マイ・ワンダー・スタジオ
トラッジとジッピーの冒険:キジーとバグルとはちみつ
月曜日, 5月 23, 2022

トラッジと ジッピーの 冒険

キジーと バグルと はちみつ

トラッジと ジッピーが 森の 中を 歩いていると、2ひきの ハチが 通り過ぎて 行きました。

「つかまえるからな!」 1ぴきが ブンブンと 羽音を 立てました。

「追いかけるの、やめて!」と、もう1ぴきが さけびました。「わたし、何も してないわ。」

「パイロットかい?」と、ジッピーが たずねました。

「今は 話してる ひま ないんだ。キジーを つかまえないと。ぼくの はちみつを ぬすんだんだ!」

「ぬすんで ないわ!」 木々の 間を 通りぬけながら、キジーが さけびました。しばらく すると、キジーは つかれて しまいました。「助けて!」と、キジー。

トラッジも ジッピーも、どうしたら いいか、分かりません。

「ほら、つかまえたぞ!」と、パイロット。

パイロットは そばに 飛んできて キジーを つかみ、地面に 引き下ろしました。キジーは さけび声を 上げました。

「ぼくの はちみつは、どこに 行ったんだ?」 パイロットが おこって 言いました。

「もう ないわ。」 キジーは そう 言って、泣き始めました。

「全部 食べちゃったのか?」と、パイロット。

「食べて ないわ。だけど、もう ないの。ごめんなさい。」

すると、パイロットが ますます 腹を 立てたので、キジーは もっと 泣き始めました。

「パイロット、ごめんなさいって 言ってるじゃ ないか。」と、トラッジ。

「だけど、ぼくの はちみつは 取ったじゃ ないか。」

「もし そうだったと しても、彼女を 泣かせたからって、はちみつは もどって こないよ。」と、ジッピー。

パイロットは プンプン おこりながら、キジーを 放しました。「ぼくは おこってるんだ。」

「一体、どう したんだい?」と、ジッピーが たずねました。

キジーは しくしく 泣きながら、言葉に つまりました。「わたし・・・わたし・・・」

「確かに 取ったんだろ。言いわけなんか、できないさ。」と、パイロット。

「パイロット、キジーに、どうして はちみつを 取ったのか、説明する 機会を あげてよ。」と、トラッジが 言いました。

「さあ、何が あったのか、話して ごらんよ。」と、トラッジが キジーに 言いました。

「今朝、巣箱を 出ると・・・」

今日は、みつ集めには 最高の 日和でした。キジーは、朝早くから、せっせと みつを 集め始めました。こんなに すてきな 日や 幸せな 家を 与えて くださった ことを 神様に 感謝しながら、キジーは 最高に あざやかで 甘い 香りの する 花を さがして 飛び回っていました。

すると、悲しそうな 声が 風に 乗って 聞こえて きました。キジーが 声の 元を たどって みると、子グマが 草むらの 中で うずくまって いました。キジーは、そばまで 飛んで 行きました。

「どうしたの?」と、キジーは 子グマに たずねました。

「まい子に なっちゃったの!」 子グマが 泣きながら 答えました。

「まあ。どうして そんな ことに なっちゃったの?」

「遊んでいたら、いつのまにか ママから はぐれちゃったんだ。ママが どこにも 見つからないの。こわくて、おなかも すいちゃった。」

「名前は?」と、キジーが たずねました。

「バグル。」

「何かの 助けに なれると 思うわ、バグル。おなかが すいているなら、はちみつを 食べたら 元気に なれそうかな?」

「はちみつは 大好き!」

「じゃあ、ちょっと 待っててね。すぐ もどって 来るわ。」

キジーは 子グマを そばの 草むらに 落ち着かせると、巣箱に 向かいました。

キジーは、巣箱から はちみつを 葉っぱに くるんで 運んで 来ました。そして、何度も 行ったり来たり している 間、バグルは 葉っぱの はちみつを なめて いました。やがて、キジーの はちみつは なくなって しまいました。

「まだ、おなか すいてる?」 キジーが バグルに たずねました。

「うん、少しね。」

キジーは ちょっと 考えていました。(どうしたら いいかしら? そうだ、いいことが ある!)

キジーは 巣箱に もどりました。「パイロット! パイロット!」 キジーは 何度も よびましたが、返事が ありません。

「きっと、みつを 集めに 出かけて いるんだわ。パイロットの はちみつを、ちょっと 借りましょう。彼を 見かけたら 説明するわ。今度 はちみつを 作った 時に 返せるもの。彼は きっと 気に しないわ。」

キジーは パイロットの はちみつを すくって 葉っぱで くるみ、バグルの 元へと 飛んで いきました。

「ほんとに ありがとう、キジー。ずいぶん 気分が 良く なったよ。」 そう 言うと、バグルは うでを のばして、あくびを しました。

「お母さんを さがしてきて あげるから、その間、ちょっと お昼ねでも していたら?」

「君って、とっても 親切な ハチなんだね。」

「お役に 立てて、とても うれしいわ。」

バグルが うずくまって ねむって しまうと、キジーは バグルの お母さんを さがしに 行きました。まもなく すると、キジーは バグルの お母さんと いっしょに もどって 来ました。

「まい子の バグルを 見つけてくれて、ありがとう。」と、バグルの お母さんが キジーに 言いました。

「どう いたしまして。さようなら!」

キジーは、また みつを さがし始めました。すると とつぜん、パイロットが おこって キジーを よんで いるのが 聞こえました。(まあ。おこっているわ。)

「ごめんね、キジー。今日は、ついてない 日だったんだ。最初に 君の 話を 聞くべきだったよ。」と、パイロット。

「いいのよ。借りた はちみつは、ちゃんと 返すわ。」と、キジー。

「いいよ。はちみつは たっぷり あるから。」

「ね、ちゃんと 話せば、解決するんだ。」と、トラッジ。

「だれだって、誤解する ことは あるさ。友だち同士でもね。」と、ジッピー。

「おこる 前に、まずは 話し合って みるのが 一番だね。じょうきょうを すべて 理解している わけじゃ ないもの。」

「本当に そうだね。今度は このことを ちゃんと 覚えておくよ。」と、パイロット。

「ねえ。はちみつの ことを 話していたら、おなか すいちゃったよ。」 舌なめずりを しながら、ジッピーが 言いました。

「じゃあ、みんな、ぼくに ついて おいでよ。まだ はちみつが 残っているから、ごちそうするよ。」と、パイロットが 言いました。

この シリーズの 他の お話 「トラッジと ジッピー」と「ちがいは あるけど 仲間だよ」も、ぜひ 読んでね。
文:カチューシャ・ジュスティ 絵:ヒューゴ・ウェストファール デザイン:ロイ・エバンス
掲載:マイ・ワンダー・スタジオ
Copyright Ⓒ 2004年、オーロラ・プロダクションAG、スイス、不許複製、使用許諾取得済
ダウンロード
タグ: 子供のための物語, 争いを収める, コミュニケーション, 友情, トラッジとジッピーの冒険