働きバチの ベルベット
大きな 木の えだの 高い 所に、ハチの 巣が ありました。ハチたちは みんな、いそがしく 働いています。巣の 近くでも、遠く はなれた 所でも、ハチたちは みんな、うれしそうに ブンブン 飛び回りながら、花の みつを さがしています。はちみつを 作っている ハチたちも、ブンブン 楽しそうです。
小さな ハチの ベルベットは、甘い みつの ある 花を さがすのが 仕事でした。花の みつを 見つけると、巣に 持ち帰ります。それで、はちみつが 作られるのです。ある 日の こと、ベルベットが 辺りを 飛び回っていると、チョウの 群れが 通りがかりました。
(なんて ステキなんでしょう! 色とりどりの 美しい 羽! わたしも、あんなに きれいだったらなあ。)と、ベルベットは 思いました。
ベルベットは、チョウの 大きな 羽に ある、色とりどりの きれいな もようを 見て、うらやましく なりました。自分の 羽を 見ると、あまり きれいじゃ ないなあと 思いました。「だれも ハチになんか、なりたく ないわよね。」 ベルベットは ひとり言を 言いました。
友だちの レオンが、浮かない 顔を している ベルベットに 気付いて たずねました。「どうしたんだい、ベルベット?」
「何でも ないわ。」 そう 答えると、ベルベットは 飛んで行ってしまいました。なぜ 自分が ゆううつに 感じているかなんて、話したく ありませんでしたから。(きっと、おバカさんだと 思われてしまうわ。) ベルベットは、そう 思ったのです。
その 日の 朝は ずっと、ベルベットは ふくれっ面を していました。ほかの ハチたちは、一体 ベルベットに 何が 起こったのだろうかと 心配していました。レオンが 元気づけようと すると、ベルベットは 一人に しておいてほしいと 言いました。
朝の みつ集めが 終わると、ハチたちは みんな、巣に もどって来ました。そして、持ち帰った 花の みつを、一生けん命 巣に 貯めこんでいます。ところが、みんなは 歌いながら 働いているのに、ベルベットは ゆううつそうな 顔で 仕事を しています。友だちと、一言も 口を きこうとさえ しませんでした。
お昼に なると、外から 子どもたちの 笑い声が 聞こえてきました。何が 起こっているのだろうと、何びきかの ハチが 出入口に 見に行くと、木の 下で 家族が ピクニックを しようと していました。お母さんは 毛布を 地面に 広げ、お父さんは 車から ピクニック用の バスケットを 下ろしています。その そばでは、子供たちが 遊んでいました。
ベルベットは、もっと 近くへ 行って 見てみたいと 思い、巣から 飛び立ちました。そして、枝に 止まって、子供たちが 遊ぶ 様子を ながめていました。幸せそうな 家族が 木かげに すわって ピクニックを 始めると、ベルベットは、その 様子を もっと 近くで 見ようと、そばに 飛んで行きました。
すると、男の 子が ベルベットを 見つけ、指を さして 言いました。「ねえ、みんな。ハチが いるよ! そばに ハチの 巣が あるのかな。」
「木の 上の 方を ごらん。そこに あるよ。」と、お父さんが 言いました。
「ハチって、しましまの 衣しょうを 着た、ちっちゃい 妖精みたいね。」と、女の 子が 言いました。
「わたしたちが 毎朝 トーストに つけて 食べている はちみつは、ハチが 作ってくれてるって、知っていたかい?」 お父さんが 言いました。
「知ってるよ! はちみつは、ハチが どの 花から みつを 集めたかによって、それぞれ 味が ちがうんだよね。」
「その通り。神様は、生き物を みんな、それぞれ 特別で 個性の ある ものに 造ってくださったんだよ。」
「わたしも、はちみつが 作れたら いいなあ。」と、女の 子が 言いました。
「その 仕事を、神様は ハチに お任せに なったんだよ。おまえには、おまえにしか ない 賜物や 才能を 備えて 造ってくださったんだよ。」と、お父さんが 説明してくれました。
お父さんが 言った ことについて、ベルベットは 考えていました。「つまり、神様は、あるがままの わたしを 愛してくださるっていう ことなのね。わたしは、神様にとって 特別なんだわ。神様、わたしに できる ことや お手伝いを して、ほかの 人たちに 喜んでもらえる ことを 感謝します。」
短い お祈りを すると、ベルベットは レオンを さがしに 飛んで行きました。ふきげんに ふるまっていた ことを、あやまりたかったのです。レオンは、友だちが また 元気に 飛び回っているのを 見て、喜びました。あるがままの ベルベットが 特別だと いう ことを、今は ベルベット自身が 分かったと 知って、うれしかったのです。