最高に 並外れた 戦術
ティルニー卿:ありがとうよ、アルバート。お前も 立派な 従騎士*1*に なったのぅ。
ティルニー卿:われらが 英雄騎士の 力強い 王は、戦いの 前線に わしを 召された。戦いの 本質から 言って、今回 おまえには いっしょに 来てもらう 必要は ない。わしが 留守の間、時間を 有効に 使うのだぞ。
アルバート:はい。
ティルニー卿:われらが 王の 書かれた 書物を、忠実に 学習するのじゃ。王の 言葉こそ、真の 力の 源だからの。
アルバート:はい、ティルニー様。
ティルニー卿:わしが 教えた 剣の 使い方を、練習せよ。この 腕も、強めるのだぞ! また、喜んで 他の者たちを 手伝うのじゃ。真の 騎士とは、常に 仕える 機会を さがしているものだ。主人である 王と、その 家臣たちに 仕えるためにな。
ティルニー卿:われらが 王は、来るべき 戦いに 備えて、英雄騎士たちを 新しい 戦術で 訓練してくださった。 帰ったら、教えてあげようぞ。
アルバート:ありがとうございます。英雄騎士たちが 今度も 勝利を 得られるよう、お祈りしております!
ティルニー卿:ありがとうよ。祈りには、強大な 力が あるからのぅ! お前が 任務に 送り出される 日も、そう 遠くは ないぞよ!
2週間たって・・・
ティルニー卿:はげしい 戦いじゃった。だが、王が われわれに 備えてくださった 特別な 戦術の おかげで、勝利を 勝ち取ることが できたぞ! ここに 記されている 戦術には、大いなる 力が ある! これを 読みなされ。そして すぐに、この 術を 使う 練習を し始めるのじゃ。これが 太刀打ちできぬ ものだと わかるぞ!
わが 勇気ある 英雄騎士よ、わが王国を 長年に 渡り 忠実に 守ってきてくれたことを、感謝する。戦いは はげしかったが、なんじは わたしが 与えた 武器を よく 使いこなし、勝利し続けた。
ついては 今、並外れた 力を 持つ 戦術を 紹介しよう。敵は、今までにも 増して はげしく 攻撃してくるだろう。だが、この 術を 使えば、わたしの 助けによって なんじは 必ず 勝利する。
戦いの間、なんじは 声を あげて、賛美せよ。わたしへの 感謝の 気持ちを 表すのだ。たとえ 状況は いかなる ものでも、また いかなる 困難に あっても、感謝の 気持ちを 表すことが 最大事と 心得よ。
なんじが わたしへの 感謝を 表す時、わたしは ふしぎな 力で なんじを 助けることが できるようになる。なんじが 戦いで 賛美を 用いるのを 聞く時、敵は おじけづく。敵は、自分たちの 力が わたしの 力には 太刀打ちできないと 知っているからだ。だから、戦いで この 感謝の 術を 使うのじゃ。そうすれば、すべての 戦いに 勝利することを、わたしが 保証しよう。
アルバート:ティルニー様、これが 本当に、先日の 戦いで 用いるようにと 王が お授けに なった、特別な 戦術なのですか?
ティルニー卿:そういう ことじゃ!
騎士:実に 力強い 武器じゃったのぅ!
アルバート:しかし・・・わたしには、これが どのように 役立つのか、わからないのですが。
騎士:一時は、もう少しで 敗北する ところじゃった。だが、われわれが 賛美の 声を あげると、戦いの 形勢が 一変し、勝利が われわれの ものと なったのじゃ!
ティルニー卿:だから、おまえも これから、この 術を たくみに 使いこなすことを 学ばねばの。
アルバート:はぁ、わかりました。そう おっしゃるのでしたら。
3ヵ月後・・・
ティルニー卿:アルバート、おまえは 訓練を しっかりと やってきた。そろそろ 初仕事を しても よい ころじゃ。
アルバート:はい、準備は できております!
ティルニー卿:この 任務を うまく 果たせば、英雄騎士の 一員に なるよう 招かれるじゃろう。
アルバート:では、ティルニー様は 新しい 従騎士を お探ししたほうが よさそうですね。きっと、任務を 立派に 果たして 見せますから!
ティルニー卿:それが、王の 恵みと 王が お授けくださった 力強い 武器の おかげだと いうことを わすれないかぎり、勇ましき アルバートよ、おまえは きっと、任務を うまく 果たしてくれると 信じておる。
アルバート:はい、ティルニー様。
ティルニー卿:王国の 立派な 貴族である オスカー伯爵が、巨人に つかまっての。伯爵は 巨人の ほら穴に 閉じこめられて おる。
アルバート:わたしは オスカー伯爵を 救い出す 騎士団に 加わるのですか?
ティルニー卿:いいや。巨人たちは、英雄騎士たちを 非常に 警戒しておっての。それで、王は この 救出作戦に おまえの 手を 借りたいとの ことじゃ。若き アルバートよ、王は おまえの 成長ぶりを 見ておられての。これは、1人でしか できない 仕事なのじゃ。
アルバートは オスカー伯爵を 救い出しに 向かいますが、巨人が かげで うかがっていることに 気づきません。
巨人:つかまえたぞ!
アルバート:放せ、巨人! わたしは 王に 仕える 従騎士だぞ!
巨人:従騎士だと? ハッハッハッハ!!
アルバート:(ここから 出るのに、ズタ袋を さくための 剣も ないしなぁ。どうしたら、オスカー伯爵を 救い出せるだろう? ぼくは 強いんだ。もがき回って ここを 出るぞ。ウー! エイヤー! ・・・だめだ。へとへとに なるばかりだし。そうだ、賛美の 術を 試してみるべきかも。どう 働くのかは わからないけど、やってみるだけの 価値は あるぞ。だけど、何を 賛美したら いいんだ? わかった!)
アルバート:力強い 王よ、じゃ悪な 巨人に つかまったのに、ケガを していないことを 感謝します!
巨人:ハッハッハ! 王は もう、お前を 助けられないぞ!
アルバート:偉大なる 王よ、あなたを 賛美します。ズタ袋の 中に 入れられて にげられなくても、感謝します!
巨人:ハッハッハ! そういう ことさ!
アルバート:偉大なる 王よ、わたしを 生かして くださっていることを 感謝します!
巨人:だまれ、うるさい チビ助めが! 王には お前の 声なんか、聞こえないぞ。
アルバート:英雄騎士の 王よ、あなたは 全能です!
巨人:あぁぁぁぁ! やめろ! たえられん! うわぁぁぁぁぁ!!!
アルバート:愛する 王よ、あなたは 偉大さ そのものです! あなたには 失敗は あり得ません! 偉大なる 王よ、あなたは いつも 勝利されます! すばらしき 王よ、感謝します!
アルバート:さあ、オスカー伯爵を 見つけ出さねば。すべてを 知っておられる 王よ、感謝します! ちょうど ほら穴の そばに 置いていかれたなんてね! ふぅ~ん! オスカー伯爵が もう1人の 巨人に つかまっているのは、ここかな? 愛する 王よ、わたしが 夜に 着いたことを 感謝します。ほら穴に 巨人が いたとしても、おそらくは 眠っているだろう。
アルバート:われらの 力強い 王は、勝利を 下さった!
オスカー伯爵:わしを 救い出すために 君を 送りこんでくれた 王に、すべての 賛美を ささげます!
アルバート:ほまれ高き 王よ、勝利を もたらした 賛美の 力を 感謝します!
オスカー伯爵:すばらしい 王よ、自由を 感謝します!
まもなくして・・・
王:アルバートどのに、英雄騎士の 称号*2*を 授ける!
終わり
脚注:
*1* 従騎士:貴族の 出で、一人前の 騎士に なるまで、騎士の 見習いとして 実地訓練を 受ける 若者。
*2* 称号:地位・身分・肩書きなどを表すもの。