マイ・ワンダー・スタジオ
トリー、仲間を 救う
火曜日, 5月 19, 2015

トリー、仲間を 救う

 ヤマアラシの トリーは、体中、するどい トゲで おおわれています。茶色い 小顔に、茶色い 鼻、小さな 目も 茶色です。

 トリーには 兄弟が いなかったので、さびしく 思う ことが よく ありました。お父さんと お母さんも、食べ物さがしに いそがしくて、あまり トリーと いっしょに 遊んであげる 時間が ありません。

 ある日の ことです。はげしい 雨が 何日も ふり続いたので、トリーの 家族は、水びたしに なった 巣穴を 出て、新しい 巣穴を さがしに 行かなければ ならなく なりました。

 しばらく 歩いて行くと、森の 中でも 初めての 場所に 来ました。とても きれいな 所です。リスや ウサギや 鳥など、いろいろな 動物の 家族が かけ回っているのが 見えます。

 「ねえ、お父さん。ここに いても いい?」と、トリーが たずねました。

 「もし いい 巣穴が 見つかったら、ここに 住んでも いいだろう。」

 「うわーい!」 トリーは、ほかの 動物たちと 友だちに なりたかったのです。

 次の 日、トリーの お父さんは、トリーに 森の 中を たんけんしに 行って いいと 言いました。「だが、気を 付けるんだぞ。そして、あまり 遠くに 行っては いけないよ。」

 トリーは、「はい」と 約束を して、いそいそと 出かけて行きました。

 トリーが 岩の 向こう側を 見ていると、ウサギが 近よって来ました。「こんにちは。君の 名前は?」 ウサギが たずねました。

 「ぼくは、トリー。この 森に 引っこして 来たばかりなんだ。君の 名前は?」

 「ダスティーだよ。毛の 色が 灰色だから、お父さんと お母さんが そう 名付けたんだ。ね?」 ウサギは 一回り して、灰色の 体を 見せました。まもなく、ほかの 動物たちも やって来ました。

 ダスティーは ほかの 動物たちに トリーを しょうかいしました。「この 子は、トリーだよ。こっちは 友だちの ジェッドと マイロ。」 そう 言って、近くに いた リスと コマドリを しょうかいしました。「そして、こっちは ぼくの 妹、クレア。」

 「こんにちは、トリー。」 クレアが あいさつしました。

 しばらく たちましたが、トリーは なかなか みんなに とけこめないようでした。ほかの 動物たちが トリーの とがった トゲの ことを からかったり するのです。トゲで ケガしそうだから、いっしょに 遊べないよと 言われたりも しました。

 トリーは、とても 悲しく なりました。ほかの 動物たちと 友だちに なりたいのに。ただ、クレアだけは、トリーを からかうのは やめなさいよと 言って、ほかの 動物たちから トリーを かばってくれました。クレアは トリーの 話し相手に なってくれたので、二人は すぐに 仲良しに なりました。

 ある日の ことです。トリーは、ダスティーと マイロと ジェッドと クレアが よく 集まって 遊ぶ、大きな どんぐりの 木の 下に 行きました。そこには、ジェッドの 弟の セドと、たぬきの ミルトンも 来ていました。

 「今日は ここでは 遊べないよ。」と、セドが みんなに 言いました。「お父さんと お母さんが、この どんぐりの 木の 実を 集めに 来るんだ。そこら中に どんぐりの 実が 落ちてくるよ。」

 「トリーなら、だいじょうぶだね。」と、ジェッドが 言いました。「どんぐりが 当たったって、ちっとも いたく ないだろ。」

 「意地悪は やめて。」 クレアが おこって 言いました。

 「いいんだよ。ぼく、なれてるから。」 けれども、心の 中では トリーは 悲しく なりました。(どうして、みんなは ぼくの こと、好きじゃ ないんだろう?)

 「行こうぜ。ほかに 遊べる 所、知ってるよ。」と、マイロが 言いました。

 マイロは、森の ちがう 所へ みんなを 案内しました。みんな、そこで 遊びました。とても 楽しかったので、ついつい 時間の ことを わすれ、日が くれようと している ことに 気が 付きませんでした。しばらく して、たいようが しずみかけている ことに クレアが 気付きました。

 「おそくまで 遊びすぎたわ! お父さんと お母さんが 心配するわね。」

 みんな、急いで 帰り始めました。家の 近くまで 来た ころ、ミルトンが 言いました。「お母さんが 言ってたんだけどね。夜には、大きな 動物が 出てくるんだって。」

 「だいじょうぶだよ。それに・・・。」と、ダスティーが 言いかけました。

 「シーッ! 物音が する!」と、ジェッドが 言いました。みんなが ジェッドの 指差している 方を 見ると、大きな 灰色の オオカミが 立っています。みんな、あわてて 走り始めました。

 「こっちだよ!」 トリーが 急に さけびました。「どんぐりの 木は、こっちだよ。」

 小さな 動物たちは、全速力で 走りました。けれども、オオカミの ほうが ずっと 速く 走っています。

 「助けて! 助けて!」 ダスティーと クレアと ミルトンが さけびました。

 すると とつぜん、オオカミが 小さな 動物たちを 追いかけるのを 止めました。トリーが 間に わって 入って来たのです。

 「速く! にげて!」 トリーが みんなに さけびました。

 「だけど、トリーは どう するの?」 クレアが さけびました。

 「いいから、にげて!」と、トリーが 言いました。

 クレアと ほかの 動物たちは みんな、あわてて 近くの しげみや 見つけた 穴に にげこみました。

 トリーは、そろそろと どんぐりの 木から はなれました。オオカミは、一体 この ヘンな 動物は 何だろうと 思って、つけて来ました。けれども、かがんで トリーの 背中を かぐと、キャインと 鳴いて、後ろへ 飛び下がりました! トリーの するどい トゲの 何本かが オオカミの 鼻に ささったのです。オオカミは おそれを なし、悲鳴を あげながら、にげて行きました。

 「もう だいじょうぶだよ、みんな。出てきても だいじょうぶ! オオカミは いなくなったから。」 トリーが みんなを よびました。

 「あなたが わたしたちを 救ってくれたのね、トリー!」 クレアが うれしそうに 言いました。

 家に 着くと、みんな、今日 起こった ことを お父さんと お母さんに 話しました。

 「あなたが うちの 子たちを 救ってくれたのね!」 リスの セドと ジェッドの お母さんが 言いました。「あなたは、英ゆうだわ。」

 ほかの 動物たちも みんな、トリーに 声えんを 送りました。トリーの 両親は、ほこらしげに ほほえみました。

 「君の トゲの ことを からかって、本当に ごめんよ、トリー。」 ジェッドが うつむきながら 言いました。「君の トゲが、ぼくたちを 救ってくれたんだものね!」

 ダスティーと ほかの 動物たちも みんな、うなずきました。

 「ううん、いいんだよ。気に しないで。」と、トリーが 言いました。

 その 日からは、みんな、最高の 友だちに なりました。

終わり

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タグ: 子供のための物語, 友情