エマ、スージーと 出会う
エマは、魚を 飼うなんて つまらない しゅみだと 思いました。お兄さんの ジョーの 水そうに 入ってる 魚だって、同じことです。
「魚って、ぬるぬるしてて くさいし、ちっとも おもしろく ないもの。ただ 水そうの 中を 泳ぎ回ってるだけじゃ ないの。」と、エマが 言いました。
「イエス様だって、魚が 好きだったんだよ。人々が おなかを すかせていた時、イエス様は みんなに パンと 魚を あげただろ。」と、ジョー。
「魚は、食べるのは いいけど、ペットに するなら、うさぎか 何か、だっこできる ものが いいわ。」と エマは 言いました。
けれども エマは、ジョーの 魚から 大切な 教訓を 学ぶことに なります。
ジョーは、これから 3週間の サマーキャンプに 出かける ところでした。「ぼくが いない間、魚に えさを やってくれないかい?」 ジョーが エマに 頼みました。
「いやぁ~!」
「お願いだから、エマ。頼むよ。」と ジョー。
「わかったわよ。」 そうは 言ったものの、エマは 内心、ママに その 仕事を 代わって もらえるかも、と 考えていました。それか、おとなりの セドリックなら、彼自身も 自分の 魚を 飼っているので、1日に 1回くらいなら、うちの 魚にも えさを あげるのを 手伝って もらえるかも。
ジョーは 大喜びでした。お兄ちゃんが 喜んでくれたので、エマまで うれしく なりました。絶対に、ママか セドリックに この仕事を 手伝って もらわないと。エマは そう 決心しました。
2日が 過ぎ、エマは ふと、魚に えさを やっていないことを 思い出しました。あわてて ジョーの 部屋に 行って えさの 容器を つかむと、魚は えさを 期待して 水面近くに 上がってきました。そして、輪を かくように 泳いでいます。(まあ! ごめんなさいね。あなたたちのこと、すっかり わすれちゃって!)
ジョーは、えさの やり方を 見せてくれていました。少しずつ つまんで、水面に ふり入れるのです。けれども、エマは 魚くさい えさに 指を 入れたくなかったので、容器から 直接 ふり入れることに しました。
「いけない!」 容器の 半分くらいの えさが、水そうの 中に どっと 落ち、水面いっぱいに 広がってしまいました!
(どうしよう!)と エマは 思いました。(・・・でも、2日も えさを やっていなかったから、余分な えさが 必要だったのよ。)
(まぁ、食べてるところ、かわいいわね。) 魚が えさを 食べる ようすを 見ながら、エマは 思いました。
次に エマが 魚を 見に行った 時には、また 2日が たっていました。水そうからは、くさい においが ただよっています。魚は 新鮮な 水を 求めて あっぷあっぷしながら、水面近くを 泳いでいました。また、水そうの 内側には、緑色の ぬるぬるした うすい まくが 張っていました。
最初に エマが 思ったのは、ジョーの ことでした。今の 水そうの 状態を 見たら、彼は どんなにか、失望することでしょう。(大変! くさった 食べ物で いっぱいの きたない 水の 中に 住むなんて、いやに ちがいないわ。) エマは はずかしく なりました。
(ジョーの 魚を ちゃんと 世話していなくて、本当に ごめんなさいね。もし わたしが うさぎを 飼っていて、わたしが いない間に その世話を ジョーに 頼むなら、できるだけ よく 世話してほしいと 思うわよね。
イエス様、どうか、ジョーの 魚を ちゃんと 世話し、水そうを きれいに するために 何が できるか、教えてください。)
エマは セドリックのことを 思い出して、すぐに、どうしたら いいか 聞きに 行きました。
状況を 聞いて、セドリックは エマに 言いました。「食べ残しの えさを 取り出さないとね。フィルターを 掃除して、水そうの 内側を 布で ふくんだよ。それから、よごれた 水を 半分 出して、代わりに きれいな 水を 入れるんだ。」
(手を、その 水の 中に 入れなくちゃ いけないの?) 考えただけでも、エマは ぞっと しました。
が、その時、ヨセフの 物語を 思い出しました。彼は、エジプト人のために 働きたくは なかったけれど、どこに いても、神様は 彼に いっしょうけんめい 働いてほしいのだと わかっていました。ですから、自分の 置かれた 状況が どうで あれ、彼は いっしょけんめい 働きました。たとえ ろうやに 入れられた 時でさえ、熱心に 働いたのです。エマも、たとえ なんで あれ、いっしょけんめい やろうと 決心しました!
最初は、きたない 水そうから 目を そらさない ことだけでも せいいっぱいでした。けれども、がんばって やってみると、結局は それほど いやな ことでも ないと わかりました。セドリックに 教わったように、サイフォンを 使って 残った えさを 吸い出した後、石や 水草を 整えました。
作業が 終わるころには、ちゃんと できたことで、エマは うれしく なりました。水そうの 内側も 水の 中も、きれいに なりました。魚達も、水そうの 中を 再び あちこちと 元気そうに 泳ぎ回っています。遊びに 来た 友だちも 水そうを 見て、とても きれいだと 言ってくれました。セドリックが エマに、ちゃんと できたので 感心したよと 言うと、エマは 思わず ほほえみました。
それからというもの、エマは えさを あげる時、容器から 自分の 指で ひとつまみだけを あげるように、気を つけました。また 数日ごとに、自分の 手を 入れて、水そうの 内側を 布で ふくことさえ しました。そうするのは いやだったけど、それが 正しいことだと わかっていたからです。もし エマが うさぎを 飼っていたとしたら、ジョーは きっと、よく 世話してくれるでしょう。
ジョーが 帰ってくると、家に いたら 自分が するで あろうほど エマが 魚を よく 世話してくれていたと、一目で わかりました。
「エマ、プレゼントが あるんだ。夜に なってから あげようと 思ったんだけど、待てないや。」 エマは、ジョーが くれた 大きな 箱を 開けました。箱の 中には、毛が ふさふさした、灰色の 子ネコが 入っていました。
「まぁ、なんて かわいいのかしら! うさぎよりも かわいいわ!」と エマが 言いました。
「キャンプに ネコが いたんだ。その ネコに 子ネコが いてね。エマのために 1ぴき もらって 帰るのは どうかなって、ママに 電話で 聞いたんだ。
ママは、エマが ぼくの 魚の めんどうを よく みているので、感心したって 言ってたよ。魚を 好きでも ないのにね。とても いっしょけんめいだったので、子ネコを あげたら、すごく かわいがって くれるだろうって。」
それが、エマと スージーの 出会いです。(スージーは、エマが 子ネコに つけた 名前です。) 今では、エマは 前よりも ずっと 魚が 好きに なりましたが、子ネコの スージーは 当然の ことながら、大好きな 魚を 毎日 何時間も ながめていますよ。
寄稿:ジェイ・ダニエルズ 編集:松岡友子 絵:エイリーン デザイン:ロイ・エバンス出版:マイ・ワンダー・スタジオ Copyright © 2018年、ファミリーインターナショナル