特別な クリスマスイブ
あと 2日で、クリスマスです! なのに、7歳の エミリーと 8歳の お兄ちゃん トミーの 家では、その ワクワク感が 幾分 下火でした。
父親の ジョーンズさんは 健康状態が 悪く、炭鉱の 仕事を 辞めなければ なりませんでした。母親の ジョーンズ夫人にも、安定した 仕事が ありません。この 4人家族は 今、父親の 障害手当金で 暮らして いますが、それは 4人家族の 必要に 足る 額では ありません。母親は 服の 修繕や 寸法直しの 仕事から 多少の 収入を 得ることは できましたが、それで なんとか 食料を 買える くらいだったのです。今年は 特別な クリスマスディナーや お菓子を あきらめなければ ならないでしょうし、ましてや プレゼントなど、買う 余裕も ありません。
エミリーは、店の ショーウインドウで 見た 人形が 欲しいなぁと 思っていました。トミーは 子犬を 飼いたがって いましたが、父親が 言いました。「犬は たくさん 食べるから、私達には 世話する 余裕が ないんだ。犬を 飼ったら、どうやって 家族 みんなを 食わせて いくんだい?」
クリスマスイブの 日、トミーと エミリーは 午後の 間中 ずっと 外で、降ったばかりの 雪で 遊んでいました。その夜、夕食の 前に 家族は 集まって、小さな クリスマスツリーに かざりつけを しました。ポップコーンを 糸で つなげ、それを ツリーの 周りに ぐるっと 巻きつけて、毎年 使っている 簡素な かざりつけも ぶら下げました。
クリスマスイブに、みんなで いっしょに ツリーに かざりつけを するのは、ジョーンズ一家の 恒例行事でした。そして 深夜の 0時に なると、プレゼントを 交換し、クリスマスキャロルを 歌って、シナモン入りの 温かい アップルサイダー(りんごジュース)を 飲むのです。
けれども 今年は、いつもの クリスマスの お祭り気分が どこかへ 吹っ飛んでしまったようです。夕食の 時間に なると、母親は、マッシュポテトと グリルドチキンという 質素な 食事を 出しました。食事の 時間は、普段より 静かです。夕食が 終わって 食卓が 片付くと、エミリーと トミーは 静かに クリスマスキャロルを 歌いながら、ツリーの かざりつけの 残りを 終わらせました。
キッチンが 片付くと、母親は 部屋へ 行って ベッドの わきに ひざまずき、祈りました。「イエス様、クリスマスは あなたの 日です。あなたが 一番 大切です。ですが、子供達には 済まなく 思います。子供達が この日を どんなに 楽しみに しているか、あなたは ご存知です。私達に、何が できるでしょう? 子供達に 幸せに 感じて ほしいのです。どうか、助けて下さい!」
続いて 父親の ジョーンズさんが 部屋に 入ってくると、妻の 祈りを 聞き、すぐに 加勢しました。「そうです、主よ。私達に できることを 示して下さい。私達には、あなたが 必要です!」
しばらく 沈黙した 後、母親は さっと 立ち上がって、ほほ笑みました。「あることを 思いついたの!」 母親は 夫の そばに 寄って、熱心に それを 説明しました。2人は いっしょに、屋根裏部屋へ 向かう 小さな 階段を 上って行きました。
リビングルームでは、トミーと エミリーが すわって じっと ツリーを ながめています。エミリーが ためいきを ついて 言いました。「もう これ以上は きれいに できないわよね? ツリーと いうより、まるで 洋服掛けだわ。」 そう 言ったことが 自分でも おかしくて、エミリーが 思わず ほほ笑むと、その 直後に 2人は どっと、大笑いしました。
トミーが 言いました。「お父さんと お母さんに、何かの プレゼントを 考えなくちゃね。12時までは まだ 時間が あるし、何か できることが あるはずだよ。」
2人は じっと 考えこんで いましたが、まもなく エミリーが 声を 上げました。「そうだ! 来て、トミー!」 エミリーが 立ち上がって 地下室に 向かうと、トミーも その後に 続きました。
一方 屋根裏部屋では、母親が ミシンに 向かって ものすごい 勢いで 何かを ぬい始めました。部屋の 反対側では、父親が 「ああ ベツレヘムよ」を 鼻歌で 歌いながら、プレゼントを 作っています。
地下室では、エミリーと トミーが ガラクタの 入った 古い 箱の 中を 引っかき回していました。「見て、トミー! この ピカピカの 紙と グリッターで、お母さんの ために 大きくて きれいな クリスマスカードが 作れるわ。」
「あ、これも いいな。」 声を 上げながら、トミーは マリヤと 赤ちゃんの イエス様の 絵葉書を 引っ張り出しました。「これも 使えるよ。」
「ホント、完ぺきね! ところで、お父さんの ためには、何が 作れるかしら?」 エミリーは 興奮しながら 言いました。
「そうだなぁ、この こわれた 飼い葉おけの セットを 直して、ツリーの 下に 置こうかな。お父さん、びっくりするね。ぼく、直せると 思う!」と、トミーが 言いました。
こうして、ジョーンズ一家は みんな、大忙しに なりました。トミーと エミリーは 地下室で、父親と 母親は 屋根裏部屋で。たがいの している ことには 全く 気づかず、自分達の 作業に せっせと 取り組んでいます。
ジョーンズ一家の 住む ミルフォード通りでは、家々の 窓辺で クリスマスライトが 輝き、七面鳥の 焼ける においや クリスマス用の パイの においが あちこちから 漂っています。ジョーンズ一家の すぐ 1区画 先には、ミラー一家が 住んでいました。一家は クリスマスイブの ごちそうを 食べ終えたばかりで、テーブルを 囲んで くつろいでいました。家は 屋根から 庭先まで、きれいに クリスマスの かざりつけが されていて、玄関には ヤドリギが かけられています。
ミラー家の 一人っ子 ジュリーは、母親と いっしょに おいしい ホームメイドの クッキーを かじっていました。「お母さん。友達の エミリーと トミーの ために できる ことって、ないかしら? 2人とも、今年の クリスマスは あまり 恵まれて ないと 思うの。」
「そうね、ジョーンズさんが 働けなく なってしまったから、生活が 苦しいでしょうにね。何か いい アイデアでも あるの?」と、母親が たずねました。
ジュリーは 幾分 ためらいながら 言いました。「あるんだけど、お母さんが どう 思うか、分からなかったの。」
ジュリーが それを 説明すると、母親が 言いました。「すばらしい アイデアだと 思うわ。もう おそいから、今すぐ 取りかからなくちゃね。」
一方、ミラー家の 父親は、暖炉の 前に 座って「ホワイトクリスマス」を 口ずさんでいました。すると そこへ、キッチンに いた ジュリーが 飛びこんできました。「お父さん。ベランダから、籐かごを 出して もらえないかしら?」
「ジュリー、外は 寒くて 雪も 降っているんだよ。きっと、雪に うずもれてるよ! 大事な ことなのかい?」と、父親。
「そうなの、お父さん。すごく 大事な ことなの!」と、ジュリーが 答えました。
「分かったよ。これも、お前への クリスマスプレゼントだ。」 父親は 陽気に そう 言って、コートを 着、長ぐつを はきました。
「ありがとう、お父さん!」 外に 出て行く 父親の 背後から ジュリーが 声を かけました。
屋根裏部屋では、ジョーンズ夫婦が まだ 一生けん命に 作業を 続けています。
母親は エミリーのために 作った 人形の 仕上げを しながら 思いました。(やっぱり、今年も ステキな クリスマスに なりそうだわ。)
ジョーンズさんは いとおしそうに 妻を 見上げ、出来上がった ものを 見せて 言いました。「どう 思うかい? トミーに 気に 入って もらえるかな?」
「まあ、あなた、すてきじゃ ない! とっても すてきよ! きっと、気に 入って もらえるわ!」と、母親が 答えました。
妻に すてきだと 言って もらえて ほほ笑むと、ジョーンズさんは 夫人が 大事そうに かかえている 人形を 見て 言いました。「まるで お店から 買ってきた ものみたいだね。一体 どうやって 作ったのか 分からないけど、すばらしい 出来だよ。」 父親は そう 言って、妻を ほめました。
時計が 夜の 11時半を 知らせました。ミラー夫人は オーブンを 開けて、クッキーの 並んだ 次の トレーを 出しました。(どうして 今年は、こんなに たくさんの ケーキや クッキーを 焼いてるんだろうって 思っていたわ。) ジュリーは、用意した いろいろな クッキーや 焼き菓子を 容器に つめ終わると、父親の 様子を 見に リビングルームに 走って行きました。
まもなく すると、ドアが 勢いよく 開き、頭から つま先まで 雪だらけに なった 父親が 現れました。「取って きたよ、ジュリー。」 そう 言いながら、父親は 籐の かごを テーブルの 上に 置きました。
「お父さん、最高!」 そう 言って、ジュリーは 父親の ほおに キスしました。「じゃあ、お父さん、かごに つめるの、手伝って もらえるかしら?」
ミラーさんは 笑って 言いました。「分かったよ。暖炉の そばに 持っておいで。そこの 方が 暖かいからな。そうしたら、手伝うよ。」
一方、ジョーンズ一家では、トミーと エミリーが 小さな 木の 馬小屋を ツリーの 下に 置き、マリヤと ヨセフ、それに 博士達の 人形を 赤ちゃんの イエス様の ねかされている 飼い葉おけの 周りに 並べていました。エミリーは 飼い葉おけの となりに、作ったばかりの カラフルな クリスマスカードを そっと 置きました。
「お父さんと お母さん、どこに いるのかな?」 赤ちゃんの イエス様の 寝床の 下に コットンを しきながら、トミーが 言いました。出来上がったばかりの 飼い葉おけの セットは まるで、命が ふきこまれたかの ようです。本当に、クリスマスらしく なりました。すると、2人が 階段を 降りてくる 足音が 聞こえました。いっしょに 「牧人ひつじを」を 歌う すてきな 歌声も 聞こえてきます。
「こっちに 来るわ。」 エミリーが トミーに そう ささやくと、2人は にっこりと ほほ笑みました。
リビングルームに 入ってくると、母親が 陽気に 言いました。「2人とも、ねる 準備を してきたら? それから、みんなで 楽しく クリスマスの 物語を 読むの。どう?」
「はーい。」 2人は そう 答えると、自分達が 用意した ものを 両親が すぐに 見つけてくれる ことを 望みながら、階段へ 向かいました。
子供達が 見えなくなると、父親と 母親は すぐに、屋根裏部屋から プレゼントを 持ってきて、ツリーの そばへ 行きました。
「まぁ、見て、あなた!」 キラキラした クリスマスカードと 良く 出来た 飼い葉おけの セットを 見て、母親は 子供達の 思いやりに 胸が 熱く なりました。父親も、今年の クリスマスに この 飼い葉おけの セットを 再び よみがえらせた トミーの 腕前を 誇りに 思いました。
「私達には 本当に すばらしい 子供達が いるわね?」と 母親が 言いました。その時です。時計が 0時を 知らせると 同時に、ドアベルが 鳴りました。
「一体、こんな 夜ふけに、だれだろう?」 そう 言いながら、父親が ドアを 開けると・・・
「メリークリスマス!」 ジュリーと ミラー夫人が 同時に 声を 上げると、父親の ミラーさんが ジョーンズさんに 手を 差し出して 言いました。「サプライズ・プレゼントです。」
ちょうど その時、トミーと エミリーも パジャマに 着替えて、階段から 走り下りて 来ました。ミラーさん達が 持ってきてくれた 数々の お菓子を 見て、もう ビックリです。赤い リボンで かざられた きれいな かごに、いろいろな 種類の クッキーや ごちそうが いっぱい 入っていました。
「さあさ、早く 入って下さい!」 ジョーンズ夫人は ドアを 大きく 開けて、ミラー一家を 寒い 戸外から 中に 招き入れました。
「長居は できないが、他にも まだ あるんだ。子供さん達の ためにね。」 そう 言う お客さんと いっしょに リビングルームに 向かいながら、エミリーと トミーは 一体 何だろうと、2人を 見上げました。
ジュリーは 小さな 包みを 友達に 渡して 言いました。「これは、エミリーの ため。開けてみて!」
「うわぁ、何かしら?」 そう 言いながら、エミリーは はやる 思いで 包みを 開けました。
エミリーが 包みから プレゼントを 出すと、ジュリーが 答えました。「カラーペンよ。エミリーは ぬり絵が 好きでしょ。」
「まぁ、ありがとう!」 エミリーは そう 言って、友達を だきしめました。
「それから、トミーには・・・」 ジュリーが 満面の 笑顔で 言いました。「すごく 特別な もの! お父さん?」
それを 聞くと、ミラーさんが 最後の かごを 持って 入って来ました。緑色の 布が かけられ、持ち手には 大きな 赤い リボンが 結び付けられています。
かごを じっと 見ながら、トミーは 好奇心を かき立てられて 目を 真ん丸く しました。一体、何が 出てくるのでしょう? すると、トミーの 目が、布の 下から 顔を 出した かわいい 子犬の 目と 合いました。
「子犬だ!」 トミーは さけびました。「ぼくに?」
ミラーさんは やさしそうに うなずいて 言いました。「子犬用の ドッグフードも たっぷり あるぞ!」
「うわぁ! ミラーさん、ありがとう ございます!」 トミーが お礼を 言いながら 父親の 方を 見ると、父親も うなずいて くれました。
「さぁ、私達は 本当に もう 帰らないと。夜 おそく なったけど、メリークリスマスを 言いに 来たかったの。」と、ミラー夫人が 言いました。
「ありがとう。本当に ありがとう!」 ジョーンズ夫人の 目は、まだ 涙で ぬれたままです。
「ミラーさん達にも、メリークリスマス。」と、ジョーンズさんも 言いました。
ミラー一家は 星空の 下を 家に 向かいながら、幸せな 気分に 包まれていました。「贈り物を するって、気持ち いいわね、お母さん?」 ジュリーが ほほ笑みながら 言いました。
「全く その通りね! こういう ことを もう少し ひんぱんに するべきだわ。」 深く 考えながら、母親が 答えました。
「そうする ことを、新年の 抱負に しようじゃ ないか。」 ミラーさんが そう 言うと、みんな 同意して うなずきました。
ジョーンズ一家は また リビングルームに 集まりました。エミリーが ちらっと ツリーの 方を 見ると、そこに かわいい 人形が ある ことに 気付きました。町の お店で 見たのと そっくりです。母親の 方を 見ると、ほほ笑んで うなずいています。エミリーは ジュリーから もらった カラーペンを 置き、ツリーに かけ寄ると、もう1つの プレゼントを だきしめました。
こちらの 方が、お店に あった 人形よりも、はるかに すてきな プレゼントでした。だって、母親が エミリーの ために 自ら 作ってくれた 人形ですもの。「お母さん、ありがとう、本当に すてきだわ。ありがとう!」
トミーも、自分への プレゼントを 見つけました。「手押し車だ! 子犬を 乗せて 連れ歩けるぞ。うわぁ、すごく 楽しく なりそう! お父さん、ありがとう! 最高の プレゼントだよ!」
トミーの 目が 熱意と 喜びで 輝いているのを 見るだけで、ジョーンズさんは 胸が いっぱいに なり、涙が 目に あふれました。父親らしい 誇りに 満ちた 表情は かくせません。
ジョーンズ夫人が クリスマス用に 用意していた アップルサイダーを 出してくると、ミラーさん達が 持ってきてくれた クッキーや スナックを いっしょに 食べました。小さな クリスマスツリーの 周りに 座って、一家は 主の 愛情深い 世話に 感謝を ささげました。
エミリーは 人形を だき、トミーは 子犬を なでながら、ジョーンズ夫人が 出してきた 聖書から 最初の クリスマスの 物語を 読むのに 耳を かたむけました。ジョーンズさんは 大きな 喜びで いっぱいでした。これこそ、本当の 意味での 楽しい クリスマスです。その 特別な クリスマスイブに 一家に もたらされた 安らぎは、これから ずっと、みんなの 心の 中に とどまる ことでしょう。