マイ・ワンダー・スタジオ
ビリーと 仲間達 : ビリーと 大きな 心配屋
水曜日, 2月 17, 2021

ビリーと仲間達:ビリーと 大きな 心配屋

 ウサギの ビリーは、落ち着きが ありません。夕食は にんじんポテト・パイだと いうのに、ほかの ことで 頭が いっぱいなのです。

 「ねえ、お父さん。もし 目覚まし時計が 聞こえなくて 起きれなかったら、どうしよう? 学校に おくれちゃうよ!」

 「そうだな。もし 目覚ましが 鳴っても ねていたら、私が 起こしてあげよう。そうすれば、間に 合うだろう。」と、お父さんが 答えました。

 「だけど、もし お父さんも 起きれなかったら? その時は、どうなるの?」 ビリーは 別の 心配を し始めました。

 「それも そうだな。その時は、私が おまえの 先生に 電話を して、おまえが 少し おくれることを 伝えなくてはな。その後、車で おまえを 学校まで 送って行ってやろう。」

 「だけど、1時間目の 授業には おくれちゃうでしょ? それに、席に 着くまで、みんなに じろじろ 見られたら、どうしよう?」 ビリーは うなだれました。

 「それだけなら、心配することは ないだろうさ。」 お父さんが ふくみ笑いを しながら 言いました。

 「そうかぁ。」 ビリーは 食べ物を つまみながら、じっと 考えこんでいました。そして、次の 心配を し始めました。「もし 明日、宿題を 持っていくのを わすれたら、どうしよう? リーマス先生は、きっと おこるだろうな。」

 「ビリー。今までに そんな 心配を したことなんて、なかったわよね。一体 急に、どうしたの?」 お母さんが たずねました。

 「分からないよ。ただ、どうしても 心配に なっちゃうんだ。」 ビリーは、あわれな 声で もごもごと 答えました。

 その夜、ビリーが ベッドに 入っていると、翌日についての 心配事が、後から 後から、とめどもなく 出てきてしまいました。(もし こうなったら・・・、もし ああなったら・・・、もし・・・)

* * *

 翌朝に なりました。ビリーは 目覚まし時計が 鳴ると、すぐさま ベッドから はね起きました。やったー! ちゃんと 目覚ましが 聞こえました。今日は、学校に 間に合います。

 教室では、親友の ハリネズミの アレックスの となりに 座りました。図画工作の 時間は、とても 楽しい ものでした。お昼になって お弁当箱を 開けると、ビリーの 大好きな ものばかりが はさまった、おいしそうな にんじんサンドイッチでした。お昼ご飯が 済むと、アレックスと、キジの フィスクと、アナグマの スモグルと いっしょに、校庭で 遊びました。授業が 終わると、リーマス先生は 次の日までに やって 持ってくる 宿題を みんなに 配りました。

 ビリーと アレックスは、いっしょに 森の 中を 歩きながら、お母さんのために キイチゴを つんで 帰りました。今日は、良い 1日でした。

 「ただいま! お母さん! お父さん! 今日は、すごく いい 1日だったよ!」 ビリーは 元気いっぱいに、リビングルームに 入りました。「お母さんのために、キイチゴも つんできたんだ。」

 ビリーは カバンを 開けて キイチゴを 出しました。すると・・・宿題が ありません!

 「お母さん! お母さん! 宿題が 入ってない!」 ビリーは 泣きべそを かきながら、通学カバンに 入っていたものを 全部 出して、その日 やらなくては いけない 宿題を 探しました。

 「まあ。本当に ないの?」と、お母さんが たずねました。

 「うん、本当に ないんだ! もしかしたら、アレックスと いっしょに 森の 中で キイチゴを つんでいた 時に、落としちゃったのかも。行って、探してくる。」

 ビリーは、なくした 宿題を 探すために、玄関に 向かいました。お父さんが ビリーの 肩を ポンポンと たたいて 言いました。「じきに 暗く なる。その前に 帰らなくちゃ いけない ことは 分かっているね。それに、今だって、もう よく 見えないんじゃ ないかな。」

 ビリーは 窓の 外を 見ました。お父さんの 言うとおりです。もう 夕方で、太陽が しずみかけています。

 「だけど、宿題が なくて、どうしたら いいの?」

 「なくした ことを、先生に 言うんだな。きっと、分かってもらえるさ。だれだって、時には なくしものを するものだ。」

 「だけど、もし 先生に、わざと なくしたと 思われたら? もし・・・」 ビリーの 声は 弱々しくなってきました。

 「ビリー、食卓の 準備を 手伝ってくれないかい? その後、私が おまえくらいの 年だった 時に 飼っていた、ペットの ナイトバンプ(想像上の モンスターの 名前)の 話を してあげよう。」

 ビリーは 興味津々です。「ナイトバンプって、本当に いるの?」

 「まあ、私にとっては、現実の ものだったんだな。名前は、『大きな 心配屋』だ。ナイトバンプは たいてい そうだが、こいつも、とんだ いたずら者だったんだ。」

 「本当? どんな ことを したの?」

 「やつは、いつも いつも 構ってもらいたがったのだ。だが、私が 構えば 構うほど、あいつは 大きくなっていった。部屋が いっぱいに なってしまうくらいにな。そして、私が 行く ところは、どこにでも 付いてくるように なったんだ!」

 「ペットって、ふつう そうじゃ ないの?」

 「そうだな。だが、あいつは むしろ、やっかいな ペットだった。その日に 起こりそうな ことを 全部 知りたがり、明日の ことまで 知りたがった! そして、事あるごとに、「もし こうなったら」って 心配するんだ。だから、私は やつの ことを「大きな 心配屋」って 呼んでいたんだ。とにかく、私は じきに、やつを あちこち 連れ歩くのが いやに なった。いつも いつも 関心を ほしがる ものだから、私は 家族や 友だちとの 時間や 学校での 時間を 楽しむ ことが できなくなって しまったんだ。

 「それで、どうしたの?」

 「やつの しつけ方を 学んだのさ。大きな 心配屋が 何かについて 心配事を 言う 時は、やつの 言うことばかり 聞いていないで、父親に 相談しに 行った。それから、祈って 神様に そばに ついていてくださるように お願いすれば、大きな 心配屋も それほど くよくよせず、やっかいな 存在にも ならないと 分かったんだ。

 あと、やつが こわがったり 心配したりする ことは めったに 起こらないし、やつが 思うほど 大事でも ないって ことを 自分の 目で 確かめさせれば、やつは おとなしくなった。起こりそうなこと すべてについて 疑問を いだいて くよくよするか、それとも 勇気を 出して 立ち向かうことを 選ぶことも できるんだと 分かったのだ。つまり、その、やつがね。」

 「それで、勇気を 出すことに したんだね? つまり、その、やつがね?」 ビリーは すっかり 話に 夢中です。

 「そういう ことだ。で、あの 大きな 心配屋も、結局は あつかえるほどの 大きさに ちぢんだ。まもなく、やつは あまりにも 小さくなって、ペットに するほどの 大きさでも なくなってしまったのさ。」

 ビリーは 夕食の 間中、そして ベッドに 入ってからも ずっと、お父さんが 話してくれた ことについて、考えていました。そして、自分も きっと、大きな 心配屋みたいな ナイトバンプを ペットに していて、あまりにも えさを あげ過ぎていたんだと 分かりました。

* * *

 翌朝は、太陽が 明るく 輝いていました。ビリーは 時間通りに 目を 覚ますと、お母さんが 用意しておいてくれた 通学用の 服を 着て、朝食を 食べていました。すると、急に 昨日 なくした 宿題の ことを 思い出し、おなかが 痛くなってきました。どうして 宿題を なくしたかを 話したら、リーマス先生は 何と 言うだろうか・・・。ナイトバンプの 大きな 心配屋が 目を 覚ました 様子です。

 「お母さん。祈ってくれない? ぼく、宿題の ことが 心配なんだ。」と、ビリーが 言いました。

 お母さんは うなずいて、ビリーのために 祈ってくれました。そして、家に 帰ったら にんじんクッキーを 焼いておいて あげるわねと 約束し、ビリーを だきしめ、キスして 送り出しました。

 学校に 向かう とちゅうの 森の 中、ビリーは 歩きながら、まだ 心配していました。けれども、勇気を 出して、ペットの 心配屋には もう 耳を 貸さないと 心に 決めました。学校に 着くと 階段を 上がり、ろうかを ぬけると、あっという間に 先生の 前に 来ていました。

 「リーマス先生。ぼく、昨日 学校から 帰る とちゅうで、宿題を なくしてしまいました。本当に すみません。」

 「わざわざ 言いに きてくれたんだね、ビリー。余分の プリントが あるから、それを あげよう。今度は なくさないようにな。」

 「はい、先生。気を つけます!」

 (心配したほどの 大事に ならなくて 良かった。) 自分の 席に 付きながら、ビリーは 思いました。そして、ペットの ナイトバンプが ずいぶん おとなしくしている ことに 気づきました。だって、すごく こわい ことに なると 思っていた ことが、実際は 大した 事では なかったんですもの。

終わり

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タグ: 子供のための物語, 勇気, ビリーと仲間達