゃいますか?
おかしいなあ。だれも いないみたいじゃ ないか。サンディ、どこへ 行ったんだい?
ああ、そこに いたのか! 確かに、火の そばは 暖かいね。じゅうたんも すごく ぶ厚くて 気持ち いいし。暖まるまでなら、いても いいかな。それにしても、こんな 所に 住めたらなあ。ステキだよねえ、サンディ?
キャシー:合唱団の 歌、すばらしかったわね、グレッグ。外に 連れ出してくれて、ありがとう。イエス様についての すばらしい 曲を 聞いたら、イエス様が わたしたちを 愛してくださっていることを 思い出す 助けに なったわ。だけど、ジミーが いないのは、やっぱり さびしいわ。今夜 いっしょに いられたら よかったのに。
グレッグ:時間は、すばらしい いやし手だ。主が ご自身の 子どもたちのために 「万事を 益と なるように してくださる」 ことを、信じよう。*1*
キャシー:クリスマスの イルミネーションも、つけたほうが いいかしらね。イルミネーションが ないと、確かに 陰気だわ。
グレッグ:あれ、変だぞ。玄関が 少し 開いてる。出かけた 時、確かに ちゃんと 閉めて、ロックしたはずだけどなあ。
キャシー:気を 付けて、グレッグ。もしかしたら、どろぼうが いるかも!
グレッグ:確かに、だれか ここに いたみたいだ。見てごらん。暖炉の 前の じゅうたんが ぬれてるよ。
キャシー:まるで、ジミーが 雪遊びから 帰ってきて 暖炉の 前で 暖まった 後みたいだわ。くつに 付いた 雪が 解けて、こんなふうに じゅうたんが ぬれていたもの。
グレッグ:変だなあ! 家中を 見回ってみよう。
キャシー:見て、グレッグ! ジミーの 部屋の 電気が ついてるわ!
グレッグ:君は 今日、この 部屋に いただろ。電気を 消し忘れたんじゃ ないかな。あれ、ジミーの おもちゃが 床に 出てるぞ。ジミーの ベッドに だれか いる!
グレッグ:男の子じゃ ないか。ぐっすり 眠ってるぞ。おかしな 小犬も いっしょだ。
キャシー:ねえ、見て、グレッグ。かわいらしいじゃ ない?
グレッグ:かわいそうに。服が ぼろぼろだ。一体、だれなんだろう。それに、どうやって 家に 入ったんだろう?
キャシー:ねえ、グレッグ。もしかしたら、神様が この子を ここに 送ってくださったんじゃ ないかしら。わたしたちが この子を 愛するようにって、神様が 送ってくれたのかもしれないわ!
グレッグ:でも キャシー、この子は 絶対に どこかの 子だよ。この子の 家族を 見つけないと。
ジミー:この子を 見ると、本当に わたしたちの ジミーを 思い出すわ! ジミー・・・ジミー、ねえ、ジミー、目を 覚まして。
ジミー:はい、お母さん。なに? うわっ、ごめんなさい! 本当に すみません! どうか、おこらないでください。サンディ、ベッドから 下りて! 足が きたないんだから!
キャシー:気に しなくて いいのよ。あなたの 名前、本当に ジミーなの?
ジミー:はい。サンディと ぼくは すごく 寒くて、暖まりたかっただけなんです。玄関の ドアが 風で 開いて、サンディが 中に 入っちゃったので、その 後を 追いかけて 入ってきたんです。
キャシー:そうだったの、ジミー。心配しなくて いいわよ。
ジミー:それで、家に だれも いなくて、この 部屋に おもちゃが たくさん あるのを 見たら、つい 遊びたくなっちゃって。そしたら、この ベッドが あって・・・。ぼく、こんな ベッドで ねた ことなんて、ないんです! いつも 床の 上で ねてるんです。でも、ベッドに ぼくの 名前が 書いてあるのを 見たら、もしかしたら、イエス様が ぼくと サンディのために 見つけてくれたのは、この 家なのかなと 思ったんです。勝手に 入ってしまって、すみませんでした。もう 行きますから。
キャシー:サンディと、どこへ 行くの、ジミー?
ジミー:今夜は、マーフィーの 納屋で ねようかと 思っています。
グレッグ:だけど、ご両親は どこなんだい、ジミー?
ジミー:お父さんは、ずっと 前に 亡くなりました。そして お母さんも、最近 イエス様の 元へ 行ったんです。お母さんは、イエス様が サンディと ぼくのために 家族を 見つけてくださるからって 言ってたんですけど、まだ 見つからないんだと 思います。本当に おじゃましました。もう 行かないと。
グレッグ:ちょっと 待って、ジミー。あのね、ぼくたちにも、君くらいの 年の 男の子が いたんだ。その子の 名前も、ジミーだったんだよ。ちょうど 1年前、その子は イエス様の 元に 行ったんだ!
キャシー:あなたの お母さんと わたしたちの ジミーは 二人とも、天国に いるのね。だから、わたしたちには、世話して 愛してあげる 子が 必要だし、あなたには、お母さんと お父さんが 必要だわ。あなたは、わたしたちと いっしょに、ここに いたいかしら?
ジミー:サンディと ぼくが、ですか? ぼくたち 両方ともですか? ここに いて いいんですか? 本当に、ぼくの お母さんと お父さんに なってくれるんですか? いっしょに 暮らせるんですか?
キャシー:そうよ、ジミー。
ジミー:うわあ、イエス様、ありがとう! 本当に、ぼくたちのために だれか 見つけてくださったんですね!? お母さんが 言ってた 通りだ!
グレッグ:明日は イルミネーションを つけて、クリスマスツリーも 用意しよう。本当に 楽しい クリスマスに なるぞ!
キャシー:そうよ、家族として、いっしょに クリスマスの お祝いを するの! ねえ、お腹が すいてるでしょう。下に 行って、今から クリスマスの お祝いを 始めましょうよ。
天国のジミー:ぼくの 代わりに、お父さんと お母さんのために 男の子を 送ってくれて、ありがとう、イエス様!
ジミーのお母さん:イエス様、わたしの ジミーのために、こんなに すてきな 家庭を 見つけてくださって、ありがとうございます!
脚注:
*1* 口語訳聖書、ローマ人への 手紙 8:28