ビービーと ルル
「クワッ、クワッ、クワッ。」
ビービーが 池の そばで 遊んでいると、遠くから 鳴き声が 聞こえました。
ほら、また 聞こえますよ。
「クワッ、クワッ、クワッ。」
ビービーは、鳴き声の する 方へ 行ってみました。すると、一羽の ちっちゃな アヒルの 子が、納屋の 周りを 歩き回っていました。
(まあ。農場主の サマーズさんが、わたしと いっしょに くらすように、ほかの アヒルを 連れてきたのかしら?) ビービーは 心配に なりました。
サマーズさんは ビービーを 見ると、ビービーを だき上げて 言いました。「ビービー。こっちは ルル。新しい お友だちよ。いっしょに 遊んであげてね。」
ビービーは、つばさを パタパタ 羽ばたかせて 身を よじると、サマーズさんの 手から 落ちて、地面に 転がりました。サマーズさんは クスクス 笑うと、納屋の 方へ 歩いて行ってしまいました。
(新しい 友だちですって? 友だちなんか いなくても、わたしは 十分 幸せだわ。)と、ビービーは 思いました。
ルルは ビービーよりも 小さな アヒルの 子だったので、自分が ルルの めんどうを みなくては いけなくなるのかと、気を もんでいました。ビービーは、どちらかというと 自分だけで いたかったのです。
ビービーは、ルルの 方を 見向きも せずに、ルルの 前を よちよちと 通り過ぎ、心地よい 納屋の 自分の 場所へと もどって行きました。ビービーは、ルルの ことを 完全に 無視すると 決めたのです。
サマーズさんが 用意してくれた 穀物や 野菜を 食べていると、ルルも となりに 来て 食べ始めました。ビービーは きげんを 悪くし、ルルが まだ 食べている 間に、さっさと 自分の 寝床に もぐりこんで、ねてしまいました。
次の 日の 朝に 目を 覚ますと、ルルが すぐ となりで ぐっすりと ねむっているでは ありませんか。ビービーは いらいらしました。(一体全体、何で わたしの 干し草ベッドに いるのよ? それだけじゃ ないわ。わたしの エサ入れから 食べるなんて。) ビービーは、ごきげんななめでした。
ビービーは、そう~っと 納屋を 出て、お気に入りの 遊び場である 池へ 向かいました。そこでは、トンボを 追いかけたり、足元に 近づいてきた ものに 飛びついたり して、何時間でも 水と 日光を 楽しむ ことが できました。そこは、ビービーの 大好きな 場所なのです。
すると 遠くの 方から、また あの 鳴き声が 聞こえました。「クワッ、クワッ、クワッ。」 鳴き声は だんだん 近づいてきます。
「またなの! いいかげん、わたしを 放っといてほしいわ!」
ビービーは、さっと 草むらの かげに かくれました。ルルが そばまで 来ると、池の 中に よちよちと 入っていく 様子を 草の 中から そうっと 見ていました。ルルは 水の 中に 入ると、うれしそうに クワックワッと 鳴きました。そして、水を バシャバシャしたり、もぐったり、トンボを 追いかけたり し始めました。ビービーは、全く 面白く ありません。
(ルルが 行っちゃうまで、ここに かくれていようっと。)と ビービーは 思いました。
しばらく すると、ルルが 静かに なり、そして 泣き始めました。
「こんな 所、来なければ よかった。ビービーは わたしのこと きらいだし。ひとりぼっちで すごく さみしいわ。どこかに 行っちゃった ほうが いいのかも・・・」 ルルは なみだぐみながら 言いました。
ルルが 泣いているのを 聞くと、ビービーは 悪い ことを したなと 思いました。そして、自分が 初めて サマーズさんに この 牧場へ 連れてこられた 時の ことを 思い出しました。サマーズさんたちは、ビービーの ことを とても よく 世話してくれたので、愛されていると 感じました。その 時は、ビービーだって、一羽の さみしい アヒルの 子だったのですから。
以前 ビービーが そうだったように、ルルにも 友だちが 必要だという ことに、ビービーは 気が つきました。
ビービーは、そうっと 草むらから 出てくると、静かに 水の 中に 入って、悲しそうな アヒルの 子の そばに 泳いで行きました。そして、つばさを 広げて ルルの かたに 回しました。ルルは びっくりしました。
「悲しませて ごめんね、ルル。だから、出て行かないで。友だちに なりたいの。」と、ビービーが 言いました。
「本当に?」
「本当よ。わたし、自分の ことばかり 考えていて、何でも ひとりじめに しようと してたんだわ。ごめんね。」
「いいのよ。わたしも、友だちに なりたいわ。」 ルルは にこっと 笑って 言いました。
「もし よかったら、牧場の 中を 案内してあげるわ。ここって、すごく 大きな 牧場だから、楽しい ことが いっぱい できるのよ。」と、ビービーが 言いました。
「うわあ、すごい!」
そして、二羽の アヒルの 子は、いっしょに 牧場の 中を 探検しに、よちよちと 出かけたのでした。ルルには 友だちが 必要でしたが、ビービーにだって、友だちは 必要だったんですもの。