森の 仲間たち:ベックスを さがし出す
「ベックスが いないのだが。丸1日、だれも ベックスを 見かけて いないんだ。さがして くれないかね?」と、フクロウの タフトが 言いました。
「もちろんです。見つけたら 知らせます。」と、グースが 答えました。
「ありがとう。君たちが 頼りに なるって 分かってたよ。」 そう 言って、タフトは 彼女を さがし続けるために 飛び立ちました。
ベックスは、ビーバーです。話し方が ちょっと おかしくて、他の 動物たちに からかわれたり していました。それで、ベックスが 一言 二言 話すのを 聞く ことは めったに なく、彼女の 姿が 丸1日 見えない ことも たびたび ありました。普段から、他の 動物たちと いっしょに 遊んだり おしゃべりしたり せず、自分の からに 閉じこもって いるので、だれも 彼女の ことを よく 知りませんでした。
ベックスは、フクロウの タフトに 会いに 行くのが 好きでした。タフトは、決して 彼女の 話し方を 笑ったり しません。タフトは、彼女が どんなに すばらしい 動物か、ほめて くれます。そして、彼女が 大きく なったら、自分の 巣を 作る 川に 見事な ダムを 作るだろうと 話して くれるのです。
「どこから さがし始めたら いいかな? ベックスと 話した ことって、ないしなあ。彼女は いつも 自分の からに 閉じこもってるものね。」と、エドガー。
「もしかしたら、それが ヒントかも しれないよ。一人に なりたい 時に 行くような 場所を さがして みたら いいかも。」と、グースが 言いました。
「それは、いい 考えだね。」
タフトが ベックスさがしを 二人に 頼んでから、1時間が 過ぎました。二ひきは もう、彼女を 見つけられないのでは、と 思い始め、ぶらぶらと 川沿いに 下りて 来ました。
「シーッ。ガマの しげみの 間から、何か 聞こえた 気が する。」と、エドガー。
「ベックス、君かい?」と、グースが よびかけました。
カサカサと ゆれていた ガマが、止まりました。返事は ありません。
「ベックス。もし 君なら、ぼくたちは ずっと、君を さがしてたんだよ。」と、エドガーが 言いました。
しげみの 間から、二つの 目が のぞきました。「どうして わたしの ことなんか、さがすの?」 口笛を ふくような 声で ベックスが 聞きました。
「タフトが、今日は 君を 見かけて いないって、心配しててね。それで ぼくたちは、君を 見つけるのを 手伝って ほしいって 頼まれたんだ。」と、グースが 答えました。
「じゃあ、わたしが いる 所が 分かったから、見つかったって 伝えれば いいわ。」 そう 言いながら、ベックスは 去ろうと しました。
「待って、ベックス。話そうよ。」と、エドガーが よび止めました。
「それで、わたしの ことを からかいたいの?」
「ちがうよ。君の ことを 知りたいんだ。」と、グースが 答えました。
ベックスは カメを 見て、それから リスを 見ました。「わたしの ことを 知りたいですって?」
「そうさ。ぼくたち、君を さがし始めた 時、君の ことを 何も 知らないって 気が 付いたんだ。だから、君を 見つけたら、友だちに なろうって 話したんだ。そしたら ぼくたちは、2ひきじゃ なくて、3びきの 仲良しに なって、きっと もっと 楽しく なるよ。」と、グースが 言いました。
「本当に?」 ベックスは 意外そうに 言いました。
「もちろんさ!」と、エドガーと グースが 口を そろえて 言いました。
「ぜひ、お友だちに なりたいわ。」と、ベックスも 言いました。
「タフトに、ベックスを 見つけたって、言わなくちゃ。それにさ、ベックス。笛を ふくような 君の 話し方、ぼくは 好きだよ。すてきだと 思う。」と、エドガーが 言いました。
「じょうだんでしょ?」と、ベックス。
「まさか。本気だよ。」
新しく 友だちに なった 3びきは、にっこりと 笑いました。そして、うれしそうに おしゃべりしながら、タフトを さがしに 行きました。新しい 友情が 芽生えたのです。