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ビリーと 仲間達 : ビリーと アナグマと 虫の お話
水曜日, 2月 24, 2021

ビリーと仲間達:ビリーと アナグマと 虫の お話

 春も 終わりに 近づいた ある日の 夕食の 時間です。「虫の 日は、すごく 楽しく なりそうだよ! ただ、アナグマの スモグルが それを 台無しに しなければ いいんだけど。」 ウサギの ビリーが、お母さんウサギと お父さんウサギに 話しています。

 「虫の 日には、何を するの?」 お母さんが たずねました。

 「あのね、すごく 楽しいんだ! ぼく達、理科の 時間に 虫のことを 勉強してるんだよね。それで、明日は 森に 行って チームに 分かれ、どの チームが 一番 たくさんの 種類の 虫を ガラスびんに 集められるか、競争するんだ。ただ よくないのは、アナグマの スモグルが ぼくの チームメイトだって ことなんだよね。どうして リーマス先生が ぼくを スモグルと チームに したのか、分かんないよ。虫の 日は、絶対に アレックスと いっしょに やりたいって 思ってたのに、スモグルと いっしょだなんて。」

 「スモグルと いっしょなのが、どうして いけないんだい?」 お父さんが たずねました。

 「スモグルは、自分は 何でも 知ってるって 思ってるんだ。だから、ぼくの 言うことを 聞いてくれないんだよ。おしつけがましくて、いつも 自分の やりたいように やるんだ。」 ビリーは ふきげんそうに 言いました。

 お母さんが うなずいて 言いました。「それは 大変ね。順番に やろうって、言ってみた? それで うまく いくことも あるわよ。」

 「分かってるよ。もう 話したんだけど、聞いてくれないんだ。」

 「まあ、うまく いくだろうさ。ほかの 者達と いっしょに やっていく ことを 学ぶのは、とても 大切な ことだ。それが、自分と うまが 合わないと 思っている 相手だったと してもな。それは 別として、明日の 準備は もう できているのかい?」

 「うん、できてるよ。何を 探したら いいのかも、ちゃんと 分かってるしね。」 ビリーは 自信満々です。「昆虫には 外骨格が あって、体は 三つの 部分から できてるんだ。足は 6本、触角が 2本、そして たいていの 昆虫には、2対の 羽が あるんだ。」

 「そうだな。だが、羽が 1対しか ない 昆虫も いる・・・」

 「ハエなんかでしょ。そのくらい 知ってるよ。」 ビリーは あきれた 顔を しました。

 すると、お母さんが 言いました。「わたしが あなたの 年だった 時にはね、虫の 日が 大好きだったわ! 他の 子達が 思いつきも しなかったような 場所を 探したものよ。古い 丸太を ひっくり返してみたり・・・」

 「どこを 探したら 一番 いいのかくらい、もう 分かってるよ。」 ビリーは、お母さんが 話し終えない うちから 言いました。だれかに 教えてもらわなくても、虫の 日に ついては もう 十分 知っていると 思っていたのです。ビリーは、友達の だれよりも、さらには 自分の 親よりも、自分の ほうが よく 知っていると 思うことさえ ありました。

* * *

 「ぼく、最高の 虫を 見付けられる 場所、知ってるよ!」 ビリーが スモグルに 話しています。リーマス先生の クラスを 乗せた スクールバスが、森の はずれに 着きました。今から 1時間、みんな チームに 分かれて、できるだけ たくさんの 種類の 虫を 集めるのです。

 スモグルが 言いました。「ぼくだって、知ってるよ。マガモ池の そばには、最高の 昆虫を 見付けられる 場所が あるんだ。」

 「池だって? そんなんじゃ、ぼくたち 負けちゃうよ! ぼく、ホントに 最高の 場所 知ってるんだ! 森の 中で たくさん 丸太が 転がってる 所。その 下には、ムカデや ミミズや、地を はう 虫が いろいろ いるはずだよ。」

 「じゃあ、君は そっちに 行けば いいよ。ぼくは、池の 方に 行くから!」

 「だけど ぼく達、チームでしょ・・・」

 「じゃあ、いっしょに 池に 来たら いいじゃ ないか。」 そう 言いながら、スモグルは マガモ池の 方に 向かいました。「それに、ぼくは 君よりも 1か月 年上だから、君の ほうが ぼくの 言うことを 聞くべきじゃ ないのかな。」

 ビリーは、スモグルが 池の 方に 歩いて行くのを 少しの間 見ていましたが、(ようし、見てろよ。) そう 思いながら、森の 方へ 急ぎ足で 歩いて行きました。

 丸太を ひっくり返して その 下に いる 昆虫を 見つけるのは、思っていたほど 簡単では ありませんでした。丸太を 一人で 持ち上げるのは、一苦労でした。協力して 丸太を 持ち上げている 他の チームを 見ると、ビリーは 思わず、スモグルの ほうこそ、勝手に 一人で 行かないで ビリーと いっしょに 来るべきだったんだ、と つぶやきました。何度も 何度も やって、ビリーは やっと、丸太を ひっくり返すことが できました。けれども、ひっくり返すまでに 長い 時間が かかったので、その 間に ほとんどの 昆虫は どこかへ 逃げて行ってしまいました。

 1時間は あっという間に 過ぎ去り、リーマス先生が 合図の ホイッスルを 吹きました。そして、丸太を ひっくり返した 生徒達は、それを 元通りに するようにと 言いました。他の チームの びんは みんな、もぞもぞと 動き回る 昆虫で いっぱいでした。けれども、ビリーは 何とかして やっと 1匹の ムカデを つかまえただけでした。(何て ことだ!)と 思っていると、スモグルが バスに もどって来るのが 見えました。スモグルも、うれしそうな 顔を しては いません。スモグルの びんにも、トンボが 1匹 入っているだけでした。

 学校へ 帰る とちゅうの バスの 中で、スモグルが ビリーに ささやきました。「ぼく達が 負けたら、君の せいだからね。ものすごく たくさん 昆虫が いて、何から つかまえたら いいのか 分からなかったんだ。それで、結局 1匹しか つかまえられなかったんだ。」 

 「スモグルだって、もし ぼくと いっしょに 来て、丸太を ひっくり返すのを 手伝ってくれていたら、すごく たくさんの 虫を つかまえられたんだぞ。」 ビリーも、かっかしながら 言い返しました。

 その後は、ビリーも スモグルも、バスが 学校に 着くまで、ずっと おたがい 口も ききませんでした。

* * *

 その日、ビリーは とても がっかりした 様子で 家に 帰りました。

 「虫の 日は、ひっちゃかめっちゃかだったよ! 明日は、学校に 行きたくないな。」

 「まあ、どうしたの、ビリー?」と、お母さんが たずねました。

 「スモグルと ぼくは、虫を たった 2匹しか つかまえられなかったんだ。アレックスと フィスクは、少なくとも 20匹は つかまえたのにね! みんな、スモグルの せいさ! スモグルは 自分が 何でも 知ってると 思っているから、人の 話を 最後まで 聞こうと しないんだ。ぼくの 言うことなんか、全然 聞いてくれないんだよ。もし アレックスと いっしょだったら、絶対に 勝ってたのになあ。アレックスは、いつも ぼくの 話を 聞いてくれるし、頼むことを 何でも してくれるんだ。」

 「確かに、アレックスは あなたの いい お友達よね。母さんも、ちゃんと 話を 聞いてもらえなくて、何かを 言おうと している 時に 割りこまれたら、いい 気分は しないわ。だれでも、同じように 感じるんじゃ ないかしら。」 ビリーが 学校かばんを 置いて 上着を ぬぐのを 手伝いながら、お母さんが 言いました。

 思わず、ビリーの 顔が 赤く なりました。きのう 夕食の 時に、自分が お母さんに 対して 取った 態度を 思い出したのです。

 お母さんは 話を 続けました。「ビリー。スモグルも、今の あなたと 同じ 気持ちかも しれないわよ。もし あなたが 学校で 学んだことを お父さんや 私に 話している 時に、『もう 知ってるよ』って 言われたら、どんな 気持ちが するかしら?」

 「だけど、お父さんも お母さんも、そんなこと 言わないでしょ。」と ビリーが 言いました。

 「もちろん、言わないわよ。だって、あなたを 愛しているもの。だから、知っている ことでも、あなたに 関心が あるから、話を 聞くのよ。」

 「そうか~。分かったよ。」と、ビリーが 言いました。

 「ねえ、ビリー。もし スモグルが 話している ことに 耳を 貸すなら、今まで 知らなかったような ことが 分かるかも しれないわよ。それに、たとえ もう 知っている ことだけだったと しても、ほかの 何かを 得られるかも しれないわ。」

 「ほかの 何かって?」 ビリーが たずねました。

 「お友達よ。」 お母さんが 答えました。

* * *

 次の日、ビリーと スモグルは いっしょに 座っていました。各チームは、自分達が つかまえた 虫の 入った びんを 前に して、それぞれの 虫の 特徴と つかまえた 場所を ノートに 書きこんでいました。

 最初に ろうかで 会った 時、スモグルは 何も 言いませんでした。ビリーは、きのう お母さんが、友達を 得られるかも しれないと 話していた ことを 考えていました。

 「君の トンボ、すてきだね。」と、ビリーが 言いました。

 スモグルは おどろいて 言いました。「本当? これ、めずらしい 種類の トンボなんだよね。それで、こいつを つかまえようとして、すごく 時間が かかったんだ。トンボって、ヤゴの 時、小さな 魚を つかまえる ヤリみたいなのを 持ってるって、知ってた?」

 「ううん、知らなかったよ。」 ビリーは 感心して 言いました。

 「トンボは 蚊を 食べるよね。以前 70cmも ある トンボの 化石が 見つかった ことが あるそうなんだけど、現在でも、18cmも ある トンボが いるんだってさ!」

 「うわぁ! それって、今日の 発表会で 話す?」

 すると、急に スモグルの 顔が 曇りました。「そうだねえ・・・。ほかの みんなは、すごく たくさんの 種類の 虫を つかまえたからなあ・・・」

 「だけど、トンボを つかまえた 人は だれも いないよ!」 ビリーは 得意そうに 言いました。

 「それも そうだね!」 そして スモグルは ためらいがちに 言いました。「ねえ、ビリー。もし 昨日、ぼく達 いっしょに やっていたら、勝っていたかもね。」

 「来年は、いっしょに やって 勝とうよ。」と、ビリーが 言いました。「だけど 今年は、最高に 面白い 資料を 見つけた ことでは 一番さ!」

 スモグルと ビリーは、向き合って にっこり 笑いました。(それに 今年は、新しい 友達も できたしね。)と ビリーは 思うのでした。

終わり

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