ジェイクおじいちゃんの お話シリーズ:恐竜たちの お話:うっかり大作戦
トリスタンの 部屋から、おこったような 泣き声が 聞こえて きました。ジェイクおじいちゃんが 急いで 2階の 部屋に 行って みると、トリスタンが お気に入りの 消防車を にぎって、なみだを うかべて います。消防車の はしごは、折れて いました。
「トロイが こわしたんだ。ふんづけちゃったんだよ。」 なみだながらに トリスタンが 言いました。
「見えなかったんだ。」 トロイが 悲しそうに 言いました。
「だけど、こわしたじゃ ないか!」と、トリスタン。
「ごめんね。」 トロイは、消防車が こわれて しまった ことで、気まずく 感じて いました。わざと やった わけでは ないのです。
「見せて ごらん。直せるかも しれないよ。」と、ジェイクおじいちゃんが 言いました。
「もう、トロイには ぼくの おもちゃを かさない!」と、トリスタン。
「おやおや、トリスタン。それは きびしいな。トロイは あやまってるじゃ ないか。うっかり してた だけなんだ。」と、ジェイクおじいちゃんが 言いました。
トリスタンは、こわれた 消防車と トロイを 代わる代わる 見ました。なかなか ゆるす 気分には なれません。
「恐竜の クリスピンの 話を した ことは あったかな?」と、ジェイクおじいちゃんが たずねました。
「ないよ。」と、トリスタン。「クリスピンの 消防車も、こわれたの?」
「いいや。だが、ある日、クリスピンは まちがって、お姉ちゃんを 悲しませて しまったんだ。消防車を わたしの 作業場へ 持って いって、直しながら、クリスピンの お話を して あげよう。」と、ジェイクおじいちゃんが 言いました。
何日も、雨ふりの 日が 続きました。あらしの 間、クリスピンは 一家の 巣穴の 中に いました。クリスピンは、雨が やんだら 友だちと 外で 遊ぶための ゲームを 計画するのに 夢中でした。
とうとう、晴れの 日に なりました。クリスピンは、さっそく 外で いっしょに 遊ぼうと 親友たちを さそいに 行きました。
「ウェスリー! サッズ! どこに いるんだい?」 クリスピンは みんなを よびました。
ウェスリーが 巣穴から 顔を 出しました。「ぼくは ここだよ。どう したんだい?」
「サッズを さそって、いっしょに 遊ばない? ぼく、走り回って 遊びたい 気分なんだ!」と、クリスピン。
「ぼくも。じゃあ、サッズを よびに 行こう。」と、ウェスリーが 言いました。
2人は サッズの 巣穴に 行って、いっしょに 遊ぼうと さそいました。
サッズも、遊びたくて うずうず していました。それで、3人は 近くの 森に 出かけて 行きました。3人は、「旗取りゲーム」を する ことに しました。ただし、旗は 1本だけで、1人が 旗を かくし、他の 2人に それが うばわれないように 守るのです。
ウェスリーが、最初に 旗を 守る 役を する ことに なりました。サッズと クリスピンが 旗を 取る 役です。
「1・・・2・・・3・・・。」 クリスピンと サッズが 数え始めました。
ウェスリーは、急いで 旗を かくしに 行きました。そして、木の みきに できた 大きな 穴の 中に、旗を そっと かくしました。
「49・・・50! 旗を さがしに 行くよ。」 クリスピンが 大声で 言いました。
「ぼくが 最初に 君たちを つかまえるよ。」と、ウェスリーが 言いました。
クリスピンは しげみの 中や 大きな 岩の 後ろなどを さがしましたが、旗は 見つかりません。
すると とつぜん、サッズが こうふんして さけびました。旗を 見つけたのです。ところが、旗を 取る 前に ウェスリーに 見つかって しまい、つかまりそうに なったので、にげました。
(ぼくが 旗を 取る チャンスだぞ。) そう 思った クリスピンは、木の みきに 向かって 走り、旗を 見つけました。
「あった! 旗を 見つけたぞ!」 クリスピンは そう さけんで、旗を つかみました。
クリスピンは 旗を にぎって ベースに 向かって 走りましたが、ウェスリーも 走るのが 速くて、どんどん 追いついて きます。クリスピンは 森の はずれに 向かって 全速力で 走り、広い 野原に 出て さけびました。「ぼくは つかまらないぞ、ウェスリー!」
「クリスピン! 止まって!」と、だれかが さけびました。
でも、もう 手おくれでした。クリスピンは お姉ちゃんの ディクシーの 花だんに ふみこんで しまいました。夢中で 走って いたので、花だんに 気付かなかったのです。それで、たくさんの 花を ふみつけて しまいました。
「あ~あ!」 起こった ことを 見て、ウェスリーが 頭を ふりました。サッズも、何事かと、急いで 森の 中から 走り出て 来ました。
「何て ことを したの、クリスピン!」 ディクシーは、手間ひまかけて 一生けん命 世話してきた 花だんが 台無しに なったので、腹を 立てました。
クリスピンは、ディクシーの 花だんを 台無しに する つもりは なかったので、どうしたら いいのか、言葉も 出ません。そして、花だんの 周りに、いつもは ある、さくが ない ことに 気が 付きました。
「さくは どうしたの?」と、クリスピン。「さくが あったら、花だんに ふみこんだり しなかったのに。」
それで、ディクシーは ますます 腹を 立てました。クリスピンが ふみつけて しまった それぞれの 花の 名前と、それらが 成長するのに どれだけ 時間が かかったかを いら立ちながら 話しました。クリスピンは、さくを 立てて いなかった ディクシーの せいだと 言い返しました。
「ちょっと 待って! おたがい どなり合っても しょうが ないよ。何か うまく いく 方法が ある はずだよ。」と、ウェスリーが 声を 上げました。
ディクシーは、なみだを ふきながら 言いました。「雨が たくさん ふった せいで 地面が どろんこに なって、さくが たおれちゃったのよ。」
「そうだったのね。花だんを 元通りに するために、わたしたちに 手伝える ことが あるんじゃ ないかしら。」と、サッズが 言いました。
「例えば? 花は もう、めちゃくちゃなのよ!」と、ディクシー。
「まずは、同じ ことが 起こらないように、さくを 元通りに するのを 手伝うよ。」と、ウェスリーが言いました。
「折れちゃった 花には そえ木を あてて、まっすぐ 立てるように してあげよう。」と、クリスピン。
「それは 無理よ。」 ディクシーが 悲しそうに 言いました。「全部 ほり起こして、新しいのに 植えかえなくちゃ だめだわ。クリスピン、わたし、まだ おこってるのよ!」
すると、サッズが 言いました。「おこる 気持ちは 分かるわ。でも、うっかり してた だけで、クリスピンだって、あやまってるじゃ ない。ゆるして あげたら? みんなで 手伝ったら、何とか できる 花も あるんじゃ ないかしら。」
「分かったわ、サッズ。おこってばかりで ごめんね、クリスピン。ゆるして あげるわ。花だんを 直すのを 手伝って くれようと して、ありがとう。」と、ディクシーが 言いました。
クリスピンは ほほえんで 言いました。「ゆるして くれて ありがとう、ディクシー。花だんの 手入れを 本当に よく してたものね。めちゃくちゃに しちゃって、ごめんね。まずは、さくを 直す ところから 手伝うよ。」
「ありがとう。こっちの 花は、余分な 手入れを すれば、だいじょうぶそうだわ。」と、ディクシー。
クリスピンは、花だんを 直すために 必要な 工具を さがしに 行きました。
サッズと ウェスリーも 手伝って、やがて、ディクシーの 花だんは 元通り きれいに なりました。クリスピンは、「注意:花だん あり」と 書いた 立札を 作りました。新たに 植えるための 球根や 種も 持ってきて くれたので、ディクシーは とても 喜びました!
「トロイ、うっかり 消防車を こわしちゃった こと、ゆるして あげるよ。さっきは おこって、ごめんね。ぼくも、ゆかに 置きっ放しに しないで、ちゃんと たなに もどして おく べきだったんだ。」と、トリスタンが 言いました。
「ぼくも、こわしちゃって、ごめんね。今度は もっと 気を 付けるよ。トリスタンのが 直るまで、ぼくのを かして あげるよ。」と、トロイ。
「ありがとう、トロイ。うれしいよ!」
「さてと。消防車は 直りそうだぞ。接着剤が かわけば、新品同様に なるさ。」と、ジェイクおじいちゃんが 言いました。
「ありがとう、おじいちゃん! すごく きれいに 直ったね。」 トリスタンが 声を 上げました。
教訓:だれでも、まちがう ことは ある。だから、ゆるしが 必要なんだ。ゆるす ことは、愛なんだよ。
文:カチューシャ・ジュスティ 絵:アグネス・リメア 彩色:ダグ・カルダー デザイン:ロイ・エバンス掲載:マイ・ワンダー・スタジオ Copyright Ⓒ 2008年、オーロラ・プロダクションズAG、スイス、不許複製