トーマスと 金魚
トーマスは、大きな 金魚ばちの 中で スイスイと 泳ぎ回る 3びきの 金魚を ながめていました。昨日、ペットショップで 買ってきたばかりの 金魚が、泳ぎ回りながら、エサを 食べようとして 口を パクパクさせる 様子を 見るのは、とても 楽しい ものでした。
「毎日 1回、わすれずに エサを あげるんだよ。」と、お父さんが 言いました。
「うん、分かった。」 トーマスは、しばらくの 間は その 約束を おぼえていました。金魚ばちは げんかんに 置いてあったので、トーマスは 学校から 帰るたびに、一つまみの エサを 金魚ばちの 中に 落としました。
トーマスは、金魚に エサを あげる ことは わすれませんでしたが、そうじは わすれがちでした。それで、お母さんも お父さんも、たびたび トーマスに、金魚ばちの 水が にごって 中も 緑色に なって きたから そうじが 必要だと 言わなければ なりませんでした。
ある日の ことです。チュリが 遊びに 来ました。「金魚が いるの? 楽しそう!」 思わず、チュリが 声を 上げました。
「うん。ぼくが エサを あげてるんだよ。」 トーマスが 得意気に 言いました。
「金魚と 遊ぼうよ。ぼく、きっと つかまえられるよ。」 そう 言うと、チュリは あみに なりそうな ものが ないかと 辺りを 見回しました。
「それは どうかなあ・・・」 トーマスは 心配に なりました。
「手でも つかまえられるよ!」 そう 言うと、チュリは すかさず 手を 水に つっこんで、金魚を つかまえようと 追いかけ始めました。
金魚が チュリの 手を かわして あっちこっちに すばやく 泳ぎ回ったので、トーマスは さっきの 心配など よそに、笑ってしまいました。
「庭で 遊ぼう。」 チュリは 金魚で 遊ぶのが つまらなく なって 言いました。
「うん。」 トーマスは そう 言って、チュリと いっしょに 庭に 向かいました。
次の 日の 朝、悲しい ことが 起こりました。金魚ばちの 金魚が 1ぴき、死んで 水面に 浮かんで いるのです。トーマスは びっくりしました。
「お父さん!」 チュリは 声を 上げながら、お父さんに 死んでいる 金魚を 見せました。「チュリだよ、チュリの せいだよ! 手で 金魚を つかまえようと 追いかけ回したんだ。だから、1ぴき 死んじゃったんだよ。」
お父さんは トーマスに うでを 回し、背中を 軽く たたいて 言いました。「確かに、金魚が 1ぴき 死んでしまったのは、悲しい ことだね。だけど、それが 全部、チュリの せいだとは 思わないな。」
「だけど、金魚ばちの 中に 手を つっこんだのは、チュリだよ。」と、トーマスは 言いはりました。
「手を 入れないでって、言ったかい?」
「う、ううん・・・。それで 金魚が 死んじゃうなんて、知らなかったもの!」
「だが、今は 分かっただろう。それにな、トーマス。金魚が 元気で いられる 世話の 仕方も あるぞ。」
「本当?」
「ああ。何の ことか、分かるだろう。金魚には きれいな 水が 大切なんだ。」
「分かったよ、お父さん。これからは、金魚の 世話を もっと ちゃんと やるね。」 トーマスは まじめな 顔で 言いました。
その日からと いう もの、トーマスは 金魚に エサを あげるのも、金魚ばちを きれいに するのも、毎日 きちんと やるように なりました。チュリが 遊びに 来て、また 金魚ばちに 手を 入れたがると、トーマスは それを 止めました。そして、前に 起こった ことを 話しました。チュリは あやまって、これからは 気を つけるよと 言いました。
聖句:何に よらず 手を つけた ことは 熱心に するが よい。新共同訳聖書、コヘレトの 言葉 9:10