むだが なければ 不足なし
トーマスと ケイトは、その週 ずっと、キャンプに 行く 日を 楽しみに していました。そして、ついに 週末に なりました。土曜日の 朝早くから、二人は お父さんと お母さんを 手伝って、テントや キャンプ用の いすや つり道具や お水の ボトルや、食べ物が つまった クーラーを 車に 積みました。
必要な 物が すべて そろっている ことを もう1度 確認すると、クリアウォーター湖へ 向かって 出発しました。キャンプ場に 着くと、ケイトは お父さんが テントを 張るのを 手伝い、トーマスは 夕食を 作るのに 必要な たきぎを 集めました。
おいしい あみ焼きバーガーと 皮つきポテトフライの 夕食を 終えると、トーマスが キャンプファイヤーを 起こし、ケイトが マシュマロを ぼうの 先に 付けるのを、お父さんが 手伝ってくれました。トーマスも ケイトも、焼きマシュマロを 大いに 楽しんで 食べました。ぼうに さした 3個を 食べてしまうと、トーマスが 言いました。「もっと 焼こうよ!」
「あと いくつ 食べられるかしら?」 ケイトも 笑いながら 言いました。
「丸々 一ふくろ!」
「あと 一つなら いいわ。その後は、食べてから 考えてみましょうね。」と、お母さんが 言いました。
トーマスは もう1個 マシュマロを 焼いて 食べた後、もっと ほしがりました。お父さんも お母さんも、トーマスの 勢いに 笑いながら、食べ過ぎは よくないと 注意しました。
その夜、お父さんと お母さんが 小さかった 時に キャンプした 時の 話を してくれた 後、トーマスは ねぶくろの 上に 転がって、かい中電とうで 遊んでいました。手で 形を 作って かい中電とうで 照らすと、犬の 形を した かげが できたり、シカの 形を した かげが できました。ゾウみたいな 形の かげも 作る ことが できました!
「トーマス、夜ふかしは いけないよ! 明日は 長い 1日に なるし、最初の 夜に 電池を 使い切りたくは ないからね。ここに いる 間は いつでも 使えるように しておかないと。」
「はい、お父さん。」 トーマスは そう 返事しましたが、お父さんと お母さんに 気づかれないように、ねぶくろの 中に もぐりこんで 遊び続けていました。
次の 日の 朝、お父さんは トーマスを 魚つりに 連れて行きました。お父さんは トーマスに、どうやって つり針に エサを 付けるかを 教えてくれました。トーマスは とても 楽しい 時を 過ごしました。1度は、1本の つり針に 5ひきの ミミズを 付けてみました。それで 5ひきの 魚が つれるかと 思いきや、1ぴきの 魚も つれませんでした。けれども お父さんは 2ひき つったので、その 日の 夕食で 食べました。
夕食が 終わると、ケイトは マシュマロの 入った ふくろを さがしに 行きました。
「空っぽだわ!」 ケイトが 声を 上げました。
「ああ、ごめん。ゆうべ、ぼくが 全部 食べちゃったんだ。」 トーマスが 決まり悪そうに 言いました。
「それで、ゆうべは おなかが いたかったのか?」と、お父さんが たずねました。
「そうかも・・・。」 トーマスが 口ごもりました。
日が しずみ、夜に なりました。トーマスが かい中電とうを 出しに 行くと・・・。「お父さん! ぼくの かい中電とうが つかないよ!」
「本当かい? 家を 出る 前に、新しい 電池を 入れたばかりなんだが。もしや・・・トーマス、ゆうべ ねる 前に、どのくらい かい中電とうで 遊んでいたんだい?」
「けっこう おそくまで。」と、トーマスが 言いました。
「おまえの かい中電とうに 入れられる 予備の 電池は ないんだ。家に いたら、お店に 買いに 行けるが、今回は この キャンプに 必要な 分だけしか 持ってこなかったからね。おまえは、『むだが なければ 不足なし』っていう ことわざを、聞いた ことが あるかい?」
「たぶんね。だけど、それって、どういう 意味なの?」
「何かを むだに したり、必要以上に 使ったり すると、いつか、それを むだに した ことを こうかいする 時が 来るという ことだよ。それは、電池についてばかりじゃ ない。最近、何かを 必要以上に 使った 時の ことを 思い出せるかい?」
「1本の つり針に 5ひきの ミミズを つけた こととか?」
お父さんは うなずきました。
「それから、マシュマロを 丸々 ひとふくろ 食べちゃった ことも?」
「そうだね。そういった 小さな ことは、大した ことじゃ ないように 思えるかも しれない。だがね、聖書には、小さな 事に 忠実な 人は、大きな 事に おいても 信頼できると 書かれているんだ。それは、その 人が 勤勉で ものを むだに しないという ことを 証明しているからだよ。」
「分かったよ。ぼく、大きな 事でも 信頼されるように なりたい。むだに して、ごめんなさい。」と、トーマス。
「もちろん、そう なれるさ。さあ、今は お父さんの かい中電とうを かしてあげよう。」
次の 日、トーマスは 魚つりで、エサを 必要な 分だけ 付けるように 気を 付けました。おどろいた ことに、初めて 魚が つれたので、トーマスは 大喜びです。トーマスは、一人で 全部 マシュマロを 食べてしまった おわびに、その 魚を ケイトに あげる ことに しました。
それからという もの、トーマスは、「むだが なければ、不足なし」という ことわざに したがう ことに したのでした。
聖句:小さい 事に 忠実な 人は、大きい 事にも 忠実で あり、小さい 事に 不忠実な 人は、大きい 事にも 不忠実です。新改訳聖書、ルカの 福音書 16:10