なくなった 宝石
かたつむりの ブラッドリーは、晴れた あたたかい 日に、背の 高い 草の 間を ぶらぶらと 散歩するのが 大好きでした。特に、自分の 家に かざれる 小物を 見つけると、わくわくしました。
ある 晴れた 春の 朝、ブラッドリーは 鼻歌を 歌いながら、いつもの お散歩を していました。すると、何かが ピカッと 光るのが 見えました。「ふ~ん、一体 何だろう?」
よく 見ると、大きな きのこの 根元に、青くて 美しい 宝石が 落ちています。ブラッドリーは、その 宝石を 拾い上げました。日光が 当たると、反射して ピカピカ 輝きます。「何て きれいなんだろう!」 ブラッドリーは、思わず 声を あげました。「うちに 置けば、すてきだろうな。」
ブラッドリーは、宝石を 大切そうに 持って帰りました。
その 日の 午後、ブラッドリーは、もっと よく 宝石を 見てみました。見るからに、美しい 宝石です。ブラッドリーは、満足げに にっこりしました。
「友だちの みんなにも、見せなくっちゃ!」 ブラッドリーは、ほこらしそうに 言いました。
それで 次の 日、ブラッドリーは、見つけたばかりの 宝物を ひろうするために、ご近所さんや 友だちを 招きました。
まもなく、何十匹もの かたつむりや 虫たちが、ブラッドリーの 家に おしかけてきました。みんな、この まばゆいばかりの 宝石を、おどろきの 目で 見つめました。その 後の 何日かは、ブラッドリーの 宝石は、近所中の うわさに なりました。だれも、こんなに 美しい ものを 見た ことが なかったのです。ブラッドリーは、宝石が 太陽の 輝きのように 明るく 輝くように、毎晩、ていねいに みがきました。
ある 寒い 日の 夕方、ブラッドリーの 家の 戸を たたく 者が いました。開けてみると、旅の とちゅうの クモです。
「わたしの 名前は、スピンドルと 申します。よろしければ、今晩 とめていただけないでしょうか。」と、クモが 言いました。
ブラッドリーは スピンドルを 中に 招き入れ、食事を 出しました。
温かい 食事を すませると、ブラッドリーが たずねました。「ねえ、スピンドル。君は、どうして 旅を しているの? 家から ずいぶん 遠くまで 来たんじゃ ないのかい?」
「もう 何か月も 前の ことなのですが、わたしは、遠くの 谷に 住んでいる 家族に 会いに 行きました。その しばらく 前に、ある 友だちが 引っこす 前に、それは すばらしい 宝石を 友情の しるしに くれました。わたしは、遠い 所へ 旅立つ 時、食べ物と 少しの 持ち物以外は 持って 行けなかったので、その 宝石を 家に 置いて 出かけました。
ところが、悲しい ことに、しばらくして 家に 帰ると、宝石は なくなっていました。家中 あっちこっち 探し回りましたが、どこにも 見当たりません。それ以来、わたしは ずっと、その 宝石を 探しているのです。もう、あと どこを 探したら いいのかも 分かりません。」
「それは、お気の毒に! ぼくも、自分の 宝石が なくなったら、一体 どうしたら いいか、分からなくなるよ。」 ブラッドリーは、声を あげて 言いました。
「あなたも、宝石を 持っているのですか?」と、スピンドルが たずねました。
ブラッドリーは、ほこらしげな 表情で 答えました。「そうなんです。とっても すてきな 宝石です! ぜひ、あなたにも 見てもらわなくては。」
ブラッドリーは、暖炉の 上から 宝石を 取ってきて、スピンドルに 見せました。
すると、スピンドルが さけびました。「それですよ! とうとう、なくした 宝石が 見つかりました!」
ブラッドリーは、顔を 真っ赤に して おこりました。そして、すばやく 宝石を 手で かくすと、言いました。「何て ことだ! ぼくの 宝石を、自分のだなんて!」
「だけど、わたしが なくしたのと そっくりなんです。」 スピンドルは なみだぐんで 言いました。「もう ずっと、そこらじゅう 探していたのに 見つからなくて。でも・・・そうですね、やっぱり、わたしのでは ないんでしょうね。」 スピンドルは 悲しそうに 言いました。
ブラッドリーは、スピンドルに 暖炉の そばで 寝て いいからと、お休みを 言って、宝石を かたく にぎりしめたまま、そそくさと 自分の 部屋へ 行ってしまいました。
(この 宝石は、ぼくが 見つけたんだ! だれにも 取られて たまるかい!) ブラッドリーは、かっかしていました。けれども、ベッドに 入っても、いっこうに ねむれません。(もし これが 本当に スピンドルの 宝石だったら、どうしよう? 返さないのは、まちがってる。だけど、すごくきれいなんだもの。それに・・・ぼくは、これを みがいて ピカピカに するのに、すごく 時間を かけたし・・・。ぼくの ものに したって、かまわないじゃ ないか。) ブラッドリーは、あれこれと 考えていました。
けれども、スピンドルの 悲しそうな 顔が 頭の 中に 焼き付いて、どうしても はなれません。とうとう、ブラッドリーは ベッドから 起き上がって、暖炉の そばで 丸くなっている スピンドルの 所へ 行きました。
「スピンドル、スピンドル。」 ブラッドリーは、そっと ささやきかけました。
「はい、何でしょうか?」と、スピンドルが たずねました。
「君の 言う通り、きっと、これは 君の 宝石だよ! ぼく、しばらく 前に、散歩していて これを 見つけたんだ。こんなに きれいな 物を 見つけたのが すごく うれしくて、しばらくは 近所中の うわさにも なってたんだ。だけど・・・」 ブラッドリーは 首を 横に ふって 言いました。「これを 君に 返さないのは、まちがってるからね。」
「本当に そう 思いますか?」 スピンドルは こうふんして たずねました。
「うん、そう 思うよ。ぼくは、とても 恵まれてるんだ。神様が、それは たくさんの ものを くださっているからね。もし ぼくが 正しい ことを すれば、神様は 祝福してくださるんだ。だけど、この 宝石を 君に 返さないのは、まちがった ことだからね。ぼくには 宝石は ないけど、ほかにも 良い ものが たくさん ある。だけど、もしか したら、神様は 本当に 、こんな きれいな 宝石を くださるかもしれないしね。」
「それは それは、ご親切に! 何と お礼を 言ったら いいか、分かりません。本当に うれしいです!」 スピンドルは 大きな 声で 言いました。
ブラッドリーも、思わず うれしくなりました。スピンドルの かたを やさしく たたくと、にっこり ほほえみました。「受けるよりも 与える ほうが 幸いだと いうのは、この ことなんだね。」